相続のやり直しは可能なのか?

遺産相続は、やり直しが可能なケースと、不可能なケースがあります。
一般的に、遺産相続が終わるとやり直しは不可能です。
しかし、財産が新しく見つかったり、明らかな間違いが分割内容にあったりした場合は、全員の相続人が合意すると遺産相続のやり直しが可能です。
なお、相続人に一旦相続した財産について、他の相続人に遺産相続のやり直しによって譲ると、贈与に税法上はなるため贈与税がかかります。

「やり直しが可能」な遺産分割・「やり直しが不可能」な遺産分割

・やり直しが可能な遺産分割

やり直しが可能な遺産相続は、遺産分割協議で成り立ったケースに限定されます。
遺産分割方法としては、遺言書、調停、協議、審判というものがありますが、やり直しが可能なものは協議によるもののみです。
やり直しを遺産分割協議で行うことを「合意解除」と言います。
合意解除というのは、遺産分割のやり直しに全員の相続人が合意することです。

・やり直しが不可能な遺産分割

やり直しが不可能な遺産相続としては、「遺産分割審判」と「遺産分割調停」があります。
しかし、次にご紹介するようなケースで、取消・無効要件に当たる場合は、例外的に、遺産相続のやり直しが審判や調停でもできることがあります。

・相続人以外の人が何らかの理由で参加して成り立った遺産分割
・全員の相続人が何らかの理由で参加しないで成り立った遺産分割

 

やり直せるけど注意点も多い

・贈与税がかかる

相続については一回目の遺産分割協議で終わったと税法上は取り扱われるため、遺産相続のやり直しは譲渡あるいは贈与と見なされます。
贈与として取り扱われるため、財産が相続人間で移転されると贈与税がかかります。
そして、相続税額よりも贈与税額は一般的に高いので、考えてもみなかったような高額の納税を要求されることがあります。
譲渡所得税が、譲渡とみなされるとかかります。
そのため、遺産相続のやり直しの場合は、一度税理士に相談するのがいいでしょう。

・名義変更が必要になる

遺産相続のやり直しをすれば、財産が相続人間で移転されます。
「名義変更」が、資産として登記が必要なものを移転する際には必要です。
不動産名義変更の場合は、不動産取得税が不動産を譲渡あるいは売買で取得した際と同じように課税されます。

また、登録免許税も名義変更登記の際にかかります。
しかし、不動産取得税が、相続が始まった後4ヶ月の期限が経った後に再度遺産相続のやり直しをした場合は課税されなかったようなケースがあるため、税理士に詳しいことについては相談しましょう。

 

無効な遺産分割とは?再度申告も必要

遺産分割のやり直しの場合でも、遺産分割の取消・無効が認められると贈与にはならなく、相続税の更正ができることがあります。
ここでは、無効な遺産分割の代表的なケースについてご紹介しましょう。

・相続人以外が遺産分割に参加したケース

例えば、夫が死亡して、遺産分割を妻と子供で行ったが、訴訟で親子関係が存在しないことが確定したことによって、子供は相続人でなくなって、妻と両親が相続人になったようなケースです。
遺産分割に相続人とは違う子供が参加していたため、無効にその遺産分割はなります。

・新しく財産が見つかったケース

遺産分割した後に新しい財産が見つかって、分割がその財産のみできなければ、無効に初めの遺産分割はなります。

・問題が意思表示にあったケース

強迫や詐欺などによって問題が相続人の意思表示にあれば、無効にその遺産分割はなります。
取消・無効に遺産分割がなった場合は、法律上、遺産分割そのものが成り立っていなかったようになるため、相続税の申告のやり直しが税務上もできることがあります。
しかし、手続きが相続税の申告のやり直しのためには必要であるため、税理士に一度相談しましょう。

 

ダブル課税になる前に

遺産分割のやり直しの場合は、大きく税法上の事項が関係するので、できるだけやり直しがない方がいいでしょう。
一部不安なことや不明なことがあるが、遺産分割をとりあえず済ませてやり直しを後からするといいと思っていると酷い目にあいます。
意見が相続人間でまとまらない場合は、解決するために弁護士に速やかに相談することが必要です。
また、土地価格が地元の開発計画のために大きく変わることが考えられる場合は、一旦その土地のみを保留してこれ以外の財産について遺産分割をして、状況が後から確定した時に遺産分割をする方がいいでしょう。

 

遺産相続のやり直しに関してのまとめ

遺産相続のやり直しは、全員の相続人が合意すると民法上は可能です
しかし、相続が税法上はすでに終わったとみなされ、遺産相続のやり直しによって、不動産所得税や贈与税が新たに発生します。
遺産分割のやり直しの場合は、専門家の税理士などに相談するようにしましょう。
そして、やり直しが必要ないように、遺産分割は慎重に十分に考えて行うことが大切です。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続には様々な形があり、手続きや申請方法もケースによって異なります。専門知識が無い方は申請書の不備等で無駄な費用が掛かってしまう可能性もありますのでしっかりと相談することをおすすめします。