少子高齢化が進み、墓じまいに関するトラブルが多くみられるようになってきました。墓地やお墓というものは何らかの形で必ず自分に関わってくるものです。いざという時のために少し勉強してみましょう。

墓じまいとは?

墓じまい、というのは、簡単に言うと今あるお墓を破棄する(使用、管理しない)ことです。
日本ではお墓の管理は一般的に長子継承、つまり長男の方が代々引き継いでいくスタイルなのですが、近年では核家族化と少子化の影響で、引き継ぎ手がいなくなってしまうケースが多くなってきました。
統計的にも、墓じまいの件数は2011年で76,662件、2015年で91,567件と増加していることがわかります。
自分以外にもう墓を引き継ぐ人間がいない、遠方で管理がしきれない、などの理由で、無縁墓(誰にも管理されず放置されたお墓)にするぐらいならと墓じまいに踏み切る場合が多いようです。

・どんな時に墓じまいを行うのか?

よくあげられる理由としては以下のようなものがあります。

・ご自身以外に引き継ぐ方がいない
・遠方に住んでいるため管理が困難
・ほとんど関わったこともないお寺との付き合いが面倒
・夫婦ともに一人っ子で、墓が2つないし複数ある
・子世代、孫世代をわずらわせたくない

まさに、少子化や宗教離れが叫ばれる現代ならではといった理由ですね。最近では数は多くないものの、散骨や自然葬を希望するので墓は必要ない、という方もちらほらいらっしゃいます。

 

墓じまいをした後は?

墓じまいをしたら、当然ですがお骨が出てきます。なので、何らかの対処が必要です。
一般的なのは、管理しやすい距離、環境にある墓地へと引越しをする改葬か、自然へと返す散骨です。
現在の法律では、必ずしも埋葬する必要はありませんが、いらぬトラブルを避けるためにもきちんとした対応を考えておきましょう。

 

墓じまいを行うには?

個々のお墓の管理は各個人で行うものですが、墓地そのものはお寺に所属しているものです。神道やキリスト教徒の方でしたら宗旨、宗派不問の霊園というのが一般的なようですね。
まずはそうしたお寺や、霊園の管理者の方に連絡を取り、埋葬証明書を受け取ります。お墓を引っ越すのであれば、引越し先の墓地から受け入れ証明書を受け取り、管轄の役所で改葬許可書の申請もしておきましょう。

次に必要なのは開眼供養と呼ばれる儀式です。これはお墓に魂(仏)を宿したり、逆に抜き取ったりするための儀式です。墓じまいの際にはお骨を取り出す前に魂を抜きとり、改葬の際には宿してからお骨を収めます。
この時、お骨を出し入れするために石材店のような専門の業者を頼む必要があります。お寺と提携している場合もありますが、なるべくならきちんとした実績のある業者に頼みましょう。墓石の撤去などに別途業者が必要になることもあります。

改葬するのであれば、墓じまいが済んでから、お墓のあったお寺で改葬証明書にサインをもらい、お墓のあった地区の役所に提出します。それから、新たな墓地へ改葬証明書を提出し、開眼供養の後納骨となります。
神道やキリスト教の場合はまた違った儀式等になるのでしょうが、ここでは仏教式に関して述べていきます。

墓じまいの費用は?

墓じまいは残念ながら安くはありません。もちろん、お布施というのは気持ちですので決まった金額というものはありませんが、一般的な相場を以下にあげてみます。
まずは開眼供養でお坊さんに渡すお布施はだいたい1~5万円です。
次に離檀料。これが実質墓じまい料となるわけですが、10~20万円。これは一般的な法要でのお布施と同額程度です。
墓石の撤去などにかかる費用は、だいたい10万円/㎡と言われていますが、立地などによってかなり変わってきます。事前の見積もりは必須です。
改葬の場合、新たな墓地の諸経費や法要のお布施などが必要になります。合わせて15~25万円くらいでしょうか。

ここにあげたものはあくまでも一般的な相場です。お布施の金額などはお寺の規模や格、親しさなどで大きく変わることがあります。普段行っている供養や法要の際のお布施を基準に考えて下さい。

 

墓じまいにおけるトラブルとは?

