旦那と離婚を考えています。離婚しても、養子の私は旦那の両親について相続する権利がありますか?
私は、夫と結婚する際に夫の両親と養子縁組をしています。
現在養父の持病が悪化しており、正直、養父も高齢なためこの先そんなに長くない状態です。
そんな大変な中ではありますが、夫とは離婚を考えています。理由としては、夫の稼ぎが少ないことと、結婚後に生活を共にして分かったのですが性格の不一致です。夫との会話も苦痛となり、顔を見るだけでイライラしてしまうため、現在は実家に戻って別居生活をしています。子供はいません。
しかし夫は、離婚したくないと言い続けています。養母からは、夫と離婚したら貴方との養子縁組を解消するからねと言われて困っています。
離婚をすると、養子縁組も一方的に解消されてしまうのでしょうか?
仮に養子縁組が解消されなかったとしても、離婚すれば養子としての相続する権利も失うのでしょうか?
養子縁組
養子縁組とは、実の親子関係のない者同士(所謂、血の繋がっていない者)が、法律上、実際の親子(実子)と同じ状態になることを指し、そして、養子縁組の種類は2つあります。
➀普通養子縁組
一般的に養子と呼ばれものは、この「普通養子縁組」を指すことが殆どではないかと思われます。普通養子縁組は、一定の要件を満たす場合に、市区町村長への届け出によって成立します。
たとえば、両親が離婚して母親の姓を称していた子が、母親の再婚によって、再婚相手の男性と養子縁組する。といった例です。
普通養子縁組が成立すると、養子は養親の戸籍に入籍し、養親の氏を称することになります。
但し、本件の相談事例のように、たとえば結婚に伴い、配偶者の両親と養子縁組するようなケースであれば、養親の戸籍に入籍することはなく、養子の戸籍の身分事項の欄に、養子縁組した旨、及び養親の氏名が記載されることになります。
また普通養子縁組が成立すると、養親の嫡出子としての身分を取得するとともに、養親の親族とも親族関係が生じることになります。
加えて、普通養子縁組の場合、養子は養親との親子関係が新たに発生するとともに、実親との親子関係も消滅せずにそのまま継続されることとなるのです。つまり、養子は、養親からも実親からも相続する権利を得る反面、養親及実親両方に対して相互に扶養の義務を負うことになることには注意が必要です。
➁特別養子縁組
特別養子縁組とは、実親からの虐待や子を育てられないなど、なんらか事情がある場合、原則として6歳未満の子の福祉のために、特に必要があるとされるきは、子とその実親側との法律上の親族関係を消滅させ、実親子関係に準じる安定した養親子関係を家庭裁判所が成立させる縁組制度で、養親となる者が、養親となる者の住所地を管轄する家庭裁判所に特別養子縁組成立の申立をし、その許可を得なければなりません。
実親との親子関係が消滅するという点が、普通養子縁組と異なり非常に大きな影響を与える手続きであるため、家庭裁判所では、本当にこのような強い措置が必要か否かを厳格に判断することとなります。
したがって、特別養子縁組の場合、養子は養親との親子関係が新たに発生することによって、実親との親子関係が消滅します。
つまり、養子は、養親からの相続する権利を得る反面、実親からの相続する権利を失うことになる点に注意が必要です
養子縁組は一方的にやめることができるの?
養子縁組を解消することを「養子離縁」と言います。
法律では、養子縁組当事者の話し合いによる「協議離縁」、養親又は養子の死亡後に解消する「単独離縁」、裁判による審判・和解又は調停成立等による「裁判離縁」があります。
「協議離縁」「単独離縁」は届出により成立し、「裁判離縁」は審判や調停により成立するので、報告的な届出となります。なお、「特別養子縁組」の離縁については、裁判による離縁のみに限られています。
(1)協議離縁
養子が15歳以上のときは、養親との話し合いで離縁することができます。
養子が15歳未満のは、養親と養子の離縁後、実親など法定代理人が養親と話し合いにより養子縁組を解消する必要があります。
また、養子が15歳未満のときは、離縁後の親権者を定めなければなりません。実父母がいる場合は実父母が、実父母が離婚している場合はいずれか一方が、実父母が共に死亡しているなど、親権者を誰にするか話し合いがつかない場合は、裁判所に申立て、審判により決めることとなります。
養子が未成年で、夫婦で養親となった場合には、共同して離縁しなければなりませんが、養父母が離婚している場合、養父母のどちらか一方が意思を表示することができない又は死亡している場合は、一方のみと離縁することが可能です。
(2)単独離縁
養親又は養子の一方が死亡した場合、生存している当事者が養子縁組を解消したい場合は、家庭裁判所の許可を受けて解消することができます。
家庭裁判所の許可が必要な理由としては、養子制度を悪用し、養親を利用するだけ利用して、高齢となった養親の一方が死亡後、遺された養親の面倒を見ないで一方的に離縁するようなことを防止するためです。
(3)裁判離縁
離縁の協議が整わないときや養親が意思表示不能の場合は、家庭裁判所に離縁の調停を申立てます。
調停により離縁の合意が成立しなければ、審判離縁へ移行し、職権で離縁に必要な審判をしますが、異議の申立てがあれば、離縁の裁判の訴えを提起することになります。
裁判離縁は以下の要件のいずれかに当てはまる場合に認められます。(民法第814条)
一 他の一方から悪意で遺棄されたとき
二 他の一方の生死が三年以上明らかでないとき
三 その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき
以上のことからも、養子縁組当事者の一方からの勝手な解消は法的には出来ません。ついては、養子としての相続する権利が失われることはありません。
しかし、離縁届出を勝手に出されてしまう可能性があります。心配であれば離縁届出を受理されないように、管轄の役所に養子離縁届不受理申出書を提出しておくなど対策をされた方が良いでしょう。
なお、離縁の裁判を申し立てられ離縁の判決が出ると、望んでいなくても離縁という結果になることがありますが、本件の事情だけから考えると可能性は低いでしょう。ですが、養子縁組が継続されると言うことは、養親の扶養の義務もありますので、不仲であれ扶養する義務を怠り悪意の遺棄などと言われないように注意が必要でしょう。
性格のあわない夫と離婚したい!!
実は離婚の理由としては、性格の不一致が一番多いようです。
しかし法的には、許容しがたい背信行為などがない場合、簡単には離婚出来ない場合があります。
この本件の様に夫は離婚を望まず、不貞行為などの問題もないとなるとただちに離婚することは難しい場合があります。ですが、このまま別居期間が継続した場合は、事実上の婚姻関係の破綻として、離婚が認められる可能性もあるでしょう。
どうしても離婚したいのであれば、距離を置くことで冷静に考える時間もできますし、別居を開始することはおすすめします。本件は子供のいない夫婦ですが、子供がいる場合は、子供を置いて別居してしまうと親権を争う際に不利になってしまうことがありますので注意して下さい。
また収入が夫(妻)よりも少ない方や、その方が子どもを育てている等の事情がある場合は、婚姻費用分担調停の申立を行うことで生活費として婚姻費用を取れる可能性があります。
最後に
今回は、ご相談のあった養子縁組と離婚についての解説でした。
協議離婚に応じてもらえなければ、調停離婚・裁判離婚を検討しなければなりません。
本件の様に既に感情的な問題に発展している場合、当事者同士ではなかなか解決出来ません。
そうなると時間がかかるうえに、精神的な負担も大きいです。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
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