Q:相続手続きを専門家に頼む必要はあるのでしょうか?
A:相続の手続きにはいろいろな手続きがあり、手続き先の数が多いので依頼するほうがいいかもしれません。ただ、報酬がどれくらいかかるのかを事前に忘れずに確認しましょう。

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【専門家に頼るほうが合理的】

親や配偶者が死亡すると、家族は遺産分割協議だけでなく、それに伴ういろいろな相続手続きに直面します。相続手続きに限っても、親の家など財産の名義変更だけでなく、場合によっては相続税の申告・納付も必要です。

しかも手続き先は登記所(法務局)、税務署、金融機関などさまざまで、提出書類も多くあります。残された家族の手に余る場合が少なくなく、司法書士、税理士ら専門家を活用する必要もありそうです。

どうすれば効果的に手続きが進むでしょうか。また、注意点は何でしょうか。
まず、効果的に進める手順として、相続手続きを「専門家に依頼するほうが円滑に進みやすいもの」と「相続人が自分でもできそうなもの」に分類することが必要です。

前者の代表は被相続人が所有していた不動産や預貯金、有価証券などの名義変更です。名義変更の手続きは、財産の多寡にかかわらず全てのケースで必要です。
ところが、専門知識のない相続人が自ら手続きを行おうとすると、考えている以上に面倒なのです。提出するために必要な書類を整えるだけでも手間がかかるからです。

手間がかかる理由の一つには、「被相続人が生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本」をそろえる必要があるからです。被相続人のすべての戸籍謄本が必要なのは、名義変更先となる相続人を確定するためです。

戸籍をさかのぼれば、例えば前婚の子供や未婚だが認知した婚外子までわかるのです。
ただ、難点は、被相続人が本籍をおいた市区町村に照会しないとすべての戸籍が集まらないことです。
また、戸籍は法改正による様式の変更(改正)や本籍の変更(転籍)に伴って、その都度作り直されており、その分も必要となります。手数料がかかるほか、交付を受けるため時間がかかることもあります。

戸籍謄本を取得するのに疲弊してしまうケースも目受けられます。
どうにか集めたとしてもまだ安心できません。相続にともなう不動産の名義変更では、登記所へ申請する必要があります。その書き方は専門的なので、専門家でないと多少難しい点もあるかと思われます。
預貯金や有価証券など金融資産の名義変更も煩雑な手続きが多くなる場合があります。
被相続人の生前の取引先が分散している場合は、それぞれに申請することになるからです。

不動産にせよ金融資産にせよ、いつまでに名義変更しないといけないという決まりはありません。しかし、金融資産の場合は、名義変更がすまないと相続人は解約・換金ができません。
金融資産の名義変更も専門家の力を借りるほうが合理的かもしれません。

相続税の申告は、申告書自体の枚数が多く複雑です。しかも、相続開始後、原則として10か月以内に申告・納付が必要なので、相続人だけでは限界があります。以上の手続きは専門家に依頼することを検討するほうがよさそうです。
相続手続きの仕事をする専門家の概要をまとめました。

■司法書士

主な業務
・不動産の登記手続きの代理
・裁判所への提出する書類の作成

何をしてくれるか
・不動産の相続登記手続きなど
・相続財産の名義変更の手続き
・遺産分割協議書の作成や遺言書の作成支援


■税理士

主な業務
・税務の代理、税務申告書などの作成
・税金に関する相談

何をしてくれるか
・相続税の申告書の作成
・相続税の税務調査への対応
・遺産分割協議書の作成や遺言書の作成支援


■行政書士

主な業務
・行政機関への申請書類作成や手続きの代理

何をしてくれるか
・相続財産の名義変更の手続き
・遺産分割協議書の作成や遺言書の作成支援


■弁護士

主な業務
・訴訟などの代理や法律事務
何をしてくれるか
・遺産分割についての法律相談や遺産分割協議の作成、遺言の作成支援
・遺産分割や相続に関する法的紛争の解決


まず、特定の専門家でないとできない業務があるので注意しましょう。
例えば、相続登記の手続きの代理であれば司法書士若しくは弁護士、相続税の申告の代理は税理士しかできません。
また、遺産分割でもめて紛争になってしまったような場合に代理人となることができるのは弁護士だけです。

名義変更に必要な戸籍謄本の収集はどの専門家でも可能ですが、現実には司法書士や行政書士がやることが多いようです。
遺産分割協議については相続人の間でまとめる必要がありますが、分割協議が整えば、協議書の作成は表にある専門家であれば依頼は可能ではないでしょうか。

 

【まずは専門家に相談を】

もっともこれらの専門家を探し出し、個別に依頼するのは手間がかかります。
遺産分割協議がもめずにある程度整いそうな場合であれば、まずは弁護士や司法書士などに相談するのが効果的でしょう。
相続財産の名義変更に必要な戸籍謄本などを効率的に集めてくれるからです。

また、遺産分割協議書も作成してくれ、相続税の申告が必要な場合やもめそうな場合は、それぞれ税理士や弁護士を紹介してくれるケースが多いためです。

遺産額が多いなどで相続税の申告が必要だと分かっていれば、直接、税理士に依頼するのも効率的です。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
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