当センターに寄せられた相談をご紹介します。
「母は私を連れて今の父と再婚しました。父と私は当然,血は繋がっていませんが,父は私のことを本当の子供のように,これまで大切に育ててくれました。そんな父も高齢になり,最近では財産の話をするようになりましたが,実の子でない私は,父の財産は相続できないと思うのですが,実際はどうなのでしょうか?」

1 相続の基本

まず,相続の基本を確認したいと思います。
相続権は,亡くなられた方(故人)の血族と,故人の配偶者が相続人となる権利があると,民法で定められております。
この「故人の血族」とは,子,父母,兄弟姉妹にあたります。そして,これらの法定相続人には,相続する順位が定められています。

第一順位は子であり,もし,子が既に亡くなっている場合はその子(故人の孫)が相続人となります。しかしながら,子や孫,さらにはひ孫など,直系卑属と呼ばれる者が誰もいない場合には,第二順位である親が相続します。
ところが,父母共に既に亡くなっている場合は,その父母(故人の祖父母)が相続人となります。子と同様,父母,祖父母,さらには曾祖父母など,直系尊属と呼ばれる者が誰もいない場合,第三順位である兄弟姉妹が相続人となります。

 

2 「連れ子」の相続権は?

さて,冒頭で紹介しました相談内容の場合では,相談者は母の連れ子として現在の父と一緒に生活をして,事実上では親子となっています。一見,誰が見ても事実上では親子なのだから,相続権があると思いますよね。
実は,どんなに長い期間一緒に暮らしていたとしても,また,本当の親子のように親密な間柄であっても,残念ながら法律上では親子にはならないのです。
したがって,相談者には「事実上の父」の財産を相続する権利はないのです。

 

3 「連れ子」が相続するには?

では,血縁関係のない父の財産を相続するためには,どうすればいいのでしょうか?
それは,「法律上で親子」になればいいのです。
それを可能にする方法が「養子縁組」です。

先ほど1で説明したように,民法では,故人の血族とその配偶者が相続人となる権利があるとお話ししましたが,相談者と父が養子縁組を結ぶことで,相談者の立場は「血族と同視される者」,法律上の「子」となり,第一順位の相続人になれるのです。
晴れて,法律上でも親子になれる,というわけですね。

養子縁組の手続きは,連れ子または故人(今回の場合は養父)の本籍地,または住所地を管轄する市区町村の役場で行います。

他人が縁あって一緒に暮らし,やがて血縁関係以上に固い絆で結ばれた親子になる。これって本当にすばらしいことですよね。
そして,その関係は,ちゃんと手続きを踏めば,法律でも親子として認められるのです。
自分もこのケースにあてはまるけど,まずは何をどうしたらいいだろう,などとお考えであれば,お気軽に当センターまでご相談ください。ご家族のより強い結びつきのお手伝いを致します。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。

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