2019年2月8日に法務省にて、民法と不動産登記法の見直しを行うことが発表されました。この不動産登記法の見直しこそが、相続登記の義務化問題です。2020年には改正案を提出したい考えがあるとのことから、2020年以降、相続登記の義務化が開始される見通しと言われています。

その原因は所有者不明の土地の増加だと考えられています。

国土交通省のWebサイトによると

相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地

とされています。また所有者不明土地問題研究会により

所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地

と定義されているもので、だ誰の所有物か分からない土地のことを意味します。

現在日本にある所有者不明の土地は、410万ヘクタールに及ぶことが分かっています。410万ヘクタールと聞いてもどれくらいの土地面積であるか分からなくなってしまうほどの大きさでしょう。410万ヘクタールと言えば、およそ九州と同じ面積と言うことになります。日本の国土は約3800万ヘクタールですから、実に日本の国土の1割以上が所有者不明の土地となる計算です。国土の7割が森林と言われる日本で、今現在これだけの土地所有者不明の土地があるのです。

さらに所有者不明土地問題研究会による試算によれば、2040年には所有者不明の土地は780万ヘクタールに及ぶと考えられています。

そもそも不動産登記とは?

不動産登記とは物的状況と権利関係を明らかにしたもののことで、つまりその不動産そのものの情報とその所有者は誰なのか記載されたものになります。不動産登記は不動産を取得した際に、法務局にて行う手続きのことです。

2020年1月現在、不動産登記について義務があるのは不動産登記の物理的公示に関する登記のみ義務となっており、相続登記義務化で問題になっている権利関係を公示するための登記は任意となっています。物理的公示に関する登記とは、不動産登記の表題部に記載される情報で、建物を新築したり土地の地目を変更したりする場合に行うべき登記のことです。具体的には、土地の番地等のその土地に関する基本情報となります。

一方権利関係を公示するための登記、不動産相続や譲渡による所有者情報に関する情報については公法上の義務がありません。そのため義務である不動産登記の表題部のみ登記し、その後は所有者の権利を記載する登記は行われないこともあります。登記は先に行った方がその所有者となる仕組みです。そのため権利者に関する登記を行うことは大切なことです。

土地や建物は名前が書いてあるわけではありませんから、第三者がその土地や建物を見てすぐに誰の土地あるいは建物であるかは分かりません。そのため土地や建物を所有している方は不動産登記を行うことで、土地や建物の所有者であることを登記にてその権利関係を明確にしておくのです。

この登記簿は誰でも見ることができ、土地や建物の所有者を知ることができます。土地や建物を購入したいと考えている場合、所有者が明らかですからコンタクトを取ることも難しいことではありません。また、所有者を明らかにすることで、第三者が勝手に土地や建物の権利を主張することができない仕組みになっているのです。

しかし権利関係の登記をしないことによる不利益がないと考えられているケースで、不動産登記が行われていないことが問題になっています。

なぜ義務化されるのか

不動産登記は不動産の権利関係を明らかにするために非常に有効的なものではありますが、不動産登記は任意で行われているもので、相続登記に関しても同様に任意登記がなされてきました。登記をすることにより権利関係を明らかにすることができるものですが、個人の権利や利益を守るのは個人が行うべきものとして考えられてきたためです。

しかし現在、登記が行われず所有者不明である土地が増え続けています。相続時に所有者移転手続きを行われず放置されてしまったり、不動産登記に必要な費用の支払いをためらったりした結果、誰が所有している土地であるのか分からなくなってしまっています。そもそも登記が必要な不動産を相続したことすら分かっていないケースもあります。

登記が行われていない所有者不明の土地は再活用が難しくなってしまいます。 土地を再活用するためには所有者の同意が必要になりますが、その所有者が不明である場合では所有者の探索から始めなくてはなりません。所有者と円滑にコンタクトを取ることができないため、その土地を活用したい方が現れても、眠ったままの土地として利用しにくくなってしまうのです。

所有者不明の土地の所有者探索には当然費用が発生しますし、公共事業の遅れも予想されます。また所有者不明の土地にて危険な建築物や違法投棄があった場合には解決までに時間を要します。所有者不明土地問題研究会による推計では、推計が行われた2016年までの間に所有者不明の土地に関連する経済的損失額は約6兆円に及ぶとされます。

