Q: 遺産分割でもめた場合、家庭裁判所をどのように使えばいいですか?

A: 「審判」は基本的には法律に沿った判断となるので、最終的には法定相続分による遺産分けになることが多いようです。「調停」で決着させたほうがいい場合もあります。

まずは「調停」で解決を目指す

遺産分割協議は、相続人の間でもめる場合が少なくありません。相続人の間で話し合いがまとまらなければ、最終的には裁判所に解決を求めることになります。
ただ、遺産分割をめぐる紛争や離婚に伴う慰謝料、子供の養育費に関するトラブルといった家庭内の紛争を通常の訴訟の手続きで審理すると、公開の法廷で親族が争うことになり、感情的な対立に拍車がかかる恐れがあります。そこで、家庭内の紛争は、まず家庭裁判所の「調停」や「審判」といった非公開の手続きで解決を図ります。

「調停」は「話し合い」であって裁判ではありません。裁判官または家事調停官(弁護士で5年以上その職にあり最高裁判所から任命された人)と国民から選ばれた家事調停委員2人以上によって構成される調停委員会が、紛争の当事者からそれぞれの言い分を十分に聞きながら合意を目指します。合意内容は「調停調書」にまとめられ、裁判の判決と同じ効力を持ちます。「審判」は裁判です。裁判官が申し立ての際に提出された書類、家裁調査官の調査結果、されに裁判官自らの審問をもとに判決と同じ効力がある審判を下します。

家裁で扱う事件には、相続放棄などのように審判だけで取り扱うものや離婚などのように調停だけで扱うものがあります。遺産分割をめぐる争いは、制度上、調停、審判のどちらでも選べますが、家裁では通常まず調停を行い、調停が整わなければ審判という運用をしています。

審判は裁判なので、基本的には法律に沿った判断となります。遺産分割をめぐる審判は、最終的には法定相続分による遺産分けになることが多いようです。
これに対して、調停では、当事者同士が納得すれば、生前贈与を加味しないことも可能で、法定相続分以外での分け方で弾力的に合意することもできます。

調停、審判とも、原則として当事者または利害関係人からの申し立てにより始まります。家裁に解決してほしい事柄やその他の事情を記載した「申立書」を提出します。申立書には、手数料として、事件に応じ800円または1200年の収入印紙を貼ります。遺産分割の場合は1200円です。弁護士に依頼する場合は報酬がかかりますから確認してください。
審判の結果に不服の場合は高等裁判所に抗告でき、それも不服なら最高裁に抗告できます。

家裁だけで解決できない争い

最も、家裁だけで解決できないものもあります。典型的なのが「遺留分」をめぐる紛争です。遺留分をめぐる争いは、遺留分を侵害する遺言があるから起こります。
例えば、Aさんのケースです。父親が死亡し、遺産は父親が住んでいた家(土地と建物で計2500万円)と預貯金が500万円の合計3000万円です。相続人はAさんと弟の2人ですが、父親は遺言を残しており、「Aさんに家、弟に預貯金を相続させる」とありました。

ところが、弟は、「最低限の相続分である遺留分を侵害している。父の家を売却してでも支払え」と主張。介護などのため父親の家に同居し、今後も住み続ける考えのAさんは応じる考えはなく、家庭裁判所の調停でも決着しそうにありません。どうすればいいでしょうか。

遺留分が侵害されているといっても、侵害行為は当然に無効になるわけではありません。当事者が合意すれば、侵害があっても調停は成立します。ところが、弟が遺留分を取り戻す行為、つまり「遺留分減殺請求権」を行使すれば、話は別です。裁判になれば、裁判官は法律どおりに弟に請求権を認め、遺留分を渡すように命じることになります。

ここで問題なのは、遺産に親の家など不動産がある場合です。例えば、遺留分を取り戻すには親の自宅のうち一部を遺留分権利者の名義にする必要があります。Aさんと弟が家を共有するわけです。最も避けたいパターンです。Aさんはそこに住んでいますが、弟は住んでいないため、不動産を所有しても仕方ないので家を売って現金で分けるように要求するでしょう。

弟がこう要求すれば、法律的には「共有物分割の請求」となります。遺産分割ではないので、紛争の解決は家裁ではなく地方裁判所の管轄になります。
通常の裁判になると感情的なもつれがさらに複雑になる可能性もあります。相続財産が親の自宅程度という場合は代償金を用意しておくほうが無難でしょう。