「このバカ野郎!勘当だ!この家の敷居は二度とまたぐな!」
ドラマなどで,父親がちゃぶ台をひっくり返しながら絶叫し,ドラ息子を追い出すシーンをよく見かけましたね。
あくまでもドラマのことですが、一般でも親子間でなんらかの揉めごとで、家族との連絡を絶ってしまうというのもよく聞きますね。
今回のテーマは「勘当された家族の相続について」です。

法律で勘当の制度はあるのか?

さて、この勘当ですが、そもそも法律でそういう規定があるのかどうかですが・・・
答えは「ノー」です。親子の縁を切るという法律はありません。
法律では、どんなに仲が悪く絶縁したとしても、親子の関係はどこまでいっても変わらないのです。

1、勘当した子供には絶対に遺産は渡さん!

子供のしたことがどうしても許せない!将来、自分の財産は絶対に渡したくない!と強く思う親御さんに対して言うとするならば、方法はなくはありませんが、参考として2つほど挙げますと・・・

➀:公正証書遺言で行う方法で、例えば、子供が二人いてそのうちの一人だけに遺産を全て譲るという内容で遺言書を遺すという方法です。
➁:家庭裁判所で「相続廃除」という手続を申立ててみる

以上の2つが挙げられます。以下でさらに詳しく説明していきましょう。

2、公正証書遺言で遺してみたものの・・・そんなことが!

さて、上記の1の①で書いた方法ですが、遺言書で一人だけに遺産を譲ると書いた場合、これで親御さんの意思として、勘当した子供には一切財産がいかないと思いますね・・・。
先ほどお話してなんですが、実は、そうはならないのです・・・。冒頭の言葉を思い出してください。
「法律では、どんなに仲が悪く絶縁したとしても、親子の関係はどこまでいっても変わらないのです。」

ここがポイントです!
民法では、血の繋がった親子関係は否定されないのです。
親が死んだ場合、その遺産は直系の相続人が相続する権利を法律で認めて
いるのです。
この権利は、公正証書遺言よりも強い力(効力)があり、遺言書に「一切相続はさせない」と明らかに書かれてあっても、何も遺されなかった人には、最低限の相続分を受取れるように法律で認められているのです。
これを「遺留分」といいます。
従って、怒りがこみ上げてくる親御さんの気持ちもわかりますが、どこまで行っても親子は親子であり、どんな子でも法の下の平等で分け与えられるように、法が定めているのです。

3、相続廃除について

次に、上記1の②について確認しておきましょう。
相続廃除とは、故人の意思によって相続権を奪う制度です。
この制度は、上記にありました、最低限の相続分を受取れる権利である、遺留分の権利を否定します。
さらに詳しく確認しておきますと、

A 相続廃除の手続方法

① 申し立てをする人の住所を管轄している家庭裁判所に申し立てる方法。
② 公正証書遺言で予め廃除の意思を記しておき、亡くなった後に、遺言執行者が家庭裁判所に申し立てをする方法。
以上の2つの方法で行います。

B 相続廃除の申立をすると・・・

調停もしくは審判で厳格に審理され、裁判所の決定を待ちます。
では、相続廃除が認められる条件とは何でしょうか?
この手続は、あくまでも裁判所での手続で、結論を出すのは裁判所です。単に感情的な理由だけでは認められない、非常に難しい手続であります。
それを踏まえて、相続廃除を行う要件として民法892条では以下のように定められております。
① 故人(被相続人)に対する虐待
② 故人(被相続人)に対する重大な侮辱
③ その他著しい非行
例)*故人の財産を不当に処分してしまった
*繰り返し多額の借金をつくりその都度故人に弁済させた
*浪費・遊興・犯罪行為など親を泣かせることを繰り返した
*重大な犯罪を犯し有罪判決を受けた

これらの要件があった上で、後は裁判所がどう判断するかであります。
裁判所は、客観的になおかつ社会的にみて相続権を廃除することが正当であると判断されるほどに重大なものでないと、なかなか認められないケースが多いようです。
以上のように、少し踏み込んだ説明もしましたが、親子関係は近いから他人と比べて感情をぶつけやすかったり、甘えもたくさんあり大きな喧嘩に発展しやすいものです。
でも、日本の法律では親子の関係は普遍であります。お互いに感情的になっていても何の解決にもなりません。
あなたが、どうしてもお子さんのことが許せず、その制裁として何らかの方法を考えているのであれば、まずは、クールダウンの為にも当センターにお話頂けませんか?

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は相続人によって異なります。相続人は親族であり、その後も長い時間をかけて付き合う可能性が高い相手。だからこそ、円滑に、そしてお互いが納得した遺産相続手続きを進めたいですよね。

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