そのため不動産の権利関係を明確にすることにより円滑な土地再活用することをを目的として、相続登記の義務化が検討されています。

いつから相続登記が義務化されるのか

2020年1月現在、相続登記がいつから義務化されるかについて具体的な日付は決められていません。しかし2018年の経済財政運営と改革の基本方針にて次のように記載されています。

所有者不明土地等について,基本方針等に基づき,期限を区切って対策を推進する。具体的には相続登記の義務化等を含めて相続等を登記に反映させるための仕組み,登記簿と戸籍等の連携等による所有者情報を円滑に把握する仕組み,土地を手放すための仕組み等について検討し,2018年度中に制度改正の具体的方向性を提示した上で,2020年までに必要な制度改正の実現を目指す。

したがって2020年以降に相続登記は義務化されると考えられます。

相続登記は個人でも行えるものの仕組みは複雑

相続登記とは不動産登記の中でも、相続により不動産を取得した場合に行う登記のことです。相続により取得した不動産の名義を変更する手続きとなります。

相続登記の専門家である司法書士の方に依頼し登記を行う方が多いですが、必ずしも専門家に依頼しなければならないものではなく、制度上は個人でも行うことができるものです。 しかし相続登記は、単に申請用紙に必要事項を記入して手続きが完了するような手続きではなく、税率の計算等専門的知識を保有していなければ難しい問題も多いです。

相続登記に必要となる一般的書類一覧

登記申請書遺産分割協議書での相続、遺言での相続、法定相続分での相続によりそれそれ申請書が異なる
相続が発生したこと及び相続人を特定するための証明書具体的には被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、各相続人の戸籍謄本
固定資産評価証明書
相続人全員の住民票の写し
委任状代理人(相続人が複数おり代表者1名が手続きを行う場合や、司法書士に依頼する場合)が申請する場合
登録免許税
遺産分割協議書遺産分割協議により相続した場合
遺言書遺言書により相続した場合
相続人全員の印鑑証明書遺言書により相続した場合

(出典 名古屋法務局 http://houmukyoku.moj.go.jp/nagoya/static/fuannai.htm)

多くの法務局が個人(専門家でない方)で相続登記を行う場合には、事前に近くの法務局に続きの相談を行うよう勧めています。上記で説明した書類はあくまで相続登記に必要となる一般的書類であり、個々のケースでは別途証明書等の発行が必要になるケースがあるためです。

必要書類の作成は税額の計算等複雑なものがあります。必要書類を取りそろえるだけではなく書類作成を行う必要があります。法務局にて相談することで必要書類や記入方法等詳しく説明を受けることができます。

父から子へ受け継がれるような相続登記の場合、必要書類を集め申請するためにかかる期間は10日ほどと言われていますが、何世代にも及び相続登記が行われていなかった場合や、遺産協議分割にて協議がまとまらない場合などでは書類を収集するためだけでも数カ月かかることもあります。

相続登記にかかる費用

相続登記を行うためには費用が発生します。費用は相続登記する際にさまざまな費用が発生します。

・登録免許税
登記を行う際にかかる税金です。登録免許税は不動産の取得方法により税率が異なりますが、相続による不動産の取得による相続登記の場合では、固定資産税評価額の0.4%と定められています。

例えば固定資産評価額が100万円の不動産の登記を行う場合では次のような計算式になります。

1,000,000×0.04=40,000

この場合では登録免許税は40,000円必要になることになります。登録免許税がいくらになるのか計算するためには、まず固定資産評価額がいくらであるか知っている必要があります。この固定資産評価額は固定資産税の納税通知書内の課税明細書にて調べることができます。

・必要書類を収集するためにかかる費用
相続登記を行う場合にはさまざまな書類を取り揃えなくてはなりません。相続登記を行う際には書類は必須ですので、これら書類を取りそろえる費用も必ず必要となります。相続人の人数や必要になる書類により料金は異なりますが、およそ5,000円から20,000円と言われています。

・司法書士に依頼する場合
司法書士に相続登記を依頼する場合には登録免許税や必要書類を収集するためにかかる費用の他に報酬として10万円前後の費用が発生します。

相続登記を行う期間

相続登記は任意で行う必要のあるものであるため、相続登記を行うべき期限は現在定められていません。 今後相続登記が義務化された場合、相続登記を行うべき期間が設けられることになります。

