相続用語辞典

相続用語辞典

【遺言】

-いごん・ゆいごん-

遺言とは自らの死後に財産分与等の最終意思の表示を民法に定める方式に従い遺した言葉や文章の事。遺言を遺すということは、親族間で相続を巡り、骨肉の争いになる事を防ぐ目的があります。

遺言は意思能力があり満15歳であれば、未成年であってもする事が出来る。

遺言証書の方式は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。代表的なのは「自筆証書遺言」「公正証書遺言」だ。

自筆証書遺言は遺言の全文を自分で書いたものであり、他人に書いてもらうと効力はなく無効になります。

公正証書遺言は公証役場で2人以上の証人立会いのもと作成するので最も確実で正確である。

秘密証書遺言は公証人役場に行き、内容は公表せず遺言に封をした状態で預け、遺言の存在だけを公証人役場で証明してもらうことが出来ます。

遺言により効力が生じる内容としては、相続分の指定など法律で定められたものに限られている。

【遺産分割】

-いさんぶんかつ-

遺産分割とは、相続人が複数存在する場合に、相続人間で遺産を分配する事。

例として相続財産が、家、預貯金、株券などから構成されているとすると、各相続人が単独の所有権者になる手続き(誰がどの財産をとるか)の事を遺産分割という。

遺産分割には

  • 「現物分割(げんぶつぶんかつ)」
  • 「換価分割(かんかぶんかつ)」
  • 「代償分割(だいしょうぶんかつ)」

の3通りの方法が存在します。

現物分割とは、相続分に応じて現物の財産をそのまま分割する事。

換価分割とは、相続する財産を売却しお金に換え、そのお金を分配する事。

代償分割とは、複数の相続人の中で特定された相続人が遺産を相続する場合、

特定された相続人が他の相続人に金銭などを分ける事。

【遺贈】

-いぞう-

遺贈とは遺言により、遺言者の財産を無償で他人に譲る事。

遺贈には、一定の割合を示して譲る「包括遺贈」と、特定の財産を指定して譲る「特定遺贈」の2種類に分類されます。

包括遺贈とは「財産の全て」や「財産の1/3」など財産を特定しないで一括で遺贈する事。特定遺贈とは、財産を特定して遺贈する事。

参考:民法第964条(包括遺贈及び特定遺贈)

遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

ただし、w:遺留分に関する規定に違反することができない。

【姻族】

-いんぞく-

姻族とは、既婚の場合の配偶者の父母兄弟等の事。

配偶者の血族である「義父母」や「義兄弟」のことを言います。

未婚者には姻族という関係は出来ません。

姻族関係が終了する時は、離婚した時となります。

離婚と同時に自動的に姻族関係は消滅しますが、配偶者が死亡した場合は姻族関係終了届を出さない限りは継続します。

配偶者の死亡後に姻族(配偶者の血族)と縁を切りたい場合は、血族の了解を得る事は不要であり、本人の意志で姻族関係終了届を提出する事が出来ます。

【換価分割】

-かんかぶんかつ-

換価分割とは、相続する財産を売却しお金に換え、そのお金を分配する事。

相続財産が不動産だけという場合・複数の相続人が居るのにうまく分配出来ないという場合に活用される方法です。

例えば、9000万円の不動産があり、相続人がABCの3名いる場合、不動産を売却し金銭に替え3名で平等に3000万ずつ受け取る事が出来るということになります。

【共有分割】

-きょうゆうぶんかつ-

共有分割とは、相続財産を各相続人の持分を決めて「共有」で分割する方法の事。

例えば、土地などは各相続人それぞれが自らの相続分の登記を行いその土地を共有します。

【寄与分】

-きよぶん-

寄与分とは、複数の相続人の中で、被相続人の商売を手伝うなどして、貢献した相続人などに他の相続人よりもプラスして財産がもらえます。

寄与分が認められている相続人本人のみであり、その配偶者は含まれません。

寄与分として認められる要件は上記の労務提供のほかに、財産給付・療養看護などがあります。

参考:第904条の2(寄与分)

