死亡後すぐに手続きをしなくても即座に「ペナルティ」は無い
身近な人がお亡くなりになったときは、ただそれだけでも心身ともに疲弊してしまうものです。
しかし、すぐに葬儀や法要などのやるべきことが立て続けに押し寄せて、可能な限りやらなくていいことは後回しにしたいという気持ちになるものです。そんななかで、相続の手続きをするということは、なかなか厳しいものがあります。
もしも、相続手続きをせずに放置してしまったらどうなるのでしょうか。まず、お亡くなりになった方の名義になっている銀行口座などは全て、凍結されてしまいます。現金を引き出すことはもちろんできません。銀行以外の株式や不動産なども故人の名義のままでは触れることができない状態です。
しかし、相続手続きをやるタイミングが少し遅れたからといって、なんらかのペナルティが即座に発生するというわけではありません。葬儀や法要などはなにより優先されるものですが、相続手続きについては可及的速やかに行えばよいとされているのです。
とはいえ、手続きをいつまでも放置したままにすることでのデメリットもあります。例えば、相続人が複数いる場合を想定してみましょう。
そのなかでお年をめした方がおられた場合、もしかしたら認知症を発症してしまうかもしれません。相続人の誰かが、養子縁組をすることもあるかもしれません。こうして、環境がどんどん変化していくとそれだけ相続手続きは複雑化して難易度が上がっていくのです。それを防ぐ意味でも、相続手続きは、法要などが落ち着いて一段落したタイミングで可能な限り速やかに行われるのが望ましいでしょう。
また、不動産などの財産は、その価値が変動する性質をもっています。故人の名義のままになっているからとの理由で、売買ができない状態にしていると損失が出るケースもあり得るでしょう。こうした事態は、亡くなられた方からしても好ましいこととはいえません。
債権の時効は10年
即座には、ペナルティがないと先述しましたが、これは期間限定ですので注意が必要です。ペナルティがないからといって放置していたら、結局大きな損失につながるのです。
例えば、銀行預金を例にとって説明します。被相続人がお亡くなりになられると、その方の名義になっている銀行口座は凍結されてしまいますので、預金の入出金は不可能になります。この凍結状態を解除するためには、相続人を確定することが必要です。相続人全員の署名・実印、それから印鑑証明書を携えて、銀行での手続きを完了してはじめて凍結が解除されます。
その手続きを行わないまま、もし、10年間放置した場合、その預金債権は時効により消滅してしまうのです。
ただ、放置していたわけではなく、遺産分割協議がなんらかの理由でなかなか進まず時間がかかってしまったというケースもあるでしょう。
通常、銀行ではそのような場合も想定しています。きちんと手続きをふめば、10年以上経過していても、支払い請求に応じてくれる場合がほとんどです。とはいっても、10年経過していることを理由に支払いを断られても文句がいえないという事態はできるだけ回避したいところです。10年以内を目処として認識しておくようにしましょう。
相続税の申告と相続放棄、準確定申告は要注意
相続手続き自体が遅くなったからといってペナルティはないのですが、相続税の申告はすぐに準備を始めないといけません。というのも、相続税の納付期限は相続がわかった時点から起算して10ヶ月以内と決まっているからです。その間に、財産を受け取るのか放棄するのかを確定する必要があります。
追徴課税が発生
支払いが、万が一遅れてしまった場合は、追徴課税が発生してしまいます。追徴課税がどのくらいかかるのか、確認しておきましょう。
納期限から2ヶ月以内に納付した場合→
| 年率7.3%、または特例基準割合+4%のいずれか低い方を支払う
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納期限から2ヶ月を超えて納付した場合→ | 年率14.6%を支払う |
納税が遅れたからという理由で、金額が大きくなってしまうというのはあまりに無駄です。また、もしも納期限を過ぎてしまったということがわかったら、即座に対応することをおすすめします。2ヶ月以内か否かによっても大きく差がつきますので、一日でも早い納税を目指したいところです。
相続放棄の場合
それでは、相続を放棄すると決めた場合はどうなるでしょうか。相続放棄とは、マイナスの財産の方が多く、相続を受ける方がむしろ不利益となる場合に、財産を受け取らないと決めることを指しています。この場合、遺産分割協議で取り決められるですが、それで安心していてはいけません。できるだけ早く、相続放棄の手続きを行わないといけないのです。
相続放棄には期限があり、これが3ヶ月とされています。3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行い、速やかに手続きを完了させましょう。
もしも、3ヶ月を過ぎてしまうと、自動的に相続したことになってしまいます。相続するか放棄するかを迷っている場合や、全財産を調査するのに手間取る場合は、家庭裁判所に申し立てして期限延期をお願いしてみてください。3ヶ月は延期することが可能です。
準確定申告
被相続人が亡くなった日から4ヶ月以内に、被相続人の確定申告を行わなければなりません。この確定申告のことを、準確定申告いいます。これも、忘れずに早めに行いましょう。
贈与税の期限について
相続税と類似したものとして贈与税がありますが、贈与税ももちろん申告と納税を行う必要があります。そして、相続税と同様、納付が遅れた場合にはペナルティが発生するので注意が必要です。相続時に関係してくる贈与税は、相続時精算課税贈与というものです。
これは、高齢になった方がさまざまな理由から、資産を若者に渡すときにかかる贈与税で、親子・祖父母と孫のあいだなどでのみ利用できます。税額の有無にかかわらず、申告しないといけません。
この場合の贈与税申告期限は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までのあいだとされています。この間に、申告書を作成して提出し、そこで申告した金額を納付しなければなりません。もし、申告・納付期限を過ぎてしまうと下記のような罰則があります。
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贈与税には時効があり、5年を過ぎてしまうと成立します。これは、贈与されたことに気がつかなかったときにのみ適用されるものです。
遺産相続の手続きと期限の一覧
遺産相続は想像以上に手間がかかり難航する場合もあります。全体像を把握して、できるところから速やかに着手するのが望ましいです。
期限 | 手続き |
およそ1週間以内 |
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1〜3ヶ月 |
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1〜4ヶ月 |
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1〜10ヶ月 |
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まとめ
相続手続き自体が遅れたからといって、なんらかのペナルティを課せられるということはありません。しかし、相続税の納付や、相続放棄などの手続きには期限が設けられており、これを過ぎてしまうと損失が生じてしまいます。それどころか、相続放棄をしておかなかったばっかりに負債を背負うことになる可能性もあるのです。もし、財産を相続することがわかったら、できるかぎり速やかに各種手続きを行いましょう。そして、うっかり期限を過ぎてしまった場合は、一日も早く対処することでペナルティが少なくてすみます。緊急の際には、専門家の力を借りるのが一番でしょう。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
相続問題は相続人によって異なります。相続人は親族であり、その後も長い時間をかけて付き合う可能性が高い相手。だからこそ、円滑に、そしてお互いが納得した遺産相続手続きを進めたいですよね。