まずは、ざっくり相続時精算課税制度とは?財産を無償で他の人からもらうのは、大きく分類すると、以下のケースがあります。

・亡くなった後に財産を相続でもらう
・生存している間に財産を贈与でもらう

一般的に、いずれの場合でも課税されます。
贈与を受ければ、贈与税が基本的にかかります。
贈与税というのは、もらった財産から110万円の基礎控除額を差し引いたものに税率を掛けて計算します。

 

■相続時精算課税制度を選択するための要件とは?

●適用される人

贈与を受ける人は、次の➀~➃の全てに該当する必要があり、贈与する人は、60歳以上に贈与する年の1月1日になっている必要があります。

➀次のどれかに当てはまる人である
・日本国内に贈与を受ける際に住所がある
・日本国内に贈与を受ける際に住所がないが、日本の国籍があり、しかも、贈与を受ける人あるいは贈与する人が贈与する前の5年のうちに住所が日本国内にあった
・贈与を受けた際に、日本の国籍も住所も日本国内にないが、贈与する人の住所が日本国内にある
➁直系の贈与する人の卑属の推定相続人である
➂贈与する人の孫である
➃20歳以上に贈与を受けた年の1月1日になっている

●適用になる財産など

贈与する回数、財産の種類などは制限されていません。

●手続き

相続時精算課税制度を選ぶ場合は、贈与を受けた次の年の2月1日~3月15日に、贈与税の申告書に次の書類を付けて税務署に提出する必要があります。
・相続時精算課税選択届出書
・住民票のコピー
・登記事項証明書

 

相続時精算課税を選択した場合の贈与税の計算方法は?

相続時精算課税制度を選んだ場合の贈与税額の計算は、課税価格から特別控除額を差し引いたものに税率を掛けます。
なお、特別控除額としては、次の金額の低い方になり、税率としては、20%の一律になります。

・2500万円
・贈与税の特定贈与者ごとの課税価格

 

相続時精算課税制度のメリット・デメリット

相続時精算課税制度の6つのメリット

・2500万円まで課税されない
贈与税が2500万円まではかかりません。
2500万円をオーバーした分は、20%の贈与税が一律にかかります。

・高額の財産を早く贈与できる
相続税が相続する際にかからないと考えられる場合は、効果がある可能性が大きくなります。

・相続税対策に収益物件を贈与する際はなる
マンションなどの収益物件を贈与する際は、もらった人の儲けに贈与した後はなり、あげた人の財産が多くなるのが防止できるので、相続税が節税できます。

・相続税対策に値上がりが期待できる財産を贈与するとなる
財産として値上がりするようなものを持っていると、相続税が多くなるので、贈与を早めにしておくと節税になります。

・相続トラブルが防止できる
将来的に相続人になるような人に相続したい財産を生きている間に贈与すると、贈与した財産でトラブルにはなりません。

・評価額が生前贈与の場合は低くなる
居住用の住宅を親が買って、この後買った居住用の住宅を生きている間に贈与すると、低い評価額になるので、相続対策ができます。

 

相続税精算課税の7つのデメリット

・一旦選ぶと撤回できない
撤回できなければ、非課税枠の毎年110万円のものが使えません。

・申告する手間がかかる
相続時選択課税制度を選ぶと、贈与税の申告が贈与額に関係なく必要になるため手間がかかります。

・法律が改正された場合は不利になることがある
相続時精算課税制度を選んだ場合に、現行の制度では効果がある場合でも、これから制度が改正されると不利になる場合もあり得ます。

・小規模宅地等の特例が適用できない
小規模宅地等の特例が、土地を相続時精算課税制度を使って贈与すると適用できなくなるため注意しましょう。

・税金が相続する際にかかることがある
相続時精算課税制度を選んだ場合は、生前贈与では贈与税が2500万円までかかりません。
しかし、相続する際に贈与額を足し戻すので、相続税がかかることがあります。

・財産として生前贈与を受けたものは物納が認められない
基本的に、建物や土地を相続した際は、相続税をその建物や土地で払うこともできます。
しかし、相続時精算課税制度を使って、財産として贈与を受けたものは、物納ができないため注意しましょう。

・費用が高くなる
不動産を相続する際に取得すると、0.4%の登録免許税になります。
しかし、生前贈与では、2.0%の登録免許税になり、不動産取得税もさらにかかるので、費用が高くなります。

 

■まとめ

財産を無償で他の人からもらうのは、大きく分類すると、亡くなった後に財産を相続でもらう、生存している間に財産を贈与でもらう、というケースがあり、一般的に、いずれの場合でも課税されます。
相続時精算課税制度を選ぶためには、ここでご紹介したような要件があるため注意しましょう。
相続時精算課税制度を選んだ場合の贈与税額の計算は、課税価格から特別控除額を差し引いたものに税率を掛けます。
相続時精算課税制度のメリットとしては、2500万円まで課税されない、高額の財産を早く贈与できる、相続税対策に収益物件を贈与する際はなる、相続税対策に値上がりが期待できる財産を贈与するとなる、相続トラブルが防止できる、評価額が生前贈与の場合は低くなる、ことが挙げられます。

一方、相続税精算課税のデメリットは、一旦選ぶと撤回できない、申告する手間がかかる、法律が改正された場合は不利になることがある、小規模宅地等の特例が適用できない、税金が相続する際にかかることがある、財産として生前贈与を受けたものは物納が認められない、費用が高くなる、ことが挙げられます。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続には様々な形があり、手続きや申請方法もケースによって異なります。専門知識が無い方は申請書の不備等で無駄な費用が掛かってしまう可能性もありますのでしっかりと相談することをおすすめします。