私は離婚をしています。
その元夫の父(義父)が亡くなりました。離婚した元夫も既に亡くなっています。
義母は健在で、元夫には兄と姉の兄妹もおり、共に健在です。
私と元夫の間には、子供が3人いますが、親権者は私です。
亡くなった義父の遺産を相続する権利は、私たちにあるのでしょうか?
因みに、義父が住んでいた実家の土地建物の持分のうち、4分の3は義母の名義であり、現在も義母が継続して住んでいます。そのため、私たちが仮に相続人だったとしても、この不動産については相続することは出来ないのでしょうか?

■法定相続人

法律では、相続が発生した場合に、争いが起きないように遺産を相続できる人を定めています。
その人を『法定相続人』と言います。
また、法定相続人の相続割合についても法律は規定しています。

まず、配偶者がいれば常に相続人となります(民法890条)。
次に、子供がいれば、被相続人の配偶者と第1順位である子またはその代襲相続人(孫、ひ孫)が相続人となります(民法887条)。
子供や代襲相続人がいなければ、配偶者と第2順位である直系尊属(父母、祖父母)が相続人となります(民法889条)。
子供や直系尊属もいなければ、配偶者と第3順位である兄弟姉妹、相続開始時に兄弟姉妹が先に亡くなっていた場合は、その代襲相続人(甥、姪)が相続人になりますが、子供の場合とは違い再代襲は認められず、甥、姪の一代限りです(民法889条)。

では、本件についてはどうでしょうか。
被相続人の配偶者である義母が健在ですから「配偶者がいれば常に相続人となります」のとおり、義母は相続人です。
次に被相続人の子供にあたる、亡元夫の兄妹の兄と姉は相続人です。
そして、相談者とその子供たちですが「子供がいれば、被相続人の配偶者と第1順位である子またはその代襲相続人(孫、ひ孫)が相続人となります」に該当する子供たち3人は、亡元夫の代襲相続人ですから相続人となります。これに該当しない元妻である相談者は、相続人となりません。
子の親権が相続に影響すると考えている方は多いようですが、その子どもが親権を持たなかった方の親について相続人にならない、ということはないのです。

■法定相続分

相続人が配偶者のみの場合、配偶者が100%。
相続人が配偶者と子供の場合、配偶者が2分の1、子供が2分の1(子が複数いる場合は、均等に分割)
相続人が配偶者と父母の場合、配偶者が3分の2、父母が3分の1(両親とも健在の場合は、均等に分割)
相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1(複数の場合は、均等に分割)

例えば、配偶者と父母の相続の場合、配偶者が3分の2、父と母は3分の1を2人で分けるため、それぞれ6分の1ずつの相続分となります。
(民法900条)

本件では、義母が2分の1、兄と姉が各6分の1、相談者の子供3人は各18分の1が法定相続分となります。

■特別受益

遺産分割をするうえで、『特別受益』についてご説明します。
共同相続人の中に、故人から婚姻費用や事業資金の援助、住宅購入資金などについて生前贈与を受けたり、被相続人から遺贈を受けたりした者がいる場合に、これをまったく考慮せずに相続分を計算すると、相続人間で不公平が生じることになってしまいます。
そこで、相続分を計算する際に、故人から生前贈与や遺贈を受けた分を考慮することによって、相続人間での公平を図る制度を「特別受益制度」といいます。

しかしながら、この制度は、生前贈与されたり、遺贈を受けたりした額が、法定相続分より多くても返還を請求することは出来ないことには注意が必要です。

ただし、遺留分の侵害があった場合には、遺留分減殺請求することができますが、本件のような特別受益とは別の問題となります(因みに、遺留分とは故人の財産のうち、一定の相続人に必ず承継されるべきものとされる相続財産の一定割合の事をいいます)

本件の元夫の兄は、長男と言うことで、生前に被相続人より土地や住宅を購入する際の費用を援助してもらっていました。

■義母の住んでいる家について

義父が住んでいた不動産の土地建物の4分の3の持分は、義母の名義で、尚且つ現在も義母が継続して住んでいると言うことで、相談者としては、半分以上の割合を義母が持っているし相続は出来ないと考えていました。
ですが、この不動産においても、あくまで被相続人の持分については、遺産に含まれますので、遺産分割の対象となります。
しかし、義母が住んでいるこの不動産の被相続人の持分から、子供たちは相続してもメリットがないと考えるのであれば、義母に相続してもらいその他の遺産で平等になるように交渉をしてみることも一考です。

■遺産分割協議

遺産をどうように分けるか話し合うことを、遺産分割協議と言います。
ご説明をしましたが、相談者の子供らは法定相続人ですから、この遺産分割協議に参加することになります。
また、わが国は法治国家であるため、法に反する行為をすれば当然に罰せられます。そのためか、遺言書が無ければ「相続財産は法定相続分どおり配分しなければいけない」と思っている人もいるかも知れませんがそうではありません。
相続人全員の合意があれば、遺産の配分は自由に決めることができます。

法定相続分というのは遺産をいくら承継できるかという権利の範囲であり、遺産配分の基準なのですが、どの様に配分し、分割を行うかは、相続人の自由です。相続人全員が納得すれば、どのように分割しても構わないのです。
相続人間で遺産分割協議を行い、協議がまとまれば遺産分割協議書を作成するのが一般的です。
しかしながら、当事者間で考え方に相違があれば、話がいつまで経ってもまとまらないということはよくある話です。
そのような場合には、裁判所にて遺産分割調停を行うこともできますし、弁護士に話し合いの代理を依頼することもできます。

■未成年者を含む相続

本件では、子供たちは全員成人でしたが、相続人が未成年である場合、本人の意思によって遺産の処分行為(名義変更・解約・払戻しなど)を行なうことは出来ません。そのためには、親権者である母親が法定代理人となって進めていくこととなります。
(もし、何らかの事情で親権者がいない場合には、別途、家庭裁判所に申立をして、『未成年後見人』を選任する必要があります。)
※親権者と未成年の双方が法定相続人となる場合、親権者と子供の利益が相反する場合は、『特別代理人』の選任を家庭裁判所に申立てしなければなりません。

■まとめ

上記で、遺産分割協議とは「相続人全員の合意があれば、遺産の配分は自由に決めることができます」と述べましたが、本件のように離婚した元夫の親族らとの協議は、感情的な問題も発生し、何時までも決着が着かないケースは珍しくありません。そういった場合は、第三者である弁護士が代理人として介入することにより、スムーズに解決に至ることがあります。
当センターでは、相続に関するご相談を無料で承っております。
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監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

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