共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。

寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

第二項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる。

【血族】

-けつぞく-

血族とは血縁者と同じ意味を示す。

血族には2種類あり、自然血族関係はもちろんの事、養子縁組によって成り立つ法定血族関係も含まれます。

どちらの関係も「死亡」よってその関係は消滅します。

参考:民法第725条(親族の範囲)

下記に掲げる者は、これを親族とする。

  • 六親等内の血族
  • 配偶者
  • 三親等内の姻族

参考:民法第727条(縁組による親族関係)

養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけると同一の親族関係を生じる。

【限定承認】

-げんていしょうにん-

限定承認とは、相続人が被相続人から受けた相続のプラス分で補える範囲でマイナスの財産も引き継ぐ事。

参考:民法第922条(限定承認)

相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。

【現物分割】

-げんぶつぶんかつ-

現物分割とは、相続分に応じて現物の財産をそのまま分割する事。 シンプルで分かりやすいので、遺産分割の手法の中で最も多く取り入れられ、基本的な分割方法です。

例えば、被相続人の財産が、不動産と預貯金があり、相続人がA子・B子と2人居る場合にはA子は不動産を相続し、B子が預貯金を相続するという事になる。

【公正証書】

-こうせいしょうしょ-

公正証書とは、公証役場で2人以上の証人立会いのもと作成するので最も確実で正確である。

また公証役場で公正証書の原本を保管する為、紛失やねつ造などの心配もありません。

作成をするにあたって、手数料がかかりますが、相続財産の額によってその手数料は変わってきます。

参考:(公正証書遺言)民法第969条

公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

  • 一  証人二人以上の立会いがあること。
  • 二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
  • 三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
  • 四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。

      ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、

      署名に代えることができる。
  • 五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、

      これに署名し、印を押すこと。

【香典】

-こうでん-

香典とは霊前等(通夜または葬式)に供える金銭の事。「香典」の「香」という字は線香の代わりにという意味がある。

お香典の金額は故人との親交の深さによって異なり、香典袋の表書きも宗教や儀式によって異なりますが「御霊前」は全ての宗教や儀式で統一されていますので、表書きには「御霊前」と書くのが良いでしょう。

※参考※

 仏式⇒御霊前・御香典・御香料

 神式⇒御霊前・御玉串料・御神前

 キリスト式⇒御霊前・御花料・献花料

 無宗教式⇒御霊前

【債務控除】

-さいむこうじょ-

債務控除とは遺産総額から被相続人の債務を差し引く事。

控除の対象となるのは、被相続人の住宅のローンや借金(金融機関から)や、事業未払金・売掛金、未払いの医療費などである。

また、税金で対象となるのは住民税・贈与税・固定資産税・所得税・相続税などの控除が可能である。

香典返しなど葬式費用の中でも対象外となるものもある。

【死因贈与】

-しいんぞうよ-

死因贈与とは、被相続人(贈与者)の死亡よって生じる。 贈与契約となるので、受け取る側(受贈者)の承諾が必要となります。

「死因贈与」と「遺贈」は遺言者の財産を無償で他人に譲る「贈与」の一種であり類似しているが、死因贈与は贈与を受ける受贈者の承諾が必要であり、遺贈は贈与を受ける受贈者の意志には関係なく贈与する事が出来るという点で変わってきます。

(死因贈与)民法第554条

「贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、
その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

【二次相続】

-にじそうぞく-

二次相続とは、先に父が死亡による相続を一次相続と言い、その次に母の死亡による相続を二次相続と言います。

二次相続に備えた対策は、一次相続の時点から重要となってきます。 なぜなら、父の死亡による一次相続の時点では、母は配偶者の税額軽減により法定相続分か1億6000万円のいずれか多い金額に達するまでは相続税がかかりません。
ですので、父の死亡による一次相続だけを考えると、配偶者である母に多く相続させた方が、相続税を抑えることができます。

