財産の片付け等処理の費用については,法定相続人で負担するのか,または,義務になるのでしょうか?というご質問を頂きました。

被相続人(故人)が亡くなった場合,しなければならないことはたくさん有りますが,ご質問の財産の片付け費用は,相続人が負担すべきか否かですが,遺留分を侵害するような場合を除き,基本的には相続した遺産で処理をすべきでしょう。
今回は,関連した多くのご質問を頂いているものを,ご紹介いたしましょう。

1 故人が,賃貸物件で一人暮らしをしていた場合

今は,賃貸物件で一人暮らしされている方も多いと思いますが,孤独死や自殺等により亡くなった場合を考えてみましょう。この場合,貸主から原状回復費,損害賠償等の請求を受ける場合があります。部屋の設備に破損等があり,通常の撤去費用よりも高額な費用を請求されたとき,出来るだけ貸主に迷惑をかけず,相続人の負担を軽くする方法をお話ししましょう。

貸主は,連帯保証人や相続人に対し請求をしてくるでしょう。故人が,多額の負債がない場合,話し合いのもと,請求金額が遺族にとって負担にならない程度であれば解約手続きを取ってもかまいません。
請求金額が高額で、故人に多額の負債がある場合,「相続放棄」を検討することになります。連帯保証人が亡くなっている場合,家主は相続人に「相続放棄」をされてしまうと請求先がなくなることになり,家財の撤去費用,原状回復費用など負担しなければならなくなります。また,勝手に家財も処分ができなくなり,家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立を行い,選任された相続財産管財人によって家財の処分を行わなくてはなりません。非常に時間もかかることも踏まえ,貸主が一方的に損失を被らないようご注意下さい。家財の撤去,部屋の明け渡し,預けてある敷金以上は支払いができない等を貸主に伝え,話し合いをしてみましょう。但し,一方的に貸主が損失を被らないよう配慮が必要です。
※連帯保証人の場合は、相続人のように相続放棄をしたからといって貸主から請求を免れることはありません。相続人が連帯保証人である場合も同様です。

2 葬儀費用

葬儀費用は,誰が持つべきか?
葬儀費用は,通夜,葬儀などの宗教的な儀式のための「追悼儀式に要する費用」,荼毘に付したり,死亡届を出したりするための「埋葬等の行為に要する費用」に分かれます。
そのうち,追悼費用については,

➀故人が葬儀社と生前契約をしていた場合は,故人の財産
➁相続人や関係者等の話し合いで決められた者
➂葬儀を主宰した者(喪主) 

の順番で負担するものとされています。
また,埋葬等の行為に要する費用については,祭祀を継承する者が費用負担するとされています。そもそも祭祀とは,お墓や仏壇,神棚のことであり,相続とは別に慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が継承をするとされています。(民法第897条)
故人がお墓等の継承者を指定していればその人が祭祀継承者になりますし,長男が継承するという習慣があれば,習慣によって決まります。

相続において揉めるケースは多いのですが,一般的に葬儀費用は,高額になることが多いようです。葬儀費用の分担ということになりますと揉める原因にもなりますので,ご注意下さい。相続人に対して,金銭的に負担をかけたくないと思われるようであれば,葬儀の生前予約をしておくか,通常の相続財産とは別枠で葬儀費用等を用意し,遺言書に書き残しておくことが賢明であると思われます。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
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