最近、メディアでよく話題になっている「空き家問題」。
空き家問題といえば、昔建てられたボロボロの家が傾いていたり、窓ガラスがバリバリに割れていたりと言った映像が頭に浮かんできますが、具体的にはどういったことが問題なのかと聞かれたら、スッと出てこなかったりします。
また、空き家問題に欠かせないのが相続の話です。親から家を相続したけど、自分もマイホームを持っている、家が遠いなどの理由で相続した家に住むことができず、空き家になっているというケースも多いのではないでしょうか。
相続したけれど誰も住んでいない家を「相続空き家」と言いますが、相続空き家にはいくつかの特例があります。また、相続した家によっては、賃貸するほうが良い場合があります。

空き家問題の具体的な問題点と、相続空き家の特例について、みていきましょう。

具体的な空き家問題の内容は?

空き家問題の空き家とは、一般的にきちんと管理されておらず、放置されている空き家の事を指します。その空き家が原因で、近隣住民の方に様々な悪影響をもたらしている問題の事を空き家問題と言います。
空き家問題が起こる背景には、少子高齢化や、核家族化や過疎化など、日本が抱える問題の多くの要因があります。

具体的な空き家問題の内容は次のようなものです。
・倒壊の危険性がある(巨大地震によるものだけでなく自然に倒壊する危険があるものもある。人的被害も考えられるし、道路をふさぐなどのトラブルも考えられる)。
・朽化した家から瓦が落ちてくる、木片などが飛ぶなど、人的被害や物的被害を与えてしまう。
・害虫、害獣の温床となってしまい、周辺に拡散されてしまう。
・集中豪雨などで浸水被害を受けたとしても修復されないため、不衛生かつ危険な状態になってしまう。
・植木や草が処理されず、地域の景観が損なわれてしまう。
・不審者により不法侵入や不法占拠をされてしまい、治安が悪くなる。
・空き家は放火の対象となりやすいので、放火されてしまう。
・ゴミの不法投棄をされてしまう。
など、挙げ始めたらキリがなさそうですが、このように空き家が原因で、近隣住民の方の生活環境や衛生・安全面に悪影響をもたらしてしまうのです。

自宅の周辺に先述した内容に該当するような空き家があれば、かなり不安になる事でしょう。
これまで空き家に対する法律などは無く、今までは各自治体が条例を制定するなどして対策を取っていましたが、強制できるものではなく、結果として空き家の近隣住民に悪影響をもたらす空き家が日本各地で増え続けていきました。
そしてついに空き家対策として、政府が動き、平成27年5月26日から「空き家対策特別措置法」が完全施行されました。法律を制定することにより、空き家問題に強制力を持たせたということです。

空き家対策特別措置法とはどのような内容なのでしょうか?

空き家対策特別措置法によって「特定空き家」に指定されたら大変なことに!

空き家問題で問題とされるのは、空き家対策特別措置法によって「特定空き家」に指定されるものがほとんどです。
特定空き家の定義は“そのまま放置すれば保安上危険、衛生上有害となるおそれのある状態、他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にある空き家等をいう”とされています。

空き家対策特別措置法によって、管理が不完全な空き家と認められる場合は、自治体による敷地内の立ち入り調査ができるようになりました。
また、所有者を確認するため、住民票や固定資産税台帳などの個人情報の利用が可能になりました。

この自治体の調査により、これから挙げる状態になってしまうと、特定空き家に指定されてしまいます。
・倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態。
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態。
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

特定空き家に指定されてしまうと、自治体から空き家を改善するように助言や指導されることになります。助言や指導をしても改善されない場合は、さらに重い処分である勧告や命令をされることになります。
命令をされてもなお改善されない場合は、50万円以下の罰金が科されたり、自治体が行政代執行を行い、樹木の伐採や空き家の解体をする可能性があります。行政代執行が行われた後は費用の請求がされます。

