遺言書に「相続財産は全てAさんへ」と書かれていたとします。
この「Aさん」が,ご親族ならまだしも赤の他人だったなら,ご遺族は「自分たちが相続するのではないの?」と愕然されるでしょう。
しかし,原則として被相続人は,自由に遺言することができ,またその内容は,法定相続人の相続権よりも優先されます。

このように,一部の相続人に著しい不利益が生じることを防ぐために,一定の相続人(遺留分権者といいます)に対して,一定の相続財産を保証する為に設けられた「遺留分」という制度があります。
遺留分権者は,「遺留分減殺請求」の手続で遺留分の返還を請求する権利があります。
さて,本日はこの「遺留分減殺請求」の仕方を確認しておきたいと思います。

1.遺留分減殺請求の手続には期限がある!

実際にこの手続をするにも,請求できる期限が定められております。
その期限とは,民法第1042条によると,「相続開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないときは,時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも,同様とする」とありますので,請求するには十分注意が必要です。

 

2.遺留分減殺請求の準備

実際に請求するにあたり,いくつか事前に確認しておく必要があります。

➀故人の除籍謄本と相続人の戸籍謄本を取り寄せます。
相続の手続においては,これらの書類を用意するのは必須条件です。

➁請求をする方が遺留分権利者かどうかを確認しましょう。
遺留分権利者となるのは,以下のとおりです。

※配偶者,子(胎児や養子も含む)
※子の代襲相続人
※直系尊属(父母・祖父母など)
注)兄弟姉妹や相続欠格,相続放棄,相続廃除者は請求できません

➂遺留分の割合の確認しておきましょう。

遺留分の割合の一部例を下記に挙げてみます。
a.相続人が配偶者のみの場合⇒1/2
b.相続人が子供のみの場合⇒1/2
c.相続人が配偶者と子供の場合⇒配偶者1/4,子供1/4
d.相続人が配偶者と父母の場合⇒配偶者1/3,父母1/6
e.相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合⇒配偶者のみ1/2
f.相続人が父母のみの場合⇒父母で1/3
g.相続人が兄弟姉妹の場合⇒兄弟姉妹は遺留分なし

➃遺留分の対象となる財産を確認しておきましょう。
遺留分算定の基礎となる主な財産は以下のとおりです。
1)亡くなった時の財産⇒不動産,預貯金,株式,保険,動産など
2)贈与した財産

a.遺贈
被相続人が遺言書を書くことによって遺言で相続人へ相続財産を与える行為のことをいい,遺産の全部又は,一部を無償で相続人や相続人以外の者に受け継ぐことをいいます。(民法第964条)

b.死因贈与
贈与する者の死亡によって効力が生じる生前の財産の贈与契約ことをいいます。(民法第554条)

c.生前贈与
被相続人が相続開始前の1年間に受けた贈与のことをいい,また1年以上前の贈与であっても,当事者双方が遺留分権者に損害を加えることを知って行った贈与であれば,相続財産に含めます。(民法第1030条)

d.債務
相続発生時の負債
以上をもとに,遺留分を算出していきます。

 

3.準備ができたら遺留分減殺請求の意思表示をします。

意思表示の方法として,遺留分減殺請求の相手方に対して口頭で伝える方法もありますが,遺留分減殺請求の消滅時効にも関係してくる場合があるので,配達証明付の内容証明郵便で郵送することをお勧めします。
もし,相手方が請求に応じなかったり,話し合いによる解決が出来なかったりする場合は,家庭裁判所で調停の申立を行う方法もあります。

以上が主だった確認となります。
遺留分減殺請求は,遺産の調査から始まり,遺留分の割合の計算が必要なので,時には専門家でないと困難な場合があります。
実際に請求をお考えの方は,まずは当センターにご相談下さい。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。