しかし、その次に母が亡くなった二次相続では、配偶者の税額軽減がありませんので、二次相続する子供たちには、一次相続で母が相続した財産に対する相続税もかかってきます。

よって、一次相続の時点で、二次相続も踏まえた検討が必要となってきます。

【任意後見】

-にいこうけん-

任意後見は、将来の後見人の候補者を、本人があらかじめ選任しておくものです。

法定後見が、裁判書の審判によるものであるのに対し、任意後見は契約であり、後見人候補者と本人が契約当事者となり、この契約は公正証書によっておこなわれます。

将来、後見人となることを引き受けた者を任意後見受任者と言い、任意後見が発効すると任意後見受任者は任意後見人となります。

任意後見人の行為は、定期的に裁判所の選任する任意後見監督人により監督を受け、任意後見監督人は裁判所に報告することで、国家は間接的に監督するものであります。

【配偶者の税額軽減】

-はいぐうしゃのぜいがくけいげん-

被相続人の配偶者については、老後の生活を保障しなければなりませんし、被相続人が財産を築きあげたとしても、それは少なからず配偶者の貢献があったからにほかなりません。

また、被相続人とその配偶者は同一世代であり、同一世代間での財産の移転なので、次の相続までの期間が短いと想定されます。

これらの事情を考慮して、被相続人の配偶者の税額計算については、税額軽減が受けられます。

配偶者の相続分が法定相続分か1億6000万円のいずれか多い金額に達するまでは、配偶者には相続税がかかりません。

なお、配偶者の税額軽減は、配偶者以外の法定相続人が誰かにより、控除額が変わることになります。

【被相続人】

-ひそうぞくにん-

被相続人の財産上の地位を承継する者のことを相続人と言い、これに対して相続される財産、権利、法律関係の旧主体を被相続人と言います。

【卑属】

-ひぞく-

自分より後の世代に属する者を卑属と言い、子や孫等のことを言います。

一方、自分より前の世代に属する者を尊属と言い、父母や祖父母等のことを言います。

【秘密証書遺言】

-ひみつしょうしょゆいごん-

相続手続きで最も重要なことは、遺産分割で残された相続人が互いに争うことを回避することです。

このために最も有効な方法は、遺言書を作成し、信頼できる者を遺言執行者に指名することです。

遺言は、民法で定める方式に従わないと無効とされますので、作成には注意が必要です。

普通方式の遺言には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類の方式があります。

秘密証書遺言は、遺言者が証書に署名押印し、証書に用いた印章で封印し、その証書を公証人と2人以上の証人の前に提出して、自己の遺言書である旨と、筆者の氏名・住所を申述し、公証人がその証書を提出した日付と遺言者の申述を封紙に記載した後に、遺言者と証人が自署押印することにより作成します。

相続発生後には、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。

他の2種類の方式との大きな違いとしては、自分で作成した遺言書を封筒に入れて封印した後で、公証人と2人以上の証人の前に提出するため、遺言書の内容が誰にも見られないと言うことです。

【普通失踪】

-ふつうしっそう-

相続は人の死亡によって開始します。 人の死亡については、特に民法では定義されておらず、常識的な範囲で死亡を判断します。

稀なケースですが、民法では人が死亡したかが不明な場合でも、死亡したものとみなして相続が開始する場合があります。

行方不明になった人の生死が7年間わからない時には、家庭裁判所は利害関係人の請求により失踪の宣告ができます。

これを普通失踪と言います。 失踪の宣告がされた場合には、7年間の期間の満了した時に、死亡したものとみなされて、相続が開始することになります。

【物納】

-ぶつのう-

相続税の納税は、金銭による一括納付が原則ですが、資金の面から金銭による納付が困難な場合には、物納が認められています。

物納は、申告書の提出または更正もしくは決定により、納付すべき税額を延納によっても金銭で納付することが困難な場合に、その金銭による納付が困難な金額を限度として税務署長の許可を受けることによって認められます。