相続登記を行うべき期間は現在具体的な案がまとまっているわけではなく、10年単位の長期間に及ぶと考えている識者や、期間は1年から3年程度の短期間に及ぶと考えている識者に分かれています。

長期的である場合は相続登記を行う側の負担が減る一方、さらなる相続が発生した場合の手続きが複雑化する恐れがあります。短期的である場合には相続登記を行う側の負担は増えますが、相続手続きが簡略化されうると考えられているようです。

具体的な法案が提出された際にしっかりと確認しておきたいポイントとなるでしょう。

相続登記義務化の問題点

相続登記は所有者不明の土地がこれ以上増加することのないように定められるもので、経済的損失を減らす目的としても現在問題がある所有者不明の土地の問題の解決としても、長期的メリットは大きいです。しかし相続登記義務化が開始される場合には、相続登記を行う側にとって問題がある と考えられています。

大きな問題として考えられているのは次の3つです。

・相続登記の方法が複雑
・相続登記にかかる費用
・相続登記の義務は誰にあるのか?

それぞれの問題点を詳しく考えていきましょう。

相続登記の方法が複雑

相続登記を行うための方法は複雑であることは、相続登記の行い方について説明した通りです。複雑ではあるものの、相続したばかりの不動産であれば、個人で相続登記を行うことはできます。

しかし今後義務化されるにあたり、すでに何世代も前から相続登記が行われていない不動産やの場合では、相続人の数が数十人に及ぶこともあります。こうなると相続人となる1人の所在が分からないという問題、さらに遺産分割協議がまとまらない場合などさまざまな問題が発生することが予測されます。このような問題を解決するためには、専門家に依頼した場合でも多くの時間と費用がかかると考えられます。

実際に2017年の法務省による「不動産登記簿における相続登記未了土地調査」では、最後の登記から50年以上経過している所有者不明の土地は大都市・中小都市合計で33.2%に及ぶ ことが分かっています。実は相続登記に必要となる書類は保管期間が5年と短く、下記の調査結果のように50年以上経過している所有者不明の土地の相続登記はその手続きが複雑化するでしょう。

最後の登記から50年以上経過している所有者不明の土地調査結果

大都市6.6%
中都市・中山間地域26.6%

出典 不動産登記簿における相続登記未了土地調査について http://www.moj.go.jp/content/001226185.pdf

相続登記義務化は、このような問題が発生している土地がさらに広がりを見せないために行われるものであるため長期的なメリットは大きいものの、義務化が開始される際には各相続人の負担が増えることが予想されます。

これに伴い現在まで定められていなかった遺産分割に関しても期間制限を設けることや、相続放棄を認める制度の検討も行われています。手続きがどの程度まで簡素化されるのかどうかが注目されている問題です。

相続登記にかかる費用を誰が負担するか

相続登記をする場合には必ず費用が発生します。その費用をだれが負担するかと言えば、相続登記を行う人となります。相続したばかりの不動産の場合、その費用を負担することに関してトラブルが発生することは少ないと考えられますが、すでに所有者が不明となっている場合では、相続登記に関する費用を誰が負担していくべきであるのか問題になると予想されます。

相続登記に関する費用から敢えて相続登記を行わない方がいることも考えられる中、費用問題が発生すると予測できます。費用問題に関しては罰則を強化することにより対応が進められると考えられており、同時に相続放棄や制度の簡略化よる新しい制度が生まれる可能性もあります。しかし現時点では具体案は提出されておらず、この問題がどのように解決されるのかどうかは分かりません。

一部では登録免許税が無料となるのではないかとの噂もありますが、あくまで噂にすぎず登録免許税が無料となることを明言する、あるいは推測される政府の具体案はありません。そのため今後費用問題がどうなるかどうかは最も注目されている問題でもあります。

相続登記の義務は誰にあるのか?