一番多いのは親族間でのトラブルなのだそうです。お墓に対する思い入れは人それぞれですし、ご自身の判断だけで動くのは危険です。まずは親族の方と話し合ってみましょう。それならば自分が管理を引き継ぐ、と申し出てくる方がいらっしゃるかもしれません。

また、お墓のある地域はご自身、あるいはご両親の出身地であることも多いでしょう。墓じまいをすると、地元の方の心証が悪くなるといったケースもあります。こればかりは対処というのも難しいですので、多少は覚悟がいるかもしれません。

二番目に多いのは、お寺とのトラブルです。そもそも墓じまいを認めてもらえなかったり、あるいは離檀料に法外な料金を請求された、ということがままあります。
ただの悪徳坊主と言ってしまえばそれまでなのですが、他に理由がある場合もあるので注意しましょう。

専業のお寺の生活というものは基本的には檀家さんのお布施で成り立っています。墓じまいをすると言うことは、檀家をやめることとほぼ同義ですので、お寺にとっては死活問題なのです。現代では小さなお寺は単体では成り立たなくなってきており、普段はサラリーマンとして働いて生計を立てているお坊さんも多くなっています。相手にも事情があるのだと知っていれば、話し合いも冷静にできるのではないでしょうか。

また、墓じまいをする理由にお寺との付き合いが面倒だと言うものがありましたが、これは逆から見れば、お寺としても寄り付かない檀家はやっかいなものだと言えますよね。
お寺は各種法要などのお知らせを檀家さんに対して行っているものです。何年もの間供養や法要を放っておいて、ようやく連絡が来たかと思えば墓じまいをしたいでは態度も悪くなろうと言うものです。お互いに礼節をもってお付き合いをする、ということがトラブルを避ける最善手かもしれません。
本当に悪質な場合には、きっぱりと断りましょう。お寺には墓じまいを禁止する権限などありません。場合によっては恐喝などに該当することも考えられます。

同様に、業者とのトラブルもあります。これは寺院と提携している業者である場合が多いそうですが、やはり法外な金額を請求されると言うケースがあるようです。
専門的な知識や技術を要することですので、多少お高いな、くらいは仕方がないかもしれませんが、それが目に余る場合には弁護士に相談するなどしかるべき対処をしましょう。
提携業者である場合が多いと言うのは、おそらくは市場を独占して殿様商売をする環境が整いやすいせいなのではないでしょうか。そこに頼むしかないとなれば、泣き寝入りする方も増えるでしょう。

最後に、これは墓じまいを終えた後のトラブルなのですが、取り出したお骨を埋葬せずに自宅で維持されたり、あるいは勝手に散骨をしてしまったりで、近隣住民ともめることがあります。
ご遺族の方の気持ちはもちろんお察ししますが、それでも壁一枚向こうに人骨がある、とい状況はやはりゾッとなりますよね。あるいは、いくら思い出の場所だからと言って、普段子供たちが遊ぶような場所や食に関わるような場所でむやみに散骨をされてはたまったものではありません。

現在はそれらを禁止したり規制するような法律はありませんが、どうか良識を持って行動していただきたいですね。
あまりにも節度がないと判断された場合は、最悪、死体遺棄罪に問われることもあります。
散骨を希望される場合は専門業者に頼むのが一番でしょう。

また、海外ではきちんと法律で定められている所もありますので、くれぐれもご注意を

 

墓じまいのトラブルまとめ

以上、いかがでしたでしょうか。
近年、墓に関するトラブルはどんどんと増加しています。筆者の実家がお寺なのですが、実際、男兄弟がすべて亡くなられたので姉妹の方に連絡を取ったところ、亡くなったご主人の家系のお墓を管理している上に引き継ぎ手もいないので無理だ、というようなことがありした。

また、父親がものすごく皮肉な顔で「バッコンしてやった」と言っていたのを思い出しました。当時は何のことかわかりませんでしたが、バッコンというのは抜魂、すなわち開眼供養の事だったんですよね。つまり檀家が一人いなくなったと言っていたわけです。
一説によると、お寺が単体で機能するためには300人の檀家さんが必要だといいます。
これを機会に、自分の所属するコミュニティにとってのお寺というものを考えてみていただけたら幸いです。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は相続人によって異なります。相続人は親族であり、その後も長い時間をかけて付き合う可能性が高い相手。だからこそ、円滑に、そしてお互いが納得した遺産相続手続きを進めたいですよね。