年々実家を相続しない人が増えている?

 最近、実家を相続しない人が増えているというニュースが入ってきました。これも2015年に行われた税制改正の影響でしょうか。相続税の課税最低額が引き下げられたことで相続税の申告や納税をしなければいけない人が急増したのが要因です。中でも多いのが実家で一人暮らしの母親が亡くなったときです。父親が亡くなった場合は母親が相続する配偶者控除が使えます。配偶者控除は被相続人の財産1/2までか1億6000万円までなら相続税がかからないことを言います。残りの1/2は子供たちで財産分与を行います。

父親が亡くなったときは単純に1億6000万円以上の遺産相続がなければ問題ないことになります。ところが次の相続になると配偶者控除が使えません。平均して父親の方が先になくなりその16年〜50年ほどしてから母親が亡くなることが多いようです。この期間で子供たちもそれぞれ独り立ちし持ち家を保有するようにもなっています。そこで実家を相続できると言われてもいらないという選択をする人が多いようです。

相続税の法改正で今までは5000万円までの遺産総額だったら無税になっていたところ、現法では3000万円までしか控除されません。

 実家を相続しないというだけなら話は楽なのですが実家をどう処分するかで相続人同士が揉めるケースも増えてきています。実家を売却してそのお金を相続人同士で分けようとしても遺品整理などすることは山積みです。遺品も思い出があれば捨てにくいですし、実家を売却しようにも都内と地方では売れるか売れないかが大きく変わってきます。都内であれば早めに書いてがつくことも考えられますが、地方では築年数が経っている不動産はあまり買われない傾向にあります。かといって費用をかけてリフォームをしようにもその費用を相続人の中で誰が負担するべきなのか、話し合いをしていく過程でトラブルに発展することがあります。

 相続人同士で話が進まないことで空き家にしてしまえば近所の迷惑になります。雑草だらけのまま放置して自治体から危険な空き家に認定されてしまうと建物が建っているのにもかかわらず固定資産税の評価額が更地並に高くなり高い税金を支払わなければいけないことがあります。

 実家を相続しても相続税を払いすぎている家庭も多いです。通常、相続税を始めとする不動産関係の税金は路線価を使って求められます。路線価とは道路についている値段のことで路線価と所有する(相続する)面積で計算できます。相続税のことに不慣れで税理士に相談する人が多いですが、その税理士も相続税に詳しくなかった場合は節税方法が曖昧になってしまい結果的に税理士に相談しても税金が安くならないことがあるのです。

実家を相続する時にかかる税金は?

 実家を相続する際に発生する税金は2種類です。登録免許税と相続税です。登録免許税とはホム曲で登記申請を行う際に発生します。相続すると所有者の情報を変更する必要が出てきて、法務局へ出向いて所有権移転登記を行わなければいけません。

登録免許税の計算方法は固定資産税評価額に0.4%をかけたものです。この計算をする注意点は100円未満を切り捨てにすることです。固定資産税とは市町村が決定するものでその不動産にどれくらいの資産があるかというものです。市町村が決定するものなので実際にその不動産に着く適正な評価額よりも低く見積もられる傾向があります。実家が戸建だった場合は固定資産税評価額をそのまま評価できますが、マンションの場合はマンション全体の評価額から持分割合を計算し実家が、全体の評価額の中からどれくらいの価値を持っているのか計算します。

登録免許税は税額分の印紙を購入して相続登記申請書に貼り付けて提出すると納税完了になります。自分で相続登記するのではなく司法書士など代理で依頼する場合、税金や印紙代については実費で支払うことになります。

 相続税は被相続人が所有していた財産を相続人をはじめとして引き継ぐ際に発生します。遺産総額は次の計算以上だった場合に発生します。「3000万円+相続人の数×600万円」。

 原則として3000万円までの相続だったら相続税がかからないということですね。相続税のことをよく理解せずに税理処理を行ってしまうと後々税務署に目をつけられる可能性もあります。相続に強い税理士に相談するようにしましょう。

