ご質問

先日、私の父が亡くなったという知らせを受けました。
父は生前、兄夫婦と同居しており、預金口座を含む父の財産管理は、義姉(兄の奥さん)が行っていました。四十九日の法要後、兄と二人で父の遺産をどのように分割するか話し合うために父の財産関係を整理していたのですが(母は既に亡くなっています)、父の預金については、なぜか通帳を見せてくれず、金額を口頭で伝えられただけでした。
伝えられた金額は私の予想よりもかなり少ない金額でしたし、義姉は最近、高価なブランドバッグをいくつも買っているようなので、兄夫婦が父の遺産を隠し、勝手にお金を引き出して使っているのではないかと心配です。
兄夫婦が父の預金口座から勝手にお金を引き出すことを止めることはできないのでしょうか。
また、兄夫婦が既にお金を使っている可能性もあると思いますが、それを確認することはできないでしょうか。

回答

他の相続人が、勝手に被相続人(今回のケースでは亡くなったお父さん)の預金口座からお金を引き出すことを防ぐためには、銀行等の金融機関に被相続人が死亡した事実を申し出て、口座を凍結してもらうことが考えらえます。
また、相続人であれば、被相続人の預金口座の取引履歴や残高を確認することができます。これにより、被相続人の死亡後に、何者かがその預金口座から引出し等を行ったか否かを確認することができます。

預金債権の帰属について

死亡し、相続が開始されると、預金債権は誰に帰属することになるのでしょうか。
預金債権は可分債権(分割することが可能な債権)ですので法律上当然に分割され、各共同相続人が相続分に応じて権利を承継するというのが判例です(最一判昭和29年4月8日)。
つまり、今回のケースでは、相続人が質問者とその兄の2名ですので、それぞれが2分の1ずつ承継することになります。

銀行への届出と預金の引出し

市役所に死亡届を出したからといって、金融機関に対し、その人が亡くなった旨の連絡が自動的に行くわけではありません。金融機関は、誰かが知らせてくれない限り預金者が亡くなったことを把握できませんので、知らせを受けるまではそれまで通りの取引ができてしまいます。キャッシュカードを持ち、暗証番号を知っている人がATMを利用すれば、亡くなった人の預金口座から、現金を引き出すことができてしまいます。
銀行に対して亡くなったことを届け出ると、その口座は凍結され、その後は払い戻しを受けるために一定の書類が要求されることになりますから、誰かが勝手に現金を引き出すことはできなくなります。つまり、一部の相続人等が勝手に現金を引き出し、他の相続人の権利を侵害することができなくなるということです。
なお、一度凍結された預金口座から現金を引き出すためには、共同相続人全員が署名捺印した払戻請求書や遺産分割協議書、戸籍謄本、印鑑証明書、住民票等の書類が要求されるのが一般的です。ただし、金融機関によって取扱いが異なる場合がありますので、詳細は各金融機関に確認してください。

預金口座の取引履歴の開示について

また、相続人は、被相続人の預金口座の取引履歴等を開示してもらい、確認することができます。開示にあたって他の共同相続人の同意は必要なく、単独で行うことができますので、今回のケースの質問者も、単独で取引履歴の開示請求をすることができます。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。