相続人に未成年者や胎児がいる場合は、少し一般の相続と手続きが違ってきます。
というのは、ほとんどの場合、相続は話し合いを相続人同士が行って遺産分割協議をしますが、例えば、親とその未成年者では利益がいわば対立するようになるので、話し合いをするために特別代理人を選ぶ必要があります。
ここでは、相続人に未成年者や胎児がいる場合の遺産分割協議についてご紹介しましょう。
●未成年者の相続の注意点
未成年者の場合は、法律的な財産上の行いなどの際には、基本的に法定代理人に親権者がなって手続きをします。
例えば、保護者の同意が、商品をリサイクルショップに売る時や商品の高額なものを買う時などの場合に必要になるのはこのためです。
遺産分割協議の場合も、これに該当します。
しかし、遺産分割協議の場合は、未成年者の代わりに親が参加できません。
というのは、遺産分割協議の場合には、未成年者と親の利益が対立するようになるためです。
そのため、未成年者の法定代理人を親権者が兼ねることは、利益相反行為になるためできません。
法定代理人に親権者がなれないため、遺産分割協議の場合には代理人を別に立てる必要があります。
この際に申し立てを家庭裁判所に行って、特別代理人を選ぶようになります。
●特別代理人を選ぶ方法
先にご紹介したように、相続の場合には法定代理人に親権者はなれません。
遺産分割協議の内容が、客観的に見て未成年者が有利になるような場合でも、実際には法定代理人に親権者はなれないようになっています。
そして、複数の未成年者がいる場合は、特別代理人をその人数分だけ選ぶ必要があります。
特別代理人というのは、代理権などを家庭裁判所の審判で決定された行いに関して行使するようになります。
相続の場合には、特別代理人は代理行為として遺産分割協議に参加します。
特別代理人の仕事は、遺産分割協議書ができて相続が終わると終了します。
資格などは、特別代理人になる場合は特に必要ありません。
特別代理人は、親族関係に未成年者とある人にするルールもなく、利害関係が遺産分割協議に関してなければ問題は特にありません。
基本的に、特別代理人の候補者が選ばれるようになります。
特別代理人は、選任申し立てを家庭裁判所に行うことによって選ぶことができます。
特別代理人の場合
・申し立て先は、相続人の未成年者の住所地の家庭裁判所
・申立人は、親権者、利害関係者
・費用は、1人の未成年者について800円分の収入印紙、書類を裁判所から送る際に必要な切手
必要な書類
特別代理人の選任申立書、未成年者と親権者の戸籍謄本、利害関係者に申立人がなっている場合は、その戸籍謄本、特別代理人候補者の住民票、利益相反に関する不動産の登記事項証明書などの資料、遺産分割協議書案、遺産分割協議書に書いた財産の資料、申し立てが利害関係者からの場合は、利害関係者であることの証明資料
が必要になります。
遺産分割協議案は、特別代理人を選任する申し立てを行う際に家庭裁判所に出します。
なお、未成年者にとってこの協議内容が有利でない場合は、特別代理人の選任が一般的に認可されません。
つまり、基本的に、未成年者がいる場合は、全ての相続財産を遺った親権者のみが得るのは認可されないということです。
●相続放棄の方法
相続放棄というのは、相続人であることが自分で分かった時から、家庭裁判所に対して3ヶ月以内にそれぞれの相続人が相続放棄申述書を出すことによって行われます。
相続放棄の場合は、単独でそれぞれの相続人が行うようになり、相続放棄の申述を単独で未成年者は行うことはできません。
成年被後見人・未成年者が相続人の場合は、代わりにその法定代理人が申述します。
そのため、相続放棄を未成年者が行う場合は、一般的には未成年後見人や親権者の法定代理人が、手続きを未成年者の代わりに行います。
しかし、利益が未成年者と法定代理人の間で相反する時は、特別代理人を未成年者のために選任する必要があります。
●胎児が相続人の場合の遺産相続
相続人としては、未成年者以外に胎児のような場合もあるでしょう。
例えば、妻が夫と離婚したり、夫が交通事故で亡くなったりして、妻に胎児がいる場合などです。
では、胎児が相続人の場合の遺産相続はどうなのでしょうか?
相続というのは、財産を被相続人が亡くなった瞬間に相続人に譲るものです。
そのため、相続が始まる時点において、相続人は権利能力を有する必要があります。
そして、権利能力を誕生する同時に取得するのが、現行の民法においては基本です。
しかし、例外的に、胎児も相続についてだけ、既に誕生したものとみなすと民法ではなっています。
そのため、相続権が胎児もあると言えます。
しかし、この規定は、胎児が誕生した際に死亡している場合は適用されません。
そのため、相続権は、死亡していない場合、つまり無事に誕生した場合だけあると言えるでしょう。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。