2016年初旬に日銀がマイナス金利政策を導入したのは、みなさまも記憶に新しいと思います。住宅ローンの変動金利を選んだ方や、今後ローンを組もうと考えている方々には有利な条件ではあるが、いざ相続に目線をやると今まで大活躍をしてきていた一時払い終身保険の販売を各保険会社がどんどん販売停止にし、相続対策の手法の一つが活用できなくなっている現状があります。

ではこれまで一時払い終身保険とはどの様な活用がされていたのでしょうか。
まず名前の通り終身保険は保障が一生涯続く生命保険契約になります。

この終身保険には簡単に考えると3人の登場人物が居ます。

➀契約者⇒契約の締結をする人、保険料の支払いをする人
➁被保険者⇒保険事故の当事者
➂保険金受取人⇒生命保険金を受け取る人

一般的に、一時払い終身保険は下記のように契約をされます。

➀契約者⇒親
➁被保険者⇒親
➂保険金受取人⇒子供

被保険者である親に死亡事故が発生した場合、保険金受取人である子共が生命保険金を受け取ることになります。この子供が受け取った生命保険金には非課税枠として「相続人の数×500万」までは相続税がかかりません。

例えば、相続人が長男・次男の二名の場合には1000万円の非課税枠がありますので、長男が1500万円の生命保険金を受け取ったとしても、相続税の課税対象は500万円になります。

そして、生命保険金は民法上では相続財産とみなされていないため遺産分割の対象とはなりません。
例えば、現金などの相続財産があった場合、遺産分割で争続になった場合など遺産分割協議が終わるまで預金口座は凍結されて引き出すことが出来ません。

しかしながら相続税の納付は期限があります

そこで生命保険金として受け取っておればそのお金の使い道は自由になります。
また仮に争いになった場合にこの生命保険金を分けることで遺産分割協議がスムーズに行われるといった事例も多く見受けられます。
また実際に、遺産分割で争っていた兄弟がいましたが、長男が、この生命保険金を次男に渡すことで、納得させて、何とか、協議書が作成できた事例もありました。

また、一時払い終身保険の大きな特徴として、一度に大きな資産(金額)を移すことができます。例えば高齢者が預貯金や不動産などの相続財産を持っていると、亡くなった際に大きな相続税が徴収される可能性が出てきます。
預貯金が多いのであれば、その一部を一時払い終身保険に加入することで上記でご説明しました生命保険の非課税枠で課税対象を大きく減らせることになります。

また、通所の生命保険であれば年齢制限や健康状態などの加入条件がありますが、一時払い終身保険ではこの辺りの条件が緩和されている会社が多いです。つまり相続対策を始める時期が晩年であってもチャンスが十分にあることを指します。

ではこのように相続対策の商品としてメリットも需要もあった一時払い終身保険がなぜ販売停止になるのでしょうか。
その理由としましては生命保険各社は契約者からお預かりした保険料を主に日本の国債で運用しています。
しかしながら冒頭記述したようにマイナス金利により国債の利回りが低下し、本来の運用利回り(予定利率)の確保が困難になったためです。
また、販売停止に至らずとも、運用難によって保険料を値上げする動きも相次いでいるのが現状です。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。