相続登記は相続により不動産を取得した者が行うべきものです。その不動産の名義を変更する手続きということになりますが、そもそも現在問題となっている相続登記が行われていない所有者不明の土地の場合、相続により不動産を取得した者をどのように把握するべきかどうかわかっていません。何世代にも渡り登記が行われていなかった土地の場合、その権利が分からなくなっているのが問題なのですから、これを本人が確認するのも難しい状況となるのです。実際に2018年の法務省の調査結果では最後に登記されたのが50年以上前である所有者不明の土地は30%以上に及びます。またそのうち最後の登記が90年以上前である所有者不明の土地は7.4%です。これは知らないうちに不動産を相続していたということが考えられる数字です。

そもそも相続に関する手続きは「相続の開始」を知っていることが条件の元で行われます。知らないままであれば当然、その義務は生じませんので、相続登記の義務化が開始されても、相続をあえて知らないままにしておく人がいるのではないかと考えることもできます。長年放置されていた不動産の場合、相続人は数十人に及ぶ可能性があり、この場合も相続登記の義務は誰にあるのか?というのは避けては通れない問題でしょう。

知らない間に不動産を相続していたという事例は決して少なくありません。

相続登記をせずに起こっている問題

相続登記をしないことにより所有者不明となった土地はさまざまな問題を抱えています。再活用が行えないことによる経済的損失の他、治安の悪化や衛生面での問題、課税漏れなどいくつもの問題が考えられます。ここでは相続登記をせずに起こっている代表的な3つの問題について詳しく解説していきます。

土地の有効活用が行えない

所有者が不明の土地では円滑な土地の再利用が行えません。土地の再利用を行いたいと考えている場合にも、その土地の所有者とコンタクトをの取るのが難しく、その探索にかかる時間や費用的問題があります。

そのため所有者不明の土地を再活用していきたいと考えている方がいる場合でも、再利用することが安易ではありません。そのため資産価値の低い土地や損失を生み出す土地を示すために不動産業界で用いられることのあった「死に地」という言葉が、所有者不明の土地に対しても用いられることが増えています。本来であれば再活用することができるような土地でも、「死に地」となってしまっていますので、経済的損失が発生してしまいます。

所有者不明の土地問題について研究を進めている所有者不明土地問題研究会の試算によれば、所有者不明の土地による経済的損失は年間1800億円だと言われています。この問題を対策しないままでいる場合、2040年には年間3100億円の損失に拡大する見込みです。

所有者が不明であるということだけで年間これだけの経済的損失が生み出されているのですから、この問題を早急に解決するべきであることが分かるでしょう。

国土交通省による支障例として「所有者不明土地を取り巻く現状と課題について」というレポート内に、具体事例が掲載されています。公共事業の一環としてグラウンド整備を行いたい土地に対し、所有者が170名いるものの40名と連絡が取れないことから所有者不明問題を解決することができないため、樹木や雑草により荒れた土地の伐採や整備が行うことができず、また不法投棄されたゴミも財産の可能性があるとして処分することができていません。

このように再開発を行いたいと思っても再開発を進められない土地が日本各地に存在しているのです。

出典 国土交通省「所有者不明土地を取り巻く現状と課題について」https://www.mlit.go.jp/common/001207649.pdf

危険な家屋による災害リスクの増加

現在の法律では所有者不明の土地を再活用できないだけではなく、その土地を管理することもできません。所有者不明の土地はその土地の管理者が不明となるわけですから、倒壊の恐れのある家屋がある場合でもその管理を誰に依頼することもできません。家屋の修繕を依頼することもできなければ、その家屋を取り壊したり、安全な状態へと修繕することもできません。

そのため倒壊の危険性があると分かりながらも、そのままの状態を保ち周囲の住民が気を付けるほかありません。そのため周囲の方々が危険性に晒されるだけではなく、周囲環境の悪化や衛生面での不安により、土地の評価額が低下する可能性もあります。

こうした危険な家屋による災害リスクは日本各地で問題化されています。テレビで取材された案件としては、2018年にフジテレビが放送する「とくダネ!」内にて台風時に影響を受け空き家内の門扉が倒れ通行の妨げになり問題化したことが取り上げられています。このケースでは30年以上前の登記簿に4人の所有者が記載されていたものの、3名の住所はすでに廃屋と化し、残る1名が市との話し合いを中断していることが分かっています。さらに同番組内では所有者不明の土地での土砂災害についても取り上げており、所有者の確認が困難であるため工事等の手続きが行われていないことが報道されています。