命令をされるということは、自治体によりこれ以上空き家を放置すると非常に危険な状態であると判断されたという事です。近隣住民の方に迷惑をかけないためにも、命令をされた時点で迅速に改善をしたほうが良いでしょう。

また、特定空き家に指定されてしまうと、土地にかかる固定資産税の優遇措置が適用されなくなり、土地の固定資産税は6倍に増額されます。かつては空き家にしておいてもこの優遇措置があったため放置している方も多かったようですが、これからは放置しておいても良いことは無さそうですね。

ちなみに特定空き家の解除をするには、特定空き家に指定される原因となった箇所を改善する必要があります。

立地の良い土地だった場合は貸しても売っても良い土地!

もし、所有している空き家が建っている土地が、賃貸需要が多い土地だった場合は、その土地は売っても貸しても良い土地であると考えられます。
そのため、
・売った場合に手取りがいくらになるのか
・賃貸した場合は賃料の手取り額と、賃貸後に売却する際の手取り額の合計
この二つを計算し、比較してどちらが良いのか考えていくと良いでしょう。

賃貸する場合は、貸し出すにあたってリフォームや修繕が必要である可能性が高いので、その費用は差し引いて計算します。あまりに費用がかさむ場合は、賃貸せずに売ってしまったほうが良いということになります。

相続空き家に対する二つの特例

不動産を相続したけれど、住むことができず「相続空き家」になってしまっている場合は、「相続税の取得費加算の特例」と「空き家の発生を抑制するための特例措置」も考慮してみましょう。

●相続税の取得費加算の特例とは
相続税の取得費加算の特例は、相続した不動産を売却する場合に、二重に課税されてしまう税金の負担を軽減するための措置です。(※)
相続した不動産を売却すると、相続した時に支払った相続税と、売却時に譲渡取得税が課税されます。譲渡所得税の計算をする際に、既に支払った相続税のうち一定金額を譲渡資産の取得費(売却する不動産を購入した当時の金額のこと)に含めて計算することにより、譲渡所得税を節税することができます。

この特例を受けるには次の条件を満たす必要があります。

・相続または遺贈により財産を取得した者であること。・相続した者に相続税が課税されており、納付をしていること。

・相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

※ここでは不動産についてのみ触れていますが、株式やゴルフ会員権などもこの特例の対象となっています。

●空き家の発生を抑制するための特例措置とは
空き家の発生を抑制するための特例措置は、被相続人(亡くなった方)が住んでいた家の売却に関する特例です。
家を相続した相続人が、相続した家(耐震性がない場合は、耐震リフォームをしたものに限りその敷地も含まれる)又は家の取り壊し後の土地を譲渡した場合に、その家又は土地の譲渡所得から3,000万円を特別控除することができるというものです。

特別控除を受けるには、空き家であることが大前提で、空き家に当てはまるかどうかは、次の条件を満たす必要があります。

・相続開始の直前において、被相続人「のみ」が住んでいた不動産であること・昭和56年5月31日以前に建築された家屋(マンションなどの区分所有建築物を除く)であること

・相続から譲渡の時までに事業・貸付・居住などの用に供されていなかったこと(つまり誰も使っていなかったということ)

そのほかにも住んでいた期間や、譲渡価格に関する制限などがありますが、かなり複雑ですので、ここでは割愛させていただきます。

いずれの特例も、相続空き家を増やさないために譲渡をするよう促すものです。
この先も相続空き家に住む予定が無い場合は、この特例を使って空き家を処分してみてはいかがでしょうか?

ちなみにどちらも、申請はかなり複雑です。検討される場合は、弁護士さんなど専門家に相談することをおすすめいたします。

まとめ

空き家を放置すると、近隣住民の方の迷惑になるだけでなく、所有者自身も課税されたり税金の金額が上がったりと、デメリットが多すぎますね。
思い出のある家かもしれませんが、空き家にしておかず、貸し出すのか、売却するのか…など、様々なメリットを考慮しながら検討してみてはいかがでしょうか?