物納に充てることができる財産は、納税義務者の課税価格計算の基礎となった財産で、国債および地方債・不動産および船舶・社債および株式ならびに証券投資信託または貸付信託の受益証券・動産があります。

これらには優先順位があります。

また、物納財産の収納価額は、課税価格の計算の基礎となった、その財産の価額によることとされています。

物納は、許可後において、金銭納付が可能となった場合には、撤回できることとされています。

ただし、すべてにおいて物納が認められるというわけではなく、国が管理や処分をするのに不適当であると認められる管理処分不適格財産は、物納財産として収納されません。

したがって、納税資金が不足し物納の必要が想定される場合には、あらかじめ物納財産の適格性の要件を満たす準備が必要になります。

【傍系】

-ぼうけい-

血統が共同の始祖より直下する異なった親系に属する者相互の間の親族関係を、傍系あるいは傍系親と言い、兄弟姉妹やおじおばや甥姪等のことを言います。

一方、血統が直上直下で連結する親族関係を、直系あるいは直系親と言い、祖父母や親や子供や孫等のことを言います。

【みなし相続財産】

-みなしそうぞくざいさん-

みなし相続財産は、本来、民法上の相続財産ではありません。

しかし、その財産を取得することが、実質的に相続または遺贈によって取得したことと同様の経済的効果をもたらすため、その経済的効果に着目して、相続税の計算上、相続財産とみなす財産です。

みなし相続財産には、死亡保険金・死亡退職金等・生命保険契約に関する権利・その他の一定の利益の享受等があります。

なお、みなし相続財産とされる死亡保険金、死亡退職金については、相続人の生活保障等を考慮して、一定の金額については相続税がかかりません。

【名義預金】

-めいぎよきん-

形式的には配偶者や子・孫等の名義での預金ですが、収入等から考えれば、実質的にはそれ以外の真の所有者がいる、つまりそれら親族に名義を借りているに過ぎないものを、名義預金と言います。

したがって、名義預金は名義人の財産とはならず、亡くなられた方の遺産となります。

【暦年課税制度】

-れきねんかぜいせいど-

贈与税には、暦年課税と相続時精算課税の2つの方式があります。

暦年課税の贈与税には、基礎控除と言うものがあり、基礎控除額は1年間当たり110万円です。

したがって、1年間に110万円までの贈与を受けても、贈与税はかかりません。

贈与税の計算をする際の課税価格は、その財産の贈与時の時価になります。

ただし、時価と言っても、財産毎に時価を把握することは困難であることから、財産評価基本通達による評価額を時価として計算します。

【失踪宣告】

-しっそうせんこく-

失踪宣告とは、住所又は居所を去った者(民法25条1項)である不在者や、死亡が確認できていない者に対して、法律上いったん死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。

失踪宣告には特別失踪と普通失踪の2種類で、概要は以下の通りです。

  • 特別失踪…船舶の沈没・従軍、地震や津波の影響、飛行機事故等の特別な危難にあった場合の失踪であり、通常危難が去った後1年経過というのが原則であるが、飛行機や船の事故の場合においてはこれを3ヶ月としており、東日本大震災とそれによる津波については3ヶ月で認められることとなりました。

    しかしながら、この3ヶ月で認められることに関しては民法が改正されたわけではないので、一年が経過しないと戸籍上死亡とはみなされません。
  • 普通失踪…特別失踪に当てはまるような原因のない通常の失踪で、失踪期間が7年経過した時に、家庭裁判所に失踪宣告の申し立てを失踪者の利害関係人が行うことが出来ます。

両者必要な失踪期間と失踪宣告により死亡したものとみなされる時期が異なります。

参考…民法第30条(失踪の宣告)

  • 1 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
  • 2 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。 民法第31条(失踪の宣告の効力)

