私の母が孫である私の長女に2400万円相当のマンションを遺贈するという内容の遺言書を作成した事を最近知りました。

母の法定相続人は私と2人の兄の計3名ですが,余計な相続税がかかるのなら私は相続放棄をしてもいいと考えています。
2400万円のマンションの遺贈を受けた場合,娘はどの位の相続税を払わなければいけないのでしょうか?また,その他にもかかる費用があるのか教えて下さい。

 

まず,あなたが相続放棄をしても,マンションの遺贈に関する相続税額に変動はありません。相続放棄をした場合,最初から相続人ではなかったということになり,相続人たる地位が下の世代に下がっていくものではありません。不躾ですが,仮にあなたがお母様より先に亡くなった場合は,代襲相続といってあなたの子や孫が相続人となりますが,本件の場合,あなたと同順位の相続人であるお兄様が2人いらっしゃいますので,そのお兄様2人の法定相続分が増えるだけです。

つまり,孫であるあなたの長女(受遺者といいます)は,あなたが相続放棄をしても法定相続人になることはなく,あくまで,相続人ではない第三者として遺贈されたマンションの受遺者として相続税を支払う立場となるのです。そして,その額は取得した財産に対して算出された相続税額に2割を加算した額が納付すべき相続税額となります。

次にかかる費用として,不動産所得税が挙げられます。本来,不動産所得税は不動産を取得した時に課せられる税金であり,当然取得者の意思に基づくものです。しかし,世の中には本人の意思に関わらず,相続によって強制的に取得することになった不動産も存在し,これについては不動産所得税が課せられず非課税扱いとなっています。

話は前後しますが,そもそも遺贈には「特定遺贈」と「包括遺贈」の2種類があります。

「包括遺贈」とは,相続財産の目的物を特定せずに,遺産の全部又はその一定の割合を指定して行う遺贈のことで,例えば「遺産の全部」とか,「遺産の2分の1」というように遺産の割合をもって行う遺贈のことです。
これに対し「特定遺贈」とは,「○○の不動産」とか「○○銀行の預貯金」というように,相続財産のうち,目的物を特定して行う遺贈のことです。

「包括遺贈」を受ける受遺者は法定相続人と同じだけの権利と義務を有する事から,不動産所得税については非課税となっています。しかし,故人の遺言で一部の財産のみを譲り受ける「特定遺贈」の受遺者については,不動産所得税が課せられてしまうのです。
不動産取得税は,固定資産税評価基準に対し,土地及び住宅用の家屋については3%,店舗や事務所など住宅用でない建物については4%となります(平成30年3月31日までに取得した場合の税率。他にも特例が適用される場合もあります)。

そして,最後に不動産の名義を変更する際にかかる登録免許税も忘れてはなりません。これもまた,遺贈と法定相続人とでは割合が異なり,固定資産税評価標準の2%となっています。
上記の割合に当てはめて計算なさって見て下さい。今後発生するであろう相続が,お母様の希望されるとおりに進まれる事を願っています。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

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