Q:相続手続きで必要な書類にはどのようなものがありますか?
A:「印鑑証明書」は相続では大変重要な書類です。相続人本人が手続きをしていることを実印の証明書、つまり印鑑証明書の提出で示すためです。
さまざまな書類が必要になる
親や配偶者などが死亡した後にさまざまな手続きが待ち構えているのは前に説明したとおりです。手続きには申請書や申告書以外にいろいろな書類が必要で、これを揃えることが煩わしさの大半を占めると言っても過言ではありません。
ただ、これらの必要書類のどれが欠けても手続きを受け付けてくれませんので、大変ですが求められるものを全て揃える必要があります。
ところで、いろいろな手続きがあると言っても、添付書類はそれほど種類があるわけではありません。同じ書類を何カ所にも提出することが多いです。そこで、添付書類にはどのようなものがあるのか、なぜそれが必要なのかをまとめてみました。なぜ必要かがわかれば手続きの意味が理解できるので、少しは煩わしい手続きも、無味乾燥なものでなくなるかもしれません。以下に手続きで必要とされる書類をまとめました。
「早めに行いたい手続き」では特に「死亡診断書」が欠かせません。
これは、医師が診察した被相続人について「死亡の事実」を証明する書類で、死亡届け出をする場合には添付書類として必要です。死亡診断書は市区町村に提出する死亡届と一体になっていますので、死亡診断書を出してもらえば同時に死亡届も手に入ります。
なお、死亡診断書は市区町村役場に提出すると返してくれませんから、死亡の事実などを証明するには、市区町村に「死亡診断書の写し」「死亡届記載事項証明」などを発行してもらう必要があります。
死亡届を市区町村役場に提出すると、その場で「火葬許可書」が発行されます。これは火葬を行うために必ず必要で、火葬場で火葬が終ると、担当者が裏に印を押してそのまま「埋葬許可書」となります。
埋葬許可書は重要です。納骨の際、埋葬するのに提出しなければなりません。通常、火葬場の担当者が忘れないように骨壺に入れてくれます。
「戸籍謄本」は必要書類の中でも特にいろいろな場面で入用です。
「住民票」は被相続人と相続人が同居していたかどうかを示すのに使われます。例えば、相続税の申告で小規模宅地の評価減の特例を使う場合に、相続人が被相続人と同居していたことの証明が必要ですが、そうしたことに使います。
印鑑証明書が非常に重要
「印鑑証明書」は相続では大変重要な書類です。
相続人本人が手続きをしていることを実印の証明書、つまり印鑑証明書の提出で示すためです。
各相続人がどの財産をどのくらい相続するのかを文書化した「遺産分割協議書」には、全相続人が合意したことを示す署名と実印の捺印が必要で、同時に印鑑証明書も添付します。これで、遺産分割協議書に署名したのが間違いなくその本人であることが示されるのです。
実印というと重々しいですが、住所地の市区町村役場に登録した印鑑のことです。立派な印鑑を登録する人もいますが、認印のような印鑑でも登録できます。要はその印鑑と印鑑証明書を同時に示していることが、本人が手続きしていることの証拠となるわけです。
したがって、他の市区町村に住所を移した場合は、新しい住所地の市区町村役場に印鑑登録をする必要があります。また、女性の場合、印鑑登録をしていないケースが目立ちます。登録していないと印鑑証明書を提出できず、相続手続きが進みませんので注意してください。
ところで、被相続人が死亡すると相続人は慌ただしくなりますので、以上のような一連の書類を入手したり、提出したりするのは大変だと思います。死亡診断書は医師が渡してくれますが、死亡届は家族で手分けして市区町村役場に提出するか、場合によっては葬祭業者に依頼して、死亡届の提出、火葬許可書の入手などをやってもらってもいいでしょう。
葬祭業者は葬儀全般を取り仕切ってくれるだけでなく、病院から遺体を搬送してくれたり、手続きの代行もしてくれたりと何かと世話になりますから、安心できる業者選びが重要です。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
相続問題は相続人によって異なります。相続人は親族であり、その後も長い時間をかけて付き合う可能性が高い相手。だからこそ、円滑に、そしてお互いが納得した遺産相続手続きを進めたいですよね。