    前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。

【指定相続分】

-していそうぞくぶん-

遺言者は、遺言で民法の定める法定相続分と違う相続分を指定することが出来ます。

これを指定相続分と呼び、それだけでなく第三者に相続分の分割方法を委託する事も可能です。

このような(遺言や委託された者が定める)方法による相続分の事を言います。

また、上記の方法で分割方法を指定することを指定分割といい、被相続人の遺言書があれば、書かれた内容に従い財産を分けることになります。

もちろん、遺留分を侵害すると減殺請求の対象になります。

また、民法で定められている相続財産の分割を法定相続分と呼び、指定相続分はそれに対して遺言による指定であると言う点が大きく違う点で、指定相続分は法的相続分に優先する。

ただし、被相続人または委託された第三者が相続人の中の1人~数人の相続分のみを定めた時に、他の共同相続人の相続分については、法定相続分の規定にそって定まります。

地方税法または国税通則法の準用・適用がある公租公課は、遺言による指定・指定委託がある場合に、指定相続分による承継が原則となります。(国税通則法5条2項、地方税法9条2項が民法902条を用いることを明記)

尚、公租公課は、承継する財産の価額が承継税額を超える場合には、超過分を限度に他の相続人と連帯して納付する義務を負う。

【受遺者】

-じゅいしゃ-

遺贈(遺言による遺産の贈与)を受けるものを受遺者、また遺贈を履行する者を遺贈義務者と言います。

遺言執行者が指定されていれば、遺贈義務者は遺言執行者であり、指定されていなければ相続人です。

また、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡している場合には、この遺贈の効力は生じないと規定されています。

あくまでも遺言は遺言者死亡時に効力が生じるため、遺言者の死亡以前の死亡の場合だけではなく、同時に死亡した場合も同様です。

この受遺者で重要なことは、相続人でなくても遺言があれば第三者が財産をもらえることにある点です。

被相続人からみれば第三者ではない事実上(入籍されていない)の養子や内縁の妻など、法律的には相続人になれない者に遺産を移すには、遺言以外の方法はありません。

遺言者に借金があった場合、相続人と共にその責任を追う必要があり、遺言者の死亡後受遺者は、いつでも遺贈の放棄をする事が可能です。(986条参照)

そして受遺者が遺贈の承認・放棄をせずに死亡した場合は、その相続人は自己の相続権の範囲内で遺贈の承認・放棄をする事が出来るが、遺言者が遺言に別段の意思を表示した場合にはそれに従う。(988条参照)

受遺者と相続人の違いとしては、法人には相続が観念できないので、相続人にはなれませんが、受遺者になる事が可能である点、受遺者は遺留分を有さない(相続人固有の権利と解釈されているため) 受遺者は、代襲相続が発生しない点等の違いがあります。

【しんぞく】

-しんぞく-

民法において、血縁が繋がっているものを血族、配偶者の一方からみた他方配偶者の血縁関係にあたるものを姻族といいます。

血族には自然血族(自然の血縁関係にあるもの※直系・傍系問わず※)と、法定血族(法律規定により血族とされている者)を言うが人為血族・準血族とも言われる。日本の現行民法において養子縁組による血縁関係のみが、この法定血族となっています。

この血縁を辿るのではなく、「親族」と呼ばれるものは範囲が定められており、その範囲は「等親」という階級を使って親族ごとに奉呈する階級等親制と、世数を「親等」という単位で数え、客観的に定める世数親等制があります。

日本の民法で採用されているのが親等を用いた親族の範囲を客観的に定める法制であり、親族は配偶者と6親等内の血族、三親等内の姻族の事です。

親等の数え方は、直系親族(血統が真上真下で連結する親族関係※父・母、祖父母、子供など)の場合は親族間の世代を数える形になっており、親子関係が一世代移動する毎に1親等を数えます。

