Q:紛争になってしまったらどうすればいいですか?
A:まず当事者同士の話し合いが必要です。精神論よりも法律にもとづいて考えましょう。
必ずしも弁護士が必要というわけではありませんが、円滑に進むケースもありますので必要なら弁護士に依頼しましょう。
精神論ではなく法律で解決する
相続人同士がもめてしまったら、まず当事者同士が話し合う必要があります。
そこでは「家族の絆を大切にして、お互い譲り合う」といった姿勢が確かに大切です。しかし、そうした精神論だけでは相続人の間を調整するのは難しいと言えます。
すでに感情的にもつれているからもめるのであり、その感情のもつれを解きほぐすのは容易ではありません。
最終的には法律に解決を委ねるしかなく、法律はトラブルが発生してからの解決法を示しています。
相続や遺産分割を定めた民法は、「相続をめぐるトラブルを解決する手段」なのです。そこで、最低限のことを理解しておきましょう。
「遺留分」のトラブルを解決するコツ
法定相続人には遺言でも侵害できない最低限の権利があり、これを遺留分と言います。
基本的には法定相続分の半分のことが多くなっています。
また、配偶者と子供1人の場合、法定相続分はともに2分の1ずつで、遺留分はその半分の4分の1ずつです。例外として、法定相続人が父母だけの場合、遺留分は3分の1で、兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺言で特定の子供の相続分をゼロにすると書かれていても、その子供による被相続人の虐待など特別な理由がない限り、子供は遺留分を主張が可能です、長男などに遺産の大半を相続させ、次男はほとんどもらえない場合も、次男は遺留分をもらう権利があります。
遺留分というと、侵害分を他の相続人から取り戻す減殺請求ばかりが強調され、遺留分の存在自体がトラブルの原因のような印象すら与えかねません。
しかし、そもそも法律は、相続人がお互いの遺留分を侵害しないで遺産分割を進めることで相続をより円滑にできると見ているとも言えます。
だから、相続人は、少なくとも民法に定められたそうした相続ルールを尊重して物事を進めていくことが必要です。
「寄与分」のトラブルを解決するコツ
被相続人の財産の維持や増加について特別の寄与をした相続人はいる場合に、その相続人には、遺産の分割に辺り、本来の相続分に加えて寄与に応じた補償分(寄与分)を与えられることが認められています。
民法では、寄与分が認められる要件として➀相続人が被相続人の仕事などに労働力を提供したり、資金など財産を提供したりした➁被相続人の療養や看護をした➂その他の方法で被相続人の財産の維持、増加に特別に貢献したなどをあげています。寄与分の算定基準は法令や家庭裁判所の調停例、審判例や裁判所の判例などで積み重ねられています。
遺産分割のやり方で紛争を解決する方法
遺産分割のやり方で紛争を解決することもできます。
遺産分割には「この土地は長男が相続する」といったように相続人ごとに取得財産を決める「現物分割」のほか、「代償分割」、「換価分割」があることも知っておきましょう。
「代償分割」とは、例えば財産が被相続人の親の住んでいた自宅しかなく、分割が困難なとき、相続人の1人がその不動産を相続し、残りの相続人には相続分に見合う金銭やその他の財産を渡す方法です。
「換価分割」とは、相続財産を売却などで処分して金銭に換えて、それを分割する方法です。
ただ、財産が親の自宅程度しかない場合は、現物分割、換価分割では分割が程不可能です。特に換価分割は紛争の原因になりやすいので注意が必要で、こうした場合は、事前に資金の用意が必要ですが、代償分割を考えるのがトラブルを避けることにつながります。
親の死亡保険金の受取人となった相続人がいるのに、他の相続人はその分割を求めてもめるケースもあります。
これは法律の知識の欠如が原因になります、被相続人の生命保険金は、受取人固有の財産となり、相続財産とはなりません。
したがって生命保険金は遺産分割の対象ともならないということになるので、そのような知識があれば避けられるトラブルなのです。
以上のような民法に定められたルールはぜひ理解しておきたいものです。
そうは言っても、法律には難しい部分があります。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
民法を実際のケースにどう適用してトラブルを回避・解決するかという実用的知識は、弁護士、司法書士など専門家のほうが豊富です。相談するのも良いでしょう。
円滑な事業承継については、中小企業の事業承継を円滑に行うための法律もあるので参考にしましょう。