過去の相続をやり直し、改める事などできるのか?
そういった質問が多く寄せられます、中には30年前の相続をやり直したいという話まで相談を受ける事があります。

1 法定相続分と遺留分(いりゅうぶん)

相続人が故人(亡くなった人)の遺産を相続できる割合には,「法定相続分」による割合と「法定遺留分」による割合があります。

例えば,家族構成が夫と妻,子供がAとBの2人の場合に,夫が亡くなったとすれば,「法定相続分」は妻が2分の1,子供Aが4分の1,子供Bが4分の1と民法で定められています。
しかしながら,この割合は遺言書がなかった場合で,遺言書があったとすればこの割合も遺言に沿ったものになります。
一方,「法定遺留分」とは,遺言書などで相続財産が法定相続分以外の割合で分配が定められていたりする場合に,相続人が最低限受け取ることができる相続財産の割合を定めたものです。
例えば,上記のご家族のケースで夫が亡くなり,子供Aのみに全財産を相続させるという遺言があったとしても,妻は全財産の4分1,子供Bは8分の1(法定相続分の2分の1まで)を遺留分としてAに請求することができます。
ただし,この遺留分は法定相続分とは違い,兄弟姉妹には適用されないので注意が必要です。

 

2 改めて正しくすることはできるか?

さて,今回のタイトル「2年前の不公平な相続配分を,是正できるかどうか?」ですが,2年前に行われた相続の分配が法定遺留分を下回る割合による分配であれば,是正できる可能性があります。
この場合,保障された割合に満たなかった分を「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」することになります。
しかし,この遺留分減殺請求権は,「割合が少ないことを知った日から1年,知らなくても相続開始から10年」で時効消滅してしまうので,今回の場合,2年前の時点で,相続した財産の割合が遺留分に満たなかったことを知らず,また,割合が少ないことを知ってから1年が経過していなければ,遺留分減殺請求をすることによって不公平を是正できることになります。

 

3 注意点

遺留分は,相続人が故人の遺産の一定割合を相続できるように保障する制度ですが,一旦,遺産分割協議に合意をして,相続する割合を決めてしまうと,遺留分減殺請求ができなくなってしまうこともあります。
したがって,今回のタイトルの場合でも,遺産分割協議を行っていない状況で,一方的に相続財産の分配を受けており,尚且つその財産の価額が法定遺留分を下回る金額であれば,不公平な配分の是正を求めることができる場合があると考えられます。

ご自分の受けた相続財産の割合に,疑問を感じたりするようであれば,お気軽に当センターまでご相談ください。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は相続人によって異なります。相続人は親族であり、その後も長い時間をかけて付き合う可能性が高い相手。だからこそ、円滑に、そしてお互いが納得した遺産相続手続きを進めたいですよね。