傍系親族(血統が始祖より直下する異なった親系に属する相互の親族関係※兄弟・姉妹・おじおば・甥姪など)の場合の数え方は、同一の祖先に遡ってから対象の人物に下るまでの世代数を数える。

つまり兄弟を例にすると、本人⇒親⇒兄弟という数え方になり、兄弟は二親等である。

さらに従姉妹を例にすると、本人⇒親⇒親兄弟⇒従姉妹という数え方になるため、4親等である。

さらに日本の民法上の具体的な親族範囲については、血族は6親等内・姻族は3親等となっており、この範囲は民法で法定されているため、義絶や勘当の個人的な都合や意思で範囲を変える事は出来ない。

【相続】

-そうぞく-

相続とは、一定の親族的身分関係にあるものの間において、その一方の死亡によって財産的義務・権利の一切を承継することです。

「財産上の人の死亡による権利義務の包括的な承継」と言われ、一般的に権利義務は

主体…人

客体…物(遺産)

以上の二つから成り立ちます。

相続というのは、この権利義務の主体部分の変更であり、もちろん被相続人から相続人にという形です。

相続の主役となる人は「被相続人」「相続人」であり、その他に被相続人を取巻き、色々な人が登場します。

例えば被相続人の債権者の相続債権者であったり、相続人の債権者や、被相続人の債務者、銀行等の金融機関は借り入れがあれば相続債務者、預金があれば債務者となります。

それだけではなく、共同で会社を経営していた場合のパートナーや、家主・借家人、地主・借地人や、遺言がある場合の受遺者、遺言執行者、死因贈与の受贈者他にも親族、友人、知人、顧問の税理士や弁護士に司法書士、取引がある場合は取引関係者においても相続という言わば一つのドラマの登場人物と言えましょう。

そして物(遺産)の一例としては、土地・建物・現金・預金債権・その他の債権・株式・社員権・美術品や骨董品・電話の加入権・特許権・著作権・漁業権・採石権・債務(連帯債務・保証債務)・墓地・墓石等がありますが、上記以外にも色々な権利義務があります。

人は権利義務の主体で、物は客体なので、両者は不可分の関係にあります。 被相続人一人が持っていた権利・義務を複数の人間で分けると言う事が、相続で問題が発生する大体の出発点とも考えられます。

更には、被相続人を取巻く複数の利害関係者が皆それぞれの利害関係を元に集まるので、簡単には済まない場合が殆どといわれています。

【相続税】

-そうぞくぜい-

相続に伴う税金のメインとも言われるもので、相続・遺贈・死因贈与(遺贈は遺言による一方的な贈与、死因贈与は被相続人の死亡を原因とする贈与契約)により財産を所得した財産にかかる国税が相続税で、財産を取得したものは、相続税を支払う義務があります。

また、この相続税の申告は相続の開始があった日の翌日から10ヶ月以内になさなければならず、通常は税務署が被相続人の死亡半年後ぐらいに、相続税申告のお知らせと申告添付書類一式を送付してきます。

原則として、相続税の申告と納付期限は同一ではありますが、相続税特有の制度があり、所得税の申告とは異なります。

例えば遺産に不動産や芸術品等が多く含まれているなど、納付すべき日に金銭で納付することが困難な場合、相続人は申請により許可を求めることが出来る「延納」や、それによっても金銭で納付することが困難な場合、申請により「物納」の許可を求めることが可能です。

そして相続税の戦略や対策を練る上でのシミュレーションも必要となります。

例えば基礎控除(相続税を支払う必要があるか否か)や、総額計算(相続税の全体を把握するため)、株式評価、小規模宅地の減額、配偶者の税額軽減、物納・延納、場合によっては、相続税を支払うために遺産の売却等の事を視野にいれて、戦略や対策を練る必要があります。