災害リスクとしては所有者不明の土地での災害が発生するリスクの他、災害時に復興が遅れてしまうリスクがあります。事実2011年の東日本大震災の復興時、所有者不明の土地が見つかり復興事業に遅れが生じています。

報道に関する出典 FNN PRIME https://www.fnn.jp/posts/00289370HDK

不法侵入や不法投棄の管理問題

相続登記が行われず所有者が不明の土地では、その所有者が誰であるか分かりませんから不法にその土地を占拠されてしまう恐れがあります。

またその土地に不法投棄が行われている場合でも、それが不法投棄によるものであるのか管理され保管されてるものであるか分からなくなってしまいます。そのため不法投棄が行われていると考えられるものに対しても対応することができず、解決策を見出すことができません。個人所有の土地の不法投棄されたゴミは不法投棄を行った者が処理することになりますが、不法投棄をした者が分からない場合は原則としてその土地の所有者又は管理者自身で処理することが定められている ためです。

各市町村ごとに不法投棄に関する相談等を受け付けている窓口はあるものの、所有者不明の土地に関しては、土地所有者を調べて連絡することに留まります。土地所有者が不明出る場合、手続きが難航してしまうというわけです。

所有者不明の土地はこのようにすでに目に見える形で地域に不利益を生じている問題です。

この不法投棄問題については「国土交通省の所有者不明土地を取り巻く状況と資料について」内の支障事例でも取り上げられる問題であり、差し迫った危険があるわけではないものに対し行政代執行による処分が行うことができないことが記載されています。また、不在者財産管理制度についても、申立権者である利害関係人に該当せず、活用が困難であることが記されています。電化製品等が不当に廃棄されている現場でも、警察官がパトロールするを実施することに留まっており、具体的な解決が行なえていません。

相続登記の罰則はどうなっているのか

現在相続登記に関する罰則はありません。しかし今後相続登記の義務化が開始される場合、相続登記を適切に行わないことによる罰則が設けられると考えられます。

不動産登記法164条ではすでに次のように定められています。

第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条又は第五十八条第六項若しくは第七項の規定による申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。

これは不動産登記において表記に関する登記を怠った場合、10万円以下の過料が発生することを意味しています。

相続登記に関しても義務化が開始されれば適切に登記を行わなかった場合、上記のような過料は当然発生するでしょう。その金額に関しては不動産登記法164条に基づき、類似の金額となるのではないかと予想されています。

過料ではなく罰金を科される可能性

不動産登記法164条により、不動産登記において表記に関する登記を怠った場合には10万円以下の過料が発生することがすでに定められています。この過料とは行政処分による金銭罰と呼ばれるもので、過料さえ支払えばその他のペナルティはありません。そのため比較的軽い処分であると言えます。

しかしこの「過料」では相続登記義務化が開始しても、相続登記を行う人は少ないのではないかと懸念されています。過料によって支払う額が相続登記を行う際の費用を下回る場合や、同等の場合では手続きを行う手間を考えれば、そのまま過料を支払った方が得になる人もいると考えられているためです。

そのため相続登記の罰則としては、過料よりも重い罰金が科される可能性もあります。過料が行政処分であるのに対し、罰金は刑法に定められている刑罰となります。そのため相続登記を行わないことにより前科がつく可能性があるというわけです。

現時点では相続登記に関する罰則は協議中により明らかにされていません。過料となるのか罰金となるのか、また具体的な金額は決定されていないということになります。しかし、比較的重い罰則が科せられる可能性があるということは事実です。

まとめ

相続登記義務化が検討されている背景や、義務化されることによる改善点や問題点について詳しく説明してきました。相続登記の時期や詳しい内容、罰則等は現在協議中であるため明らかにされていないものの、今後相続登記が義務化される可能性は高いです。

相続登記をしない理由が明確にある場合を除き、相続登記を行うことにより罰則等を受けるリスクを減らすことをおすすめします。相続登記をすることにより不動産や土地を活用することができるようになるというメリットもありますので、期限の定めのないうちに着々と申請準備を行うと良いでしょう。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続には様々な形があり、手続きや申請方法もケースによって異なります。専門知識が無い方は申請書の不備等で無駄な費用が掛かってしまう可能性もありますのでしっかりと相談することをおすすめします。