1.結婚及び離婚と相続

総務省の統計によると,平成25年の婚姻件数は660,613組となっており, 一方で,平成25年の離婚件数は231,383件で,近年は緩やか低下傾向にあるものの,欧米諸国並みの離婚率となっているのが現状です。また,婚姻件数のうち,夫妻ともに初婚は487,044組(全婚姻件数の73.7%)で,「夫婦とも再婚又はどちらか一方が再婚」は173,569組(同26.3%)となっており,再婚も決して珍しいことではありません。

結婚及び離婚は,新たな親族関係が生ずる身分行為ですので,相続とも大きく関係していることは言うまでもありません。
男女は結婚することによって親族となり,配偶者は常に相続人となります。相続の第一順位者である子またはその代襲相続人がいれば,その者と同順位となり,第二順位の直系尊属や第三順位の兄弟姉妹の場合も同様となります(民法第890条)。

一方で,婚姻期間中に夫婦で築いた財産があれば,離婚の際に夫婦間で財産分与などの協議が行われれば問題にはならないものの,離婚により一方の配偶者及びその親族とは他人になるため,故人である元配偶者の相続については一切権利を失うこととなります。
※総務省統計

 

2.別れた妻(夫)の子は相続人になるのか?

それでは,離婚する夫婦に子どもがいる場合,その子どもは離婚してしまった両親の相続について相続することができなくなってしまうのでしょうか。

結論,夫婦の間に子どもがいる場合,離婚によって夫婦が他人になったとしても親子という身分関係には何ら影響しないため,子どもは父母両方の親にとって,第一順位の相続人であることに変わりはないため,父母共に相続することができます。離婚の際に,子の親権を相手方が持ったとしても,その子どもが親権を持たなかった方の親について相続人にならない,ということはありません。
たとえば,離婚の際に子どもの親権者を妻とし,新たに作成した元妻(母親)の戸籍に子どもが入籍したとします。この場合には,元夫(父親)の戸籍から子どもが抜けることとなります。しかしながら,実子であることは変わらないため,父親が亡くなった際,相続人となる権利には何らの影響が無いということです。また,離婚後,父親が再婚し,後妻との間に新たに子どもを授かっていた場合,その後に父親が亡くなると,後妻とその子どもとともに,前妻との間の子供も同順位の法定相続人となります。

再婚後の妻と子どもと,前妻との子ども,双方の関係が良好であれば,遺産分割協議もスムーズに進むことが期待されますが,双方の面識が全くなかったり,少しでも揉めるような問題を抱えていらっしゃったりするようであれば,生前に遺言書を作成しておくのも一つの対策です。但し,法定相続人には遺留分がありますので,その点も加味して検討する必要があります。

 

3.再婚と相続

それでは,再婚した相手方に連れ子がいた場合はどうでしょうか。
その連れ子については,親の再婚相手が亡くなったとき,自動的に法定相続人になるのでしょうか。
答えは「NO」です。

たとえば,上記の例を参考にお話すると,離婚した母親が,新たに別の男性(父親)と再婚したとします。もし,再婚相手である父親が先に亡くなれば,配偶者である母親は,常に法定相続人となりますが,母親の連れ子である子どもについては,親の再婚により,自動的に父親の法定相続人になる訳ではありません。その子どもは,再婚相手である父親と,生前に養子縁組をしていなければ,法律上の子(民法第887条1項)とはならず,相続することはできないのです。養子縁組をすることで,法律上の親子関係が生ずることとなります。上記のとおり,母親が亡くなった場合には必ず法定相続人ととなる点で異なることにご注意ください。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

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