Q:親や配偶者らが死亡した場合、どのような手続きが必要ですか?
A:煩雑な手続きに直面します。健康保険、公的年金など社会保険の手続きや、不動産、金融財産の相続にともなう名義変更のほか、所得税や相続税の申告も必要になります。
手続きが終わるまで1年くらいかかることも多い
親や配偶者が死亡すると、残された家族はお金に関係する煩雑な手続きに直面することになります。健康保険、公的年金など社会保険の手続きや不動産、金融財産の相続に伴う名義変更のほか、場合によっては所得税や相続税の申告も必要になるからです。
手続き先も行政機関、金融機関など多岐にわたるほか、提出する書類の種類・数も多く、葬儀、法要と並行して進めるのは骨が折れます。
「こんなに大変だとは思わなかった・・・」
家族の死亡後、お金に関する諸手続きを実際に行った人の多くはこう言ってため息をつきます。手続きだけでも数が多く、効率的に手続きを進めないと家族の疲労は増すばかりです。
葬儀後のお金関係の主な手続き
早めに行う必要がある手続き
1 手続きの内容
➀遺族年金の請求、未支給年金、保険給付請求書の提出
➁労働者災害補償保険(労災保険)の給付(葬祭料や年金)請求
➂健康保険、国民健康保険などの埋葬料、葬祭費などの請求
➃被相続人の所得税の確定申告(準確定申告)
2 手続き先
➀年金事務所、年金相談センター、市区町村
➁事業所を所轄する労働基準監督署
➂市区町村、健康保険組合、全国健康保険協会(協会けんぽ)、共済組合
➃被相続人の住所地を管轄する税務署
3 手続きに必要となる主な書類
➀死亡診断書、年金請求書、年金手帳や年金証書。未支給年金・保険給付請求書は複写になっており、2枚目が年金受給権者死亡届となっています。
➁各給付(葬祭料、遺族補償年金)の請求書
➂埋葬料などの請求書、被保険者証
➃被相続人名の所得税の確定申告書、公的年金等の源泉徴収票
通常、遺産分割が前提とされる手続
1 手続きの内容
➀不動産の所有権の移転登記
➁預貯金の名義変更や換金
➂株式、投資信託債券の名義変更や換金
➃相続税の申告
2 手続き先
➀登記所(法務局、地方法務局・支局、出張所)
➁金融機関
➂証券会社など
➃被相続人の住所地を管轄する税務署
3 手続きに必要となる主な書類
➀被相続人の戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、遺産分割協議書
➁・➂被相続人の戸籍謄本、名義書換請求書、相続人の印鑑証明書、遺産分割協議書
➃被相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人の戸籍謄本、住民票、相続税申告書
お金関係の手続きは、家族の死亡後の生活に直ちに影響するので「なるべく早くすませたい手続き」と「遺産分割先が決まらないと進められない手続き」の2つがあります。一連の手続がほぼ終わるのは、家族の死亡後約1年と見ておきましょう。
「なるべく早くすませたい手続き」の代表は遺族年金の請求です。例えば、元会社員の夫が老齢年金を受給中に死亡すると、残された妻は、自分の老齢年金に夫の老齢年金をもとに計算した遺族年金を受け取ることになります。ただ、磯九年金は、家族が日本年金機構の年金事務所や年金相談センターなどに必要書類をそろえて請求しないともらえません。しかも実際に受け取るのは請求後数カ月となる場合が多いため、その間の生活費は預貯金などを取り崩してあてることになります。ただ、葬儀代、法要代、墓地の購入代などまとまった支出がある時期だけに、遺族年金を早めに請求しないと日常生活に支障が出ることになります。
公的医療保険から埋葬料などをもらう手続きも早めにすませましょう。会社員が加入する健康保険(健康保険組合、協会けんぽ)の場合は5万円の埋葬料が、高齢者で働いていない人の死亡の場合は国民健康保険や後期高齢者医療制度から5万前後の葬祭費が給付されます。ただし、健保組合などに請求しないと給付されず、2年経過すると時効でもらえなくなります。
家族の死亡後4カ月以内には、被相続人の所得税の確定申告(準確定申告)をする必要尾もあります。相続人が連名で申告します。
所有権移転登記、金融資産の名義変更が一番面倒
一方、被相続人の遺産の取得者が決まらないと進められない手続きの代表は、被相続人の所有不動産の移転登記や預貯金の名義変更です。これらの手続きは「いつまでに終えなければならない」という決まりはありませんが、遺産が比較的多額で相続税がかかる場合は死亡後原則として10カ月以内に申告が必要です。
不動産の所有権移転登記や金融資産の名義変更は、一連の手続きの中で一番面倒とされています。所有権移転登記にともなう登記所への申請は専門的なので、司法書士などに依頼した方がよいでしょう。また、遺産分割にともなう金融財産の名義変更にあたり、「被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本」「遺産分割協議書」の提出を求めるケースが多いからです。
一連の手続きを相続人が誰の手も借りずに進めることは、ほぼ不可能に近いかもしれません。公共料金の支払人の名義変更やクレジットカードの解約、生命保険の受け取りなどにともなう手続きは何とか本人でもできそうですが、税金、登記となると、それぞれ税理士、司法書士の助言や事務代理が必要になりそうです。また、信託銀行ではこうした手続きの大半を「遺産整理業務」として代行しています。ただいずれも報酬が必要です。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。