私は1人息子です。両親は健在ですが、残念なことに父が余命半年の宣告を受けました。

母は非常に落胆していますが、私は仕事が忙しくなかなか寄り添う事が出来ません。その上,1年以内に海外への転勤もほぼ内定しています。妻と子供も赴任先に同行します。
母は、専業主婦で世間知らずなため、父亡き後、相続の手続きなどは私が中心となって行なう予定ですが、何分海外からの手続きとなれば申告書類一つにしても容易ではありません。母と私との間で、父の財産をめぐって争いが起こる心配は一切ないと思います。まったく初めての事で頭がいっぱいです。当然専門家に任せることが一番だと思いますが、そのときにはどのような点に留意すればよいのか等も含め教えてください。

相続の開始

相続が開始(相続は死亡によって開始する(民法第882条)
すると、各手続きが待ち受けています。相談者の場合は、特に相続人間での争いがないと想定し、一般的な流れについてご説明します。
故人の死亡から7日以内に故人の住所地にある市町村役場の戸籍課に死亡届を提出します。

 

遺言書の有無とその種類

1 自筆証書遺言(民法第968条)
故人自らが書き記した故人の意思です。
この場合、必ず家庭裁判所で検認手続きの申立(遺言書の偽造・変造を防止し、遺言書の内容を確認するための手続き)を行い、家庭裁判所で開封しなければなりません。

2 公正証書遺言
公証役場で公証人に作成してもらう遺言のことです(民法第969条)、この遺言方法は、最も確実であるといえます。家庭裁判所での検認手続きの申立の必要もありません。

3 秘密証書遺言(民法第970条)
自分で作成した遺言書の内容を秘密にしたまま、遺言の存在自体は公証人や証人に確認してもらっている遺言書です。
遺言書は自身での署名捺印があれば、パソコンを使ったり、第三者に代筆してもらっても構いません。

作成した遺言書を持って、2人以上の証人と共に公証役場に出向きます。そして、遺言者は、公証人及び証人の前でその遺言書が自身のものであること、氏名、住所等を申述します。そして公証人がその封書に遺言者自身の遺言書である事や、提出の日付などを記載し、遺言者は公証人と共にその遺言書に署名、捺印、封印を行います。

なお、その遺言書は遺言者自身が保管しますが、相続が開始された際、封の開いている遺言書や、空けられた形跡のある遺言書は、秘密証書遺言としての要件を満たさない事から、無効となります。
しかし、秘密証書遺言は自身で管理し、なおかつ秘密に作られていることから相続人が知らない場合も多く、見逃してしまうケースもあり、せっかく作った遺言の存在が明かされるまま終わってしまう事もあるのです。

また、公証人が証明しているのは遺言の存在のみであり、内容については証明していないので、必ず検認の申立をしなければなりません。その為、中には記載内容に不備があり、結局は要件をみたないような場合もあるのです。このようなことから、秘密証書遺言は、上記2つの遺言書に比べ、作成件数は格段に少ないと言われています。

4 遺言書なし
遺言書がない場合には、相続人間で話し合い、財産の分配を行います。特に問題がなければ、遺産分割を行いますが、相続人間での話が纏まらない場合、拗れてしまった場合には、第三者である裁判所を通じて調停や訴訟などでの解決を図ることも少なくありません。

 

相続放棄

故人に必ずしも財産があるとは限らず、中には多くの負債を抱えている場合もあります。また、相続人であっても、相続するか否かは、相続人の自由です。
そして、相続放棄をした場合には、初めから相続人でなかったものとみなされます。

 

準確定申告

相続人は、相続開始または相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に、相続人の連名で故人のその年の1月1日から相続発生日までの所得について申告をしなければなりません。これを準確定申告といいます。なお、相続人の連名が難しい場合は、他の相続人の名前を付記し、相続人が個々に提出する事も可能です。
なお、前年度の申告が完了していない場合も、同様に4ヶ月以内に申告をしなければなりません。

 

相続税の申告

相続税には申告の期限があり、それを超過した場合には、加算税や延滞税がかかってしまいます。申告期限は相続が開始された事を知った日の翌日から10ヶ月以内と定められています。
また、相続税を納付する期限も、申告期限と同じです。

いくら申告をしても、相続税の納付を怠れば、利息分に延滞税が加算される場合もありますので注意して下さい。
なお、申告期限が、土日、祝日であった場合には、その日の翌開庁日が期限となります。原則、申告書は税務署へ持参しますが、止むを得ず郵送する場合は、確実に届ける為に書留等を利用することをお勧めします(消印が提出日となります)。
相続税の申告をする管轄の税務署は、故人の所在地となりますが、相続税の納付は、税務署に限らず、各金融機関でも行う事が可能です。
なお、原則相続税は現金による一括納付となっています。しかし、中には多額の相続税が発生するため、一度に現金の用意が不可能な場合や、遺産分割協議中で、一時的に代表者が立替払いをするなど、容易に現金を捻出する事が出来ない時は、税務署に申告し、許可を得ることも可能ですが、延滞した額に対して、延滞税が発生する場合もあります。

 

申告期限の延長

事情によっては、10ヶ月の申告期限を延長する事も可能ですが、これはあくまでも特別な場合に限定されている為、申請すれば誰でも認められるものではありません。
因みに一例として以下となります。

1 災害その他やむを得ない理由
2 認知、相続人の廃除、相続の回復、その他の事由により相続人に異動が生じたとき
3 相続人の失踪宣告があったとき
4 すでに生まれたとみなされる胎児が生まれたとき

海外転勤が特別の事情として申告の延長が認めてもらえるはかは非常に厳しいと思われますが、その際には適宜税務署への確認をしてみて下さい。

 

まとめ

相談者の場合、相続人がお母様と2人であり、非常に円満に相続の手続きを進めていかれると思料しますが、相続は人生で数回あるかないかの手続であり、肉親を失う事で、精神的にも肉体的にも大きな疲労を伴うと予想されます。また、財産調査にしても、多くの金融機関は平日のみの営業であり、仕事と両立し調査を進めていく事も大変です。
そして、2次相続などを視野に入れて遺産分割することも必要です。そのような事を考えれば、専門家に相談する事が賢明だと思いますし、相続に特化している弁護士に依頼することがなお重要です。まずはご検討下さい。