まず、生命保険とは、簡単にご説明しますと被保険者(保険の対象になる人)の死亡または高度障害状態を保険事故として受取人に保険金を支払う事を約束するものです。

■設例

○○さんは、生前、奥様△△を受取人とする保険金額5000万円の生命保険に加入しておりました。
○○さんは会社を経営しておりましたが、業績が芳しくなく会社が倒産になり多額の借金を抱えたままお亡くなりになってしまいました。
△△さんは〇〇さんの抱えた借金を返す余裕はありませんが、自身の今後の生活必要資金とまだ幼い2人の息子の教育資金として生命保険金を受け取りたいと考えております。
この様なケースで△△さんは借金は相続放棄をして、5000万円の生命保険金を受け取る事は出来るのでしょうか。

補足ですが、民法では亡くなった方を被相続人(当設例では経営者○○さん)、亡くなった方の配偶者や子供・父母・兄弟を相続人(当設例では奥様△△さん)と呼ばれます。

通常の相続財産は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときには、その相続人は単純相続したものとみなされてしまい、相続放棄をすることは出来なくなってしまいます。(民法921条1号)

それに対し、一般的には受取人が相続人の特定の人に指定されている生命保険契約の場合には、生命保険金を受取人の固有財産と考えられており、被相続人の財産を相続により取得するものではないとされております。その為、相続財産の対象にはなりません。
その為、借金は相続放棄をした上で生命保険金を受け取る事は出来るとゆう事になります。

■生命保険を活用する場合の注意点

このように生命保険金は相続財産の対象にならない事から、遺産分割や遺言からまったく無関係と思われがちですが注意すべき点もあります。

高額な生命保険金の受取人が一部の相続人になっており過度に偏りがある場合などは特別受益の問題(相続における相続人の公平を図る制度)が出てくる事もあります。
また、生命保険金が満期を迎えており、かつ満期後に被相続人が亡くなった場合などは生命保険金が相続財産の対象となります。

■生命保険のメリット・デメリット

相続発生の際の被相続人が受け取った死亡保険金は相続税の課税対象になりますが、残された遺族の生活を守る為に非課税枠が設けられております。
具体的には「500万円×法定相続人の数」が非課税枠になります。
※…法定相続人とは民法上の相続人になれる人であり、相続人になれる順序も決められています。
全額が相続税の対象になる現金などとは異なり、受け取った死亡保険金額より非課税枠分を控除した金額に対して相続税が課税されます。
その為、一般的に現金で受け取るより税額が少なくなります。

例えば上記設例の場合は、死亡保険金額3000万円で法定相続人は奥様と2人の息子の計3名です。
「5000万円-500万円×3名=3500万円」が相続税の課税対象となりますので、現金で受け取るよりも1,500万円の課税対象を節税できたことになります。

■まとめ

このように上手に生命保険を使う事により円滑かつ効率的な相続税対策の切り札になります。相続が発生する前に計画的に使用するのはとても大切な事だと思います。是非専門家にご相談される事をオススメ致します。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は相続人によって異なります。相続人は親族であり、その後も長い時間をかけて付き合う可能性が高い相手。だからこそ、円滑に、そしてお互いが納得した遺産相続手続きを進めたいですよね。