【相続放棄】

-そうぞくほうき-

相続開始後に、相続人が遺産の相続を放棄することを相続放棄といいます。

具体的には、被相続人の負債が多かったり、相続自体に魅力が感じられない場合の放棄や、家業の相続に関しては、相続人が保管の業務がある事や、安定経営を実現させる為に後継者以外の兄弟姉妹が相続辞退する時などに使われる事が多い。

また、3ヶ月以内に相続放棄もしくは限定承認のどちらかを選択しなかった場合(期間の伸張を申し出ない場合)単純承認とみなされます。

また、相続放棄をすると、最初から相続人とならなかったものとみなされるので、遺産分割とは違い第三者の権利を害する事は不可能という制限はなく、代襲相続も発生しません。 基本的に相続放棄を行うと同順位者がいればその者が相続人となるが、同順位者全員放棄した場合後順位者が相続人となる。

また、未成年者が相続放棄する場合、法定代理人(親権者等)が代理として、相続放棄の申述を行うこととなります。

しかし親子両方が相続人で、未成年者のみ相続放棄をする場合、両者が放棄する場合は問題はありませんが、未成年者のみの放棄の場合は親子の利害が対立する事になるため、家庭裁判所に申し立て、特別代理人を選定してもらう必要があります。

【贈与】

-ぞうよ-

贈与とは、贈与者が自己の財産を無償で相手方に与える事で、贈与者がその意思を示した内容の契約を、贈与契約といいます。

民法で規定されている贈与は、己の財産を無償で相手方に与える意思を示し、相手方がそれに受諾することによって成り立つ片務・諾成・無償の契約である(民法549条) と規定されており、交換や売買と同じ権利移転型契約(譲渡契約)に分類される。

売買は有償/双務契約であるのに対し、贈与は無償/片務契約の典型である。

ここで言われる「自己の財産」と呼ばれるものに関しては、物件や債権、用益権設定も含まれる。

また、生前贈与を受けると、共同相続人中被相続人から

・遺贈(遺言による贈与)

・婚姻、養子縁組のための贈与

・生計の資本としての贈与

を受けたものを特別受益者といい、この場合遺産を前渡されている勘定になるので、相続分は

1、被相続人が相続買い指示に有していた財産の価値に

2、その贈与の価値を加えたものを相続財産とみなし

3、これに算定した法定相続分を乗じ

4、その遺贈ないし贈与の価値を控除

した残額となります。

相続開始時に贈与分を既に使ってしまっていても原状のままあるものとして計算します。(904条)

使ってしまって現在はなくなっていても、存在するものとして計算されます。

【尊属】

-そんぞく-

尊属とは直系尊属と傍系尊属からなる総称です。

意味自体は自分よりも世代が上(先の世代)にあたる血族が尊属です。

逆に世代が下にあたる血族を卑属と呼び、世代が自分と同じ者に関しては、どちらにも当てはまらない。

この尊属とは血族に当たる者に当てはまる言葉であり、血族以外の者についてはこの区別は当てはまりません。

更に尊属を大きく二つに分ける「直系」と「傍系」についての説明は下記の通りです。

「直系」とは、血筋の繋がりが父祖から子孫へ一直線である親族であり、父・祖父などに当たるのがこの直系の区分に当てはまります。

「傍系」とは、上で述べた直系とは違い、同じ始祖より繋がっている系統であり、兄弟・姉妹・おじおば・甥(おい)・姪(めい)などに当たるのがこの直系の区分に当てはまります。

この直系・傍系に当てはまる尊属が直系尊属と傍系尊属です。

【代襲相続】

-だいしゅうそうぞく-

まず、代襲相続とは例えば子に代わって孫が、兄弟姉妹に代わって甥姪が相続するような場合を代襲相続と呼んでいます。

■孫など直系卑属の場合■

被相続人の子が、相続開始以前に

・死亡したとき

・相続欠格事由に該当するとき

・廃除されたとき

その者の子が代襲相続人になります。(889条2項) 代襲者に上の記載事項が当てはまった時は、代襲者の子がさらに代襲相続を行い、つまり孫あるいは曾孫までが相続人になる事が可能となっています。

