ご質問

先日、地方に住んでいた私の母が亡くなりました。
既に父は他界しており、私も母も兄弟姉妹がいないため、法定相続人は私一人になるようです。

母の遺産は山林や荒れた畑等の土地が多く、正直に言うと、私が相続しても自分で利用することはできません。母の住んでいた家屋も築50年でほとんど価値はなく、都市部からも遠いので土地の価値もほとんどありません。

不動産屋に相談してみたのですが、売却しようとしても買い手を探すのが難しいと言われたので、いっそ相続放棄してしまおうと考えています。
ただ、唯一の相続人である私が相続放棄をしてしまうと、母の遺産である土地はどうなってしまうのでしょうか。
誰の物でもなくなってしまうのでしょうか。

回答

相続人が不在の場合、家庭裁判所に選任された相続財産管理人が、相続財産の管理、清算をおこない、清算後に残った財産は、国庫に帰属することになります。

相続財産管理人の選任

相続人が不在の場合、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければなりません(民法952条)。ここでいう利害関係人とは、相続債権者(被相続人に対する債権者)、担保権者のほか、受遺者、特別縁故者等が含まれ、広く解釈されています。また、国や地方公共団体が利害関係人とされる場合もあります。
相続財産管理人は、申立人の推薦により選任される場合もありますが、事前に登録された相続財産管理人の候補者名簿の中から選任される場合もあります。
相続財産管理人が選任されると、選任についての公告がおこなわれます。

相続財産管理人の職務

専任された相続財産管理人は、相続財産の現状を調査した上で相続財産目録を作成し、家庭裁判所に提出します。
そして、相続財産管理人の選任について公告された後、2か月が経過しても相続人が明らかでない場合、管理人は相続財産の清算手続に入ります。
具体的には、まず、相続債権者や受遺者に対して、相続財産に対する債権者、受遺者等に対して、債権の届出や請求の申出を催促し、官報に公告を掲載します。

そして、これらに応じて届出をおこなった相続債権者や受遺者に対し、割合に応じた支払いをします。なお、この公告をおこなったにもかかわらず、期間内に該当者からの届出がなく、相続人の存在が明らかでない場合、家庭裁判所に対して相続人捜索の公告を請求し、公告期間内に相続人からの届出がない場合は、相続人の不存在が確定します。

相続人の不存在が確定した後3か月以内に、被相続人の特別縁故者に該当する人から相続財産の分与を求める申立てがあった場合、その特別縁故者に対する相続財産分与の手続を行うことになります。
最後に、相続財産管理人が報酬を受け取った上で、なお残った財産がある場合には、国庫に帰属する、つまり国の財産となります(民法959条)。

まとめ

相続債権者や受遺者としては、この相続財産管理人を選任してもらわないと、相続財産からの支払を受けられないケースもあります。相続人がいるかどうか分からず、相続手続が進む様子のない場合には、積極的にこの制度を活用していく必要があるでしょう。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
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