遺言書にはいくつかの方式がありますが、その中で最も手軽なものが、「自筆証書遺言」と呼ばれるものです。

自筆証書遺言は、証人や立会人が不要なので一人で作成することができますし、紙や筆記用具等を揃えるだけで作成できるので、費用もほとんどかかりません。
このように、手軽に作成できるというメリットを持つ自筆証書遺言ですが、他方で、公証人等の専門家が関与しないため、せっかく遺言書を作成した場合であっても、方式に不備があるという理由で無効になることも少なくありません。
ここでは、どうすれば有効な自筆証書遺言を作ることができるのか、自筆証書遺言を作成する際にどのような点に気を付ければよいのか、という点を見てみましょう。

有効な自筆証書遺言の条件

有効な自筆証書遺言の条件は民法という法律に定められており、具体的には、次の3つの条件を満たす必要があります。

➀全文を自書すること
➁日付の記載があること
➂氏名の記入及び押印があること

これら3つの条件について、もう少し詳しく説明していきます。

➀全文を自書すること

「自筆証書遺言」は、その名の通り「自筆」、つまり自分の手で書かなければなりません。ここで、自分の氏名だけではなく、全文を自筆で書かなければならないという点に注意しましょう。遺言の本文はパソコンを利用して作成し、プリントアウトしたものに自筆で署名・押印するという形で遺言書が作成される場合がありますが、これは、法律上有効な遺言書とは認められません。その他、本人以外が代筆したような場合も、無効なものとされてしまいます。

➁日付の記載があること

作成日が書かれていない遺言書、存在しない日付(2月30日等)が書かれている遺言書は、無効です。このほか、「2月吉日」といったように、具体的に何月何日か特定できないような、あいまいな日付を記載した遺言書も無効ですので、注意しましょう。
逆に、具体的な日付を特定できるのであれば、必ずしも「平成〇年〇月〇日」という形で記載する必要はなく、例えば、「満65歳の誕生日」といった記載でも、具体的な日付を特定できるので有効です。

➂氏名の記入及び押印があること

氏名が書かれていない遺言書、押印のない遺言書は無効です。ただし、氏名は必ずしも本名でなくてもよく、ペンネーム等の記載でも有効とされる場合があります。
また、押印する印鑑の種類についても実印である必要はなく、認印で足ります。

 

注意点~訂正と検認

以上の3点を守れば一応は有効な遺言書を作成することができますが、それ以外でも、次の2点に注意しましょう。

一つ目は、遺言書を間違えた場合の訂正方法です。

決められた方法で訂正しないと、訂正が認められない場合や、遺言書全体が無効になってしまう場合もあります。具体的には、以下の手順で訂正しましょう。
(1)変更部分を示し、変更内容を記載する。このとき、削除する文字は二本線で消す。
(2)変更箇所に、遺言書で押したものと同じ印鑑を押す。
(3)変更箇所の欄外に、「本行〇字加入〇字削除」等、変更の旨を付記し、署名する。

二つ目は、自筆証書遺言の場合、その遺言に従って遺産分割手続を進めるために、家庭裁判所の「検認」という手続が必要となる、という点です。この「検認」という手続は、遺言書が本人によって作成されたか否かを裁判所が確認する手続です。この検認の手続を怠ると5万円以下の過料が科される可能性がありますので、ご注意ください。

迷ったら公正証書遺言か、専門家にご相談を
自筆証書遺言は、自分だけで手軽に作成できる方式である反面、以上のような条件を満たさないと、せっかく作っても法律上無効とされてしまうリスクがあります。確実な遺言書を作成したいのであれば、費用はかかってしまうものの、公正証書遺言の方式で作成するか、弁護士・司法書士等の専門家に相談することをお勧めします。