■甥・姪の場合■

兄弟姉妹に上の記載事項が当てはまる場合は、その者の子(つまり甥・姪)が代襲相続人になります。

ただし代襲に上記事項があっても、代襲相続は起こりません。

甥姪の子は相続人になりません。

代襲相続人の相続分に関しては、被代襲者の相続分と同じです。

一例として、長男・次男・長女の3人の子がいたとして、被相続人より先に長男が死亡し、長男には二人の子がいたとすると、法定相続分は

・次男・・・三分の一

・長女・・・三分の一

・長男の子・六分の一ずつとなります。

【代償分割】

-だいしょうぶんかつ-

代償分割とは、一部の相続人が現物を取得して、その相続人が他の相続人に対し代償金を支払うことによって遺産を分割する方法です。

家事事件手続き法195条にその根拠があり、家庭裁判所は「特別の事情があると認めるときは、遺産の分割の方法として、共同相続人の一人または数人に他の相続人に対する責務を負担させて、現物の分割に代えることが出来る」とある。
つまり、金銭で調整するほかない場合のあることを法も予想しているという事です。

しかしながら、いかなる場合でも代償分割が許されているわけではありません。

代償分割が認められる条件は、「特別の事情」がある場合だけです。

【単純相続】

-たんじゅんそうぞく-

単純相続とは、無条件・無制限で被相続人の権利義務を承継する方法をいいます。

民法ではこの方法を本来的な相続のパターンと考えていて、他の方法を相続人が選択しないで、相続開始を知ってから、3ヶ月が経過してしまうことで、単純承認をしたものとみなします。

その間に相続放棄や限定承認の手続きをとれば、単純承認にはなりません。

【弔慰金】

-ちょういきん-

弔慰金とは死者を弔い、遺族を慰める気持ちを示すために贈る金銭の事です。

香典と一緒に考えている方は現在では多いですが、この二つの違いは香典はお香料に代わるもので、葬儀の際に渡すのに対し、弔慰金は後日で会っても差支えがない点が違いです。

弔慰金は古来葬式などの儀式で自家伝来のお香を持ち寄り、死者に手向けていた事より、この言葉が発祥されました。

つまり弔慰金は霊に手向けるお香や花に代わるお金という意味が込められており、金額は生前の付き合いと地域の風習に合わせる形が一般的です。

また、お札に関しては新札を用意すると死ぬ以前から準備していたと思われる事もあるため、基本的には使い古した札や、半分に折って入れるなどの考慮が必要となります。

その際の表書きについては、薄墨で書くのが本来の風習で「涙に墨も薄くなる」という意味合いが込められています。

【直系】

-ちょっけい-

血統が真上真下で連結する親族関係※父・母、祖父母、子供など)が直系に当てはまります。

また、直系というだけでは一直線に血統が繋がっているという関係区分でしかないが、直系尊属であれば、父母・祖父母などの自分よりも上の世代に当てはまる血族です。

反対に直系卑属であれば、子・孫などの自分よりも下の世代に当てはまる血族です。

【特別失踪】

-とくべつしっそう-

船舶の沈没・従軍、地震や津波の影響、飛行機事故等の特別な危難にあった場合の失踪であり、通常危難が去った後1年経過というのが原則であるが、飛行機や船の事故の場合においてはこれを3ヶ月としており、東日本大震災とそれによる津波については3ヶ月で認められることとなりました。

しかしながら、この3ヶ月で認められることに関しては民法が改正されたわけではないので、一年が経過しないと戸籍上死亡とはみなされません。

また、失踪宣告と間違われるのが認定死亡です。

認定死亡とは水難・火災・爆発などの危難に遭遇し、遺体の所在は不明であるが、死亡が確実である場合に官公庁の証明書によるとセ規模を記載する制度です。

死亡の証明がされない失踪宣告と違い、1年経過の原則がありません。

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