平成25年(2013年)に国土交通省が実施した「土地建物調査」によると、全国の空き家数は83万戸、空き家率(総住宅数に占める割合)は13.5%と過去最高を記録しました。空き家のままにしてある理由の回答(複数回答可)では、最も多いものが「物置として使うから」が44.9%、その次が「解体費用をかけたくないから」で39.9%でした。そして空き家を取得した理由のうち、最も多かったのが「相続」で56.4%でした。
 また空地(原野、荒野、池沼を含む)についても、同調査で全国に1,554㎢、率にして8.2%とこちらも過去最高となりました。空き地のままにしてある理由の回答(複数回答)では「相続したが利用する予定が無いから」が50.3%と突出しています。
このように相続によって得た資産である家や土地が、空き家、空き地のまま多数放置されている、という異常な事態が起こっています。

1.空き家や空き地が増える理由

なぜこれほど空き家や空き地が増えているのでしょうか。
空き家や空き地が増え続けている理由としては、以下などが挙げられます。
・日本人は新築の家を好むため、古い家を売りに出しても希望価格がつかないので売却できず空き家になる
・高齢者で同居している家族がいない場合に、介護施設や病院に入ってそのまま持ち家が空き家になる
・実家の土地建物を相続した人が、既に別の場所に住宅を持っている場合、相続した実家の土地建物が空き地・空き家になる
・都市の集約化により、郊外から利便性の良い地域への住み替えが進み、以前の住居が空き家になる
・解体費用がかかるので、空き家のまま放置する
・空き家でも住宅があれば宅地とみなされるので、土地への固定資産税が1/6に、都市計画税が1/3になるので、あえて空き家を放置しておく
・人口減少により、新たな都市的土地利用の需要は少なくなるにも関わらず、依然として農業的土地利用から新たな都市的土地利用への転換は進んでおり、一方で、市街地において低・未利用地が増えている

2.空き家対策措置法

様々な理由があるにせよ、管理不全な空き家がある場合は、防災・防犯、衛生、景観などにデメリットを及ぼします。そのため平成26年11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が定められました。この法律では、以下が決まっています。
・空き家の実情を調べる
・空き家の持ち主に管理を適切に行うように指導する
・空き家の跡地を活用することを促す
・管理が適切に行われていない空き家を「特定空き家」に指定できる
・「特定空き家」に助言・勧告・指導・命令ができる
・「特定空き家」に行政代執行や罰金を課すことができる
この措置法により、以前は私有地への不法侵入になってしまった空き家に、管理不全の場合には立ち入り調査が進めやすくなりました。具体的には敷地内に自治体が入って調査ができ、持ち主を確かめるために個人情報の戸籍や住民票、固定資産税台帳が使えるだけでなく、インフラ情報として電気や水道を使っている状況が請求できるため、持ち主の情報を入手しやすくなりました。
さらに「特定空き家」の場合には、これまでの固定資産税、都市計画税の課税標準の特例措置から除外されることになりました。

3.空き家の特徴

それではどのような家や土地が空き家、空き地になるのでしょうか。特徴についてご紹介しましょう。
高級住宅街のように売買需要があるところにも、空き家があります。これらの空き家の場合は、相続トラブルがあり、遺産分割が進まないことが理由として考えられます。当該物件が複数の相続人の共有財産扱いのままなので、誰かの一存で売却、立て直しなどをすることができず、長期間放置されているというケースです。
また、どのような立地でも、古い家屋を解体処分する場合には、その費用も高額となるため、相続人間で合意が得られない、ということもあります。
さらに、狭小住宅、つまり狭い敷地面積で、自動車が入れないような通路沿いの住宅は、再建築ができません。そのため売ることができず、空き家になっているというケースもあります。
さらに放棄物件、というものもあります。高度経済成長期からバブル期にかけて、地方都市のさらに郊外に建てられた分譲住宅は、その利便性の低さから、中古住宅として売却するのが難しい場合があります。そのため相続人や持ち主が放棄したまま、というケースがあります。

3.空き家や空き地があるデメリット

空き家や空き地がある場合、具体的にはどのようなデメリットがあるでしょうか。

・治安・景観・衛生状態が悪くなる

空き家の場合は、無人になるため、廃棄物やゴミが敷地内に不法に投棄されて、ゴミ屋敷になる場合がよくあります。また、生ゴミなどが投機されると、害虫や臭いなどのトラブルが起きたり、近くの住民とトラブルが起きたりします。雑草が茂ったり、雨漏りが発生したり、カビが発生したりすると、公衆衛生が悪くなるリスクもあります。さらに放火などのリスクもあり、二次被害が起きるため非常に危険です。また、落書きを壁や塀などにされる場合も多くあり、周囲の景観を損ねます。
最終的には持ち主がゴミの処分や修繕を自己負担で行うため、高額の費用負担が必要な場合もあります。

・資産価値が下がる

家は人が住んでいないと、老朽化・劣化が進み、その結果、資産価値も低下します。また、空き家があることで景観を損ない、周囲の家の資産価値にマイナスの影響を与える可能性が高いので、周囲の住民とのトラブルも予想されます。資産価値が下がると、売る場合も価格が安くなり、賃貸する場合も修繕費用が多額にかかります。

・税金がかかる

平成26年11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が成立したことにより、「特定空き家」に指定されると、これまでの固定資産税、都市計画税の軽減の対象から除外され、税金がこれまでよりも最大で6倍高くなります。

・費用がかかる

「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、「特定空き家」の持ち主は管理を適切に行う義務が課されました。撤去や修繕の韓国に従わないと、最大50万円の罰金が科されます。また行政代執行などが行われた場合にはその費用も負担する義務が生じます。

4.空き家を活用するためにはどうすればいいか?

もともとは資産だった家が、空き家になってしまった。空き家をただのお荷物にせずに、資産としてもう一度活用できたら、それが一番ですね。では、空き家を活用するためにはどうすればいいのでしょうか?

・売却ができる場合

空き家を持っている理由が特になくて、売却が可能な状況であれば売却するのも方法の一つです。建物を売って、買い主にリフォームを任せる方法も効果があります。思い出が多くある実家を売ることは抵抗が感情的にあるでしょう。しかし、自分で所持したまま、賃貸物件として活用する場合には、リフォーム費用などを負担しなければなりません。そのため、買い主が望むようにリフォームしてもらうのも方法の一つです。
不動産流通経営協会の調査では、約6割の買い主が住宅を買った後にリフォームを行ったそうです。

・売却ができない場合、リフォームをして賃貸に

生活環境がいい市街地などに相続した実家がある場合は、一軒家の賃貸物件として活用しましょう。
建築してから何十年も経っている木造家屋であるため、賃貸物件としては難しいと決めつけないで、賃貸物件にできるかどうか地元の不動産業者に問い合わせてみましょう。国の試算では、活用可能な空き家が全国で約48万戸あるとされています。その条件は、耐震性もあり、腐朽や破損も無く、駅から1km以内で、簡易な手入れにより活用可能、ということです。つまり、多少の手入れをすれば活用ができるのです。リフォーム業界が現在活発になっているのはそのためです。家屋の枠組みのみを残して、全面的に改築するスケルトンリフォームや、悪くなっている箇所だけを交換する部分リフォーム、または内装のみを新しくするだけでも、家は立派に蘇ります。そのようなリフォーム業者は多数ありますので、相談してみる価値はあるでしょう。
賃貸物件として利回りがいいかどうかは、「立地」が影響します。ファミリー向けの賃貸物件の場合には、駅までの通学・通勤のためのアクセスはいいか、ショッピング環境はいいか、治安はいいか、などがポイントになります。客観的な判断を行うためには、ファイナンシャルプランナーや不動産鑑定士など、プロの資産管理家にも相談しましょう。

・「移住・住みかえ支援適合住宅制度(既存定額型)」の利用

また賃貸物件にした場合に、借り主が現れるかが心配な場合は、例えば、大手のハウスメーカーなどのリフォームであれば、「移住・住みかえ支援適合住宅制度(既存定額型)」という、国がサポートしているJTIのものを活用して、最低家賃保証が最長35年間付いた賃貸住宅にすることができます。
この移住・住みかえ支援適合住宅制度は、耐震リフォームを大手のハウスメーカーなどで行った住宅のみが利用できるものです。
なお、JTIというのは、Japan Trans-housing Instituteを略したもので、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構のことです。
具体的には、空き家を貸したい人が、JTIと35年間の最低家賃保証(借り上げは終身)の賃貸契約を結んで空き家を借り上げてもらい、JTIが賃貸住宅を借りたい人から賃貸料を支払ってもらうものです。

・「移住・住みかえ支援適合住宅制度(既存定額型)」のメリット

では、移住・住みかえ支援適合住宅制度を活用するとどのようなメリットがあるのでしょうか?
・JTIが最低家賃保証付で35年間借り上げてくれる

JTIが、空き家を最低家賃保証付で35年間借り上げしてくれるため、周りの家賃相場が低下した場合でも家賃の最低を下回る場合はありません。
・借り主がいない場合でも家賃を保証してくれる

入居する人を募集してから借り主が6ヶ月経過してもいない場合は、規定の家賃が7ヶ月目から支払われます。
・定期借家契約ができる

定期借家契約もできるため、契約が終わった際には、住宅を売却したり、住宅に帰ったりすることもできます。
・入居している人とのトラブルも心配ない

JTIが借り上げしているため、入居している人が家賃を支払わないなどのトラブルも心配ありません

・管理委託をする

賃貸物件として利用できなくても、例えば、「介護施設」の共有物として利用する方法があります。
地方においては高齢化が進んでおり、事業者が介護施設のデイサービスなどとして建物をまた貸しして、運営を管理委託で行っています。空き家を持っている人にとっては、空き家になるのを防止することができます。
事業者にとっては、土地を買ったり、建物を建てたりする費用が必要ないということがあります。
距離が最寄り駅からある物件、狭い車が入りにくい道路に接している物件などが、主なケースとして挙げられます。立地は静かな環境にあるので、人気が介護施設としてある物件も多くあります。

5.相続した物件を活用するために

相続した物件は、それぞれの家族の思い出や歴史が詰まった大切な資産です。それを放置して、空き家・空き地にしておくのはもったいないですね。できれば有効に活用することが、資産を残してくれた人たちへのお礼になるのではないでしょうか。
そのためには、解体・新築をする、または売却、賃貸に出すなど、さまざまな方法があります。いずれもある程度まとまった出費がかかるので、一度は資金繰りが苦しくなることも予想されます。しかし収益物件として上手く再生できると、利回りが期待できます。また、持ち続ける面倒さも、管理委託をしたり、売ったりすることで避けることができます。
実家の空き家を相続し、そのまま放置をして「特定空き家」にされる前に、その物件の持つ可能性を自分で調べて行動することが、収益物件として空き家・空き地を再生させるポイントになるでしょう。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。