遠方に居住していた父が交通事故で突然亡くなってしまいました。
法定相続人は、母とわたしの2人です。
父は、預金等の財産の管理はすべて自分で行っていました。母は、父から毎月の生活費を受け取るだけでしたので、父の遺産については全く把握していません。相続税の申告期限も迫ってきてしまっていますが、どのようにして父名義の財産を探したらいいでしょうか。
相続税を試算するにも、節税を図るにも、所有している財産を正確に把握しなければなりません。所有財産の種類や数量がそれほど多くない場合は、あまり時間はかからないでしょうが、不動産や株式などをたくさん持っている人は、以外に自分の財産を把握していないものです。被相続人が所有していた財産の内容や価値が正確に分からないと、相続手続きを円滑に進めることは難しくなってしまいます。
■不動産について
被相続人が土地や建物などの不動産を所有していた場合は、どこにどんな土地や建物を持っていたのか、その評価額はいくらなのかといったことを調べなければなりません。そこで、不動産の「権利証」や「登記完了証」、固定資産税の納税通知書などと併せて送付される「課税明細書」などを探してみましょう。
次に不動産が、今現在も被相続人の所有になっているのかどうかなど権利関係の確認が必要です。そこで、その不動産が所在する管轄登記所(法務局)に備え付けてある「登記簿謄(抄)本交付申請書」に所要の事項を記載し、「不動産登記事項証明書」を取寄せ確認をします。
他には、不動産の調査する方法の一つとして「名寄帳」というものを役所で取得することもできます。この名寄帳には、その役所の管轄内にある課税不動産の全てが載りますのでとても便利です。
ただし、この名寄帳には課税されている不動産しか載りません。つまり、非課税の不動産がある場合には載ってこないのです。例えば、非課税の不動産として自宅の前にある公衆用道路(家の前の私道)です。もし被相続人の所有不動産の前に私道部分がある場合は、法務局で「公図」を取得して、私道についての登記簿謄本も取得してください。
■預貯金について
預貯金などの金融資産の場合、まずは通帳や取引明細書を探してみましょう。もし、発見した預金通帳の残高が0円だったとしても、記帳されていないだけかもしれないため、取り敢えず記帳をしてみましょう。また既に口座が凍結されていれば、金融機関にて「残高証明書」を発行してもらいましょう。
しかし、どうしても預金通帳が見当たらない場合は、自宅近くで被相続人が利用していたと予想される金融機関に対し、口座の有無を確認してみます。その際には、相続人であることを証明する書類の提示が必要となることが多いため、事前に各金融機関に必要書類を確認してから足を運びましょう。
また、同一の金融期間に何口もの預金がある場合は、「取引照会」を申し出れば預金ごとの一覧表をもらうこともできるでしょう。
■生命保険について
まずは保険証券や契約書類を探してみます。保険証券が見つかれば、保険会社に連絡をして他に契約がないか確認をして見ましょう。
保険証券が見つからなくても、被相続人の口座の取引履歴や領収書等から保険料の支払いがあれば、そこから保険会社を特定させることも可能であると思われます。さらには、毎年保険会社から交付される生命保険の控除証明書などがあれば、そこからも特定できるでしょう。
■株や有価証券について
有価証券の場合は、「現物」で所有するものと、証券会社などに「保護預かり」とする場合があります。近年では、インターネットを活用した株式の売買などにより、自宅にて保管するのではなく、証券会社や信託銀行などに預けておくものが大半です。
そこで、自宅に送られてくる「証券口座の案内」や「株主優待」といった郵便物やパンフレット、さらには、パソコン内のデーターチェック、口座取引履歴から「配当金」の振込等を確認しながら、特定していきます。
証券会社や信託銀行が特定されれば、「取引明細書」を請求して下さい。
■借金の調査方法について
相続財産の調査でもっとも難しいのが借金調査です。借金は、通常誰にも知られたくないという思いから隠している場合が多いようです。そこで、金銭消費貸借契約書や貸金業者発行のカード、利用明細、督促状がないかを探してみましょう。
また、クレジット情報を管理している「個人情報機関」(JICC~日本信用情報機関、CIC~指定信用情報機関、全国銀行個人信用情報センター等)に対して、被相続人の情報開示を求めることも可能です。ただし、これらの信用情報機関に登録があるのは、貸金業者の中でも銀行や大手の消費者金融や信販会社であり、所謂街金と呼ばれるような小規模で貸付を行っているような業者や、個人、または闇金などからの借入までは把握することができないことに注意が必要です。
相続財産の調査は、遺産分割の大枠を決めるための大事な要素です。相続財産がわからないままでは遺産分割もできません。調査方法としてはいくつかコツがあります。相続財産の調査から遺産分割まで当センターがサポートしますので、お気軽にご相談下さい。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。