 相続で出てくる相続人とはどのようなことを言うのでしょうか。相続人は基本的に法定相続人と呼びます。法定相続人とは具体的に被相続人の配偶者とその子供のことを言います。子供がいない夫婦の場合は相続人として被相続人の兄弟などが出てくる可能性があるので注意しましょう。相続税は遺産全てにかかってきます。遺産は銀行などに預けられている資産、不動産はもちろんですが宝石品・会員権だけでなく借金も相続に関係してきます。もし被相続人が多額の借金を抱えていた場合は相続せず相続放棄するようにしましょう。

実家の相続に使える控除って?

 実家を相続する上で控除できる方法がいくつかあります。控除とは全体の費用から引くことで税金の計算から逃れることができます。では、控除について紹介していきます。

 まずは配偶者控除です。配偶者は法定相続分(1/2)か1億6000万円までなら無税で相続できます。マイホームの土地と建物を相続した場合は相続税の課税から80%減額して相続税の納付ができます。10年以内に2回相続が発生した場合は相続税の負担が大きいので控除されます。相続人が未成年・障害者の場合も相続税を一定額控除されます。

 実際にこれだけの控除方法がありますが相続についてよく理解していない税理士だと控除についてよく理解していないだけでなく、控除申請の仕方についても不明なことが多いです。相続について税理士へ依頼しようとしている人はあらかじめ相続について詳しい税理士を調べておくようにしましょう。

わかりやすい、相続税の計算方法

 建物と土地を一緒に相続した場合、建物と土地を別々に考えて相続税の計算をします。建物の評価額は固定資産税評価額を基準にします。例年5月になると市町村の担当窓口から送られてくる固定資産税評価額の紙に評価額が書かれています。

 土地の評価額を計算するには路線価を使用します。路線価とは日本の各道路についている値段のことです。その価格のついている道路に面している土地はその路線価で土地の価格を計算できます。

路線価はすべての道路に設定されているわけではないです。そこで路線価の設定されていない土地については固定資産税評価額をベースに土地の相続税を計算します。しかし、固定資産税評価額は路線価を利用した計算方法に比べると相続税が安くなってしまう傾向があります。

路線価で相続税を計算している人にとっては不平等になってしまいますよね。そこで固定資産税評価額を利用する場合は路線価を利用する時と同じような金額になるよう調整が入ります。この調整を行う計算方法を倍率方式と呼んでいます。

実家の相続において、できる対策は?

 実家の相続で揉めないために大切なのは事前に被相続人・相続人で話をしておくことです。被相続人がどのようにしたいと考えているか聞いておくと実家をどのようにするか展望が開けやすいです。また、資産としてお金を持っておくと財産として分けやすく何かと支払いの時に楽になります。やはり相続人同士であっても誰が負担するかというのはネックになってきますよね。相続人同士でも実家相続の希望や実家を残す残さないについて話しあっておくと揉めるリスクを減らすことができます。

まとめ

 実家を継がずに放置してしまう人が増えてきています。これは相続できるものが不動産だけの場合が多いです。また相続人同士で実家の処遇について揉めることもあります。このように実家のことで揉めないようにするには相続人と被相続人で実家について話をしておくことが必要です。実家を残す場合には維持費の負担や意地を誰がするのかも関係していきます。

 あらかじめ被相続人と相続人で話し合うことも大切ですが、相続について詳しい専門家に相談し使える節税対策について教えてもらうのも一つの手です。実家を相続するときには控除額という税金を減らす処置ができます。税理士に相談すれば教えてくれるので活用するようにしましょう。他にも税金を支払う・税理士に相談するなど実家に関係することに支払うためのお金を作っておくのも相続人同士で揉めないための工夫の一つになります。大切な実家はできるだけ相続人全員で保管・維持していくようにしましょう。草が生え放題など管理できていないと近所の人の迷惑になります。