法定相続情報証明制度とは?
法定相続情報証明制度というのは平成29年5月末から導入された相続を単純化するためのものです。相続を単純化と言っても相続自体は各家庭によって異なります。土地を長男に・建物は次男になどそういう点で単純化させるものではなく、相続に必須な手続きをするうえで単純にしようというものです。
では、具体的にどのように単純化しているのでしょうか。相続をするには被相続人(故人)と相続人(相続する身内)が存在しますよね。今までの相続では手続きをする上で全ての人の戸籍標本を集める・相続する物件や土地の書類を集める・役所へ通うなど手間ひまがかかっていました。この作業や書類の煩わしさから解消される新しい制度が法定相続情報証明制度です。
法定相続情報証明制度が施行された背景には日本の土地問題がありました。日本の法律では土地の名義変更に期限を設けていません。期限を設けていないことで名義変更をするのが面倒だと感じている人は長期間にわたって相続しているのにもかかわらず登記変更をしていないことが多いです。そういう土地は所有者不明となり、固定資産税の聴衆も難しくなっています。
実際に、日本の中では50年近く名義がわからない土地もあるほどです。固定資産税を徴収しやすくする意味もあり、土地の名義変更を容易にする意味も込め法定相続情報証明制度は施行されました。
戸籍謄本一式の代わりに1枚提出するだけ
法定相続情報証明制度には3つのメリットがあります。そのうちの1つが戸籍標本一式の代用品の存在です。それは「法定相続情報一覧図の写し」というものです。この紙1枚で今まで行っていた相続人全ての戸籍標本などを集めなくても良くなります。
法定相続情報一覧図の写しは土地の名義変更だけでなく相続をする際に不動産の名義変更・金融機関の預貯金の払い出し・名義変更など相続をする際にしなくてはならないこと全てで使用できるようになるのです。
金銭的負担が軽減できる
これも法定相続情報証明制度のメリットの1つです。被相続人が複数の土地や不動産・金融機関の口座を所有していた場合、今までの相続手続きでは毎度戸籍標本を提出しなければいけませんでした。戸籍標本は役所など市区町村が発行するため、発行手数料がかかりました。それも相続人ごとにお金がかかってくるので金銭的負担がかかってしまいます。
そこで法定相続情報証明制度は法定相続情報一覧図の写しを無料で発行してくれます。相続時には戸籍標本の代わりとして利用出来るものを無料で何枚も準備できるのは金銭的負担を軽減していると言えますね。
同時に行いたいときに時間短縮できる
これが最後のメリットです。もし被相続人から相続する口座や土地が複数箇所あった場合に、金銭的負担を軽減させる裏技として一度用意した戸籍標本の一式を金融機関へ一度出して返却されるのを待ってから次の金融機関へ出すという方法があります。
戸籍標本は1セット用意すれば済むので金銭的には負担を軽減させることができますが、どうしても返却時間を待つので時間がかかってしまいます。そこで法定相続情報一覧図の写しを使用すれば無料で複数セット用意してくれるので同時に複数箇所へ相続の手続きをすることができるのです。金銭だけでなく時間も短縮できる良い制度だということが言えますね。
「法定相続情報証明制度」を利用する前にチェックすべき5つのこと
法定相続情報証明制度は平成29年5月末から導入された制度です。記事執筆時(平成30年5月)ではまだ浸透していない可能性もあるので法定相続情報証明制度を利用する前にチェックしておくべきことを紹介していきます。
法務局と大手金融機関でのみ利用出来る
制度施行から1年と短いので法定相続情報証明制度を利用出来るのは法務局と大手金融機関のみです。地方銀行や信用金庫類では今後導入される可能性が高いです。相続しそうな金融機関が制度を利用出来るか否か事前に確認しておきましょう。
不動産がなくても制度は利用出来る
本来の制度の目的は土地など不動産の名義変更を容易にするものでしたが車や銀行口座の名義変更にも利用できます。
日本国籍を有している人のみ
被相続人・相続人ともに日本国籍を有していなければこの制度は利用できません。
名義変更には追加書類が必要
法定相続情報証明制度は戸籍標本の変わりとして利用出来ます。もし遺産が分割されるようなことがあれば遺産分割協議書を一緒に提出する必要があります。
相続税の申告書には利用できない
相続税の申告をする際には戸籍標本の提出が必須です。しかし、この戸籍標本の変わりに法定相続情報一覧図の写しでは代用することができません。
法定相続情報証明制度を利用する
実際に法定相続情報証明制度を利用して法定相続情報一覧図の写しを受け取るまでのステップを紹介していきます。
ステップ1, 必要書類(戸除籍謄本など)を集める
必要書類として集めるのは戸籍標本です。では、誰の戸籍標本を集めれば良いでしょうか。それは「法定相続人」の戸籍標本です。法定相続人とは相続できる人のことを言い、被相続人の配偶者や子供・親がなることができます。法定相続人には相続順位が決まっています。配偶者は常に相続人になれて、直系の子供が相続順位1位です。被相続人の両親・祖父母が相続順位2位で被相続人の直系兄弟が相続順位3位になります。
集める書類は被相続人の戸籍標本・住民、相続人全員の戸籍標本、手続きで申告する人の身分証明書(免許証・マイナンバーなど)、法定相続情報一覧図です。
ステップ2「法定相続情報一覧図」をご自身で作成する
法定相続一覧図とは今まで紹介してきた法定相続一覧図の写しの原本です。この法定相続一覧図は法務省のホームページに規定のフォーマットがあり、個人で作成することになります。
ステップ3登記所へ申出する(相続人または親族、代理人)
登記所へ相続の申し出をする必要がありますが申し出をできる人というのも限られています。登記所で申し出ができる人は相続人とその親族・そして代理人のみです。親族が相続人の変わりに申し出をする場合は相続人と自分の関係性を証明できるような書類を提出する必要があります。また、代理人が申し出をする場合には委任状の提出が必須になります。
ちなみに代理人として業務を受けることができるのは弁護士・司法書士・土地家屋調査士・社会保険労務士・税理士・弁理士・海事代理士・行政書士です。いわゆる士業の人が代理人になれるということですね。
直接登記所へ出向き申請するのがベストですが、どうしても時間がないという人は郵送でも手続きをすることができます。
ステップ4「法定相続情報一覧図の写し」を受け取る
登記所での申し出が終わると法定相続一覧図の写しを受け取ることができます。原本は登記所が5年間保管していて、その間であれば申し出人に限って何度でも再交付をしてもらえます。
まとめ
法定相続情報証明制度は土地や不動産だけでなく金融機関や車の名義変更をする際に便利なものです。制度自体難しいことも少なく誰でも気軽に利用出来る制度ですよね。
今までの制度に比べてみても時間や費用を大幅に節約でき非常に効率が良い制度だということがわかります。
個人で申し出や資料作成をするのが一般的ですが、書類や相続での話し合いなどで困った際には気軽に弁護士へ相談するようにしましょう。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
相続問題は相続人によって異なります。相続人は親族であり、その後も長い時間をかけて付き合う可能性が高い相手。だからこそ、円滑に、そしてお互いが納得した遺産相続手続きを進めたいですよね。