自分の死後に残された人たちが財産を巡って争ったり、相続手続きで苦労したりしないようにするには遺言を残すことをお勧めします。

 

■遺言がなぜ大切なのか

遺言があれば、遺産はそれに従って分けるのが基本だからです。
遺言がなければ、誰が何をどれだけ受け取るのか、法定相続分も目安にしつつ相続人同士で話し合うことになりますが、なかなか話し合いで解決できないケースも多いようです。そもそも亡くなった人にどんな財産があったのかを調べる必要もあり、通帳を探したり、金融機関に問い合わせたりするのは非常に手間暇がかかるものです。そうした作業を相続人間で分担できればいいのですが、1人で行うとしたら大変な作業になってしまいます。

ところが、亡くなった人が生前に財産を整理し、遺言で遺産の分け方を決めておくことで、相続人の負担は大幅に軽減されるのです。さらには、遺言では、遺言を実行する人を指定することとなるため、弁護士などの専門家を遺言執行者として指定しておけば、費用がかかるものの、相続に関する手続きを代行してもらうことも出来るのです。

 

■遺言書の種類

主なものは本人が手書きで作る自筆証書遺言と、公証役場で作成・保管する公正証書遺言です。

(1)自筆証書遺言

全文手書きで、日付の記入、署名、押印が必要です。ワープロで作成したり、日付の記入がなかったりすると効力が生じません。費用や手間はあまりかかりませんが、開封するためには家庭裁判所での検認手続が必要なうえ、遺言者自身の言葉で作成するため、遺言の記載の仕方や内容によっては、相続人間で紛争の種となることも多く、また保管方法によっては偽造や変造をされてしまう恐れもあるので、十分に注意をする必要があります。

(2)公正証書遺言

公証役場などで、公証人に遺言の内容を伝えて作成してもらいます。遺言書の原本は公証役場にて保管されます。手数料と、証人として立会人が2人が必要ですが、紛失や偽造の恐れはなく、開封する際の家庭裁判所での検認手続も必要ありません。
そのため、多くの専門家は公正証書を勧めています。
因みに、2014年の公正証書作成件数は年10万件を超え、15年には約11万件になっています。
ただし、公正証書で遺言を作成するためには、戸籍謄本を集めたり、印鑑証明書を取得したり、財産の内容を明確に示すための資料を準備したりするのに多少なりとも時間や手間がかかります。

 

■遺言書の内容について

遺言書はどのように書いたらいいのだろう、と思われる方もいるかもしれません。遺言書とは、遺言者の死後についての事柄を定めているため、厳格に書式が規定されており、かかる書式に沿って書かれていない遺言書は無効になってしまうこともあります。
そこで、遺言書に記載しなければならない内容を手順を踏んでご説明します。

 

(1)まずは、自分の財産や負債などを把握します。

財産といっても、人によって様々です。預貯金や生命保険、有価証券のほか不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含めてすべてを書き出します。
預貯金や有価証券であれば、金融機関名、支店名、口座番号など、不動産であれば、できれば登記簿に記載されているとおりの内容で、所在地や地番、面積などを記載しておきます。
要するに、残された人が、どこに、どんな財産がどのくらいあるのかを具体的に分かるようにするため、資料を揃えておくことも大切です。不動産があれば、登記簿謄本や固定資産税評価証明書などを用意します。また法定相続人を確定させるためには、自分が生まれてからのすべての戸籍謄本が必要ですし、公正証書の作成には運転免許証などの本人確認書類も準備が必要です。

 

(2)財産・負債を一覧にして書類を揃えたら、次は財産分けです。

まず、だれに、どの財産をどれだけ渡すかを具体的に決めます。トラブルを防ぐには、生前贈与や寄与分などがあれば、それも十分に踏まえることが重要です。配分は必ずしも法定相続割合通りでなくても構いませんが、法定相続人の遺留分はできるだけ確保しておく方がいいでしょう。

(3)遺留分とは

法律で定められた最低限の相続の取り分で、遺言でも侵すことができないものです。遺留分を侵害された人は、遺留分を取り戻す手続きである遺留分減殺請求をすることができます。請求しても折り合いがつかない場合は、家庭裁判所での調停になる場合もあります。

 

■遺産分割を指定する際に特に注意が必要な財産

不動産は預貯金や株式などと異なり、簡単に分割できない財産です。
例えば、遺産が若干の預貯金と自宅だけの場合、相続人のうち1人だけが自宅を引き継ぐと、他の人にとって不公平になってしまうことがあります。そういった場合、自宅を相続した人が、他の相続人に現金などを渡す代償分割や自宅を売って代金を分ける換価分割が選択肢になるでしょう。

不動産の共有は避けた方がいいというのが多くの専門家の見方です。不動産を共有名義にて相続をした場合、将来建て替えたり、売却したりするとき共有者全員の同意が必要となるため、将来の争いの種になりかねないからです。
代償分割は自宅をもらう人が代償金を準備することが前提です。換価分割では、物件を売却するため、人が住んでいたりすると売りにくいというデメリットがあります。
以上、相続手続きで相続人全員が納得できる遺産分けは、ハードルが高いのが実情です。

そこで、法的拘束力はありませんが、遺言の最後に付け加える「付言」を付け加えてみてはどうでしょう。
遺言の本文は遺産分けの箇条書きで無味乾燥になりがちです。
そこで、付言で財産分けの理由や家族への思いを伝えると、法定相続割合どおりの分配でなくても、相続人が納得してくれることも出てくるかもしれません。

以上のとおり、遺言作成には注意事項が非常に多いのです。
もし、遺言作成を検討しているのであれば、是非とも、専門家に相談してみることをお勧めします。当事務所では、相続に関するご相談は無料で承っておりますので、お気軽にご相談下さい。