現在3組に1組が離婚をしていると言われています。
そして、男性の約10人に7人が、女性は約10人に6人が再婚をしているそうです。

 最近ではバツイチであればマイナスなイメージではなく、むしろ結婚経験者であることや、離婚経験があるからこそ家庭を大切にしてくれそう…など、バツイチに関しては柔軟な見方をする方が増えているようです。離婚件数の増加に伴い、再婚件数も増加しているというのは、このあたりに理由があるのかもしれませんね。

 少し脱線してしまいましたが、ではその再婚について、相続が関係したらどのような事が考えられるのか、みていきましょう!

再婚をした場合の相続人

 まず、法定相続人(民法の規定により相続人となる人のこと)についてですが、以下のようになります。

配偶者…必ず相続人となる。

第一位…直系卑属(被相続人(亡くなった方)の子供や孫など)

第二位…直系尊属(被相続人の父母、祖父母など)

第三位…被相続人の兄弟姉妹や甥・姪など

配偶者に次いで、順位の高いグループに居る者が相続人となります。
 例えば父、母、子供2人の家庭だったとして、父が亡くなった場合、母である配偶者と、第一位の直系卑属である子供2人の3人が相続人となります。
 
 もしこの父が再婚だった場合、前婚の配偶者は相続人にはなりません。
 しかし、前婚の配偶者との間に子供がいた場合、その子供も第一位の直系卑属に該当する為、相続人となります。

 法定相続分(※)は、養子も含めて前婚時の子供と、再婚後の子供の取り分に差はありません。以前は嫡出子か非嫡出子かで法定相続分に差がありましたが、民法が改正されたため、平成25年9月5日以降に開始した相続についてはこの差は無くなっています。
 なので、先ほどの例で前婚の配偶者との間に子供が1人いた場合、再婚の配偶者と、再婚後の子供2人、前婚の子供1人の4人が法定相続人となる、という事になります。

 ここでひとつ、子供たち一人当たりの法定相続分の取り分が少なくなってしまうので、トラブルになりそうだということがわかりましたね。

 ※法定相続分…民法で定められた財産の取り分のこと。法定相続人の財産の取り分のことを法定相続分と言います。法定相続分は、誰が法定相続人となるかによって異なりますが、先ほどの例だと、配偶者の法定相続分が1/2、残りの1/2を子供たちで等分することになります。
●事例1

養子縁組をしていなかった場合の相続

 さて、次は連れ子がいた場合です。
 先ほどの例で、再婚後の子供2人が母の連れ子で、父と養子縁組をしていなかった場合はどうなるでしょうか。
 答えは、「親子関係が無いので法定相続人とならない」です。
 再婚したからと言って、再婚後の連れ子との間に当然に親子関係ができるわけではありません。父の財産を連れ子に相続させてあげようと思った場合は、きちんと養子縁組をしておかなければなりません。
 
 再婚をする際は、相続のことまで考えないかもしれませんが、災害や不慮の事故などによっていつどうなるかはわかりません。自分が亡くなってからでは、養子縁組をすることもできません。ですので、再婚をする際には、相続をすることを踏まえて、どのような家族関係にするのかを考えておかなければなりません。
 養子縁組をしないことを選択した場合に、それでも連れ子に遺産を残したい場合は、遺言書を作成する、生命保険の受取人を連れ子にしておくなどの手続きなどをしておけば、少しは安心かもしれません。

●事例2

再婚時に子供がいた場合のトラブル事例

 前婚の際に子供がおり再婚した場合、相続でトラブルになる可能性は大いにあります。
 また、子供を連れて再婚をした場合にも、再婚した配偶者と子供との間にトラブルが発生する可能性もあります。
 具体例をみていきましょう。

 ・幼いころに離婚した父の再婚相手から、相続放棄を迫られた。
 ・再婚相手の父と養子縁組をしておらず、再婚後に産まれた兄弟だけが法定相続人となってしまった。
 ・再婚した配偶者と自分の連れ子の関係が悪く、遺産相続で揉めそうだ。
 ・再婚した配偶者が、前婚の配偶者との子供には遺産を渡したくないと言っている。
 ・数十年顔を合わせたことのない前婚の配偶者との子供が、遺産相続の際にかなりの遺産を要求してきた。
 ・前婚の配偶者との間に、知らない間に自分の子供が産まれていた。

など、様々なケースが考えられます。
子供がいる状態で再婚をする場合は、相続に関するトラブルも視野に入れて、対策を練っておく必要がありますね。

誰が相続人となるのかを把握しておく

 対策の1つとして、まず誰が相続人となるのかをきちんと把握しておきましょう。
 再婚云々に関わらず、相続の際には相続人を確定しておくことはとても大切なことです。それが再婚になればなおさらというわけです。
 前婚の配偶者との間に子供がいた場合、たとえ親権を相手に渡して離婚をしていたとしても、親子関係が無くなるわけではありません。
 また、男性で気を付けてほしいのが、離婚する際には子供がいなかったが、離婚後300日以内に前婚の配偶者に子供が産まれたという場合は、前婚の夫の子供であると推定されます(民法第772条)ので、自分の知らない間に子供が増えている可能性があります。
 これらも含めて、誰が相続人となるのか、知っておかなければならないというわけですね。

遺留分で揉める可能性もある

 法定相続人の第三位である兄弟姉妹以外の法定相続人には、民法で「遺留分」と呼ばれる遺産の取り分の保障があります。
 遺留分は、遺言によっても侵すことはできません。
 そのため、例えば遺言によって、再婚の配偶者とその間にできた子供にだけ遺産を残すようにしようとしても、前婚の配偶者との間の子供に「遺留分減殺請求」をされた場合は、その子供の遺留分の遺産は渡さなければなりません。

 遺留分をもらうには、遺留分減殺請求をしなければなりませんので、遺留分の権利者がその権利を放棄したり、行使しなかった場合には、遺言は有効となります。しかし、あくまでそれは期待にすぎませんので、遺言書を書く場合は遺留分も念頭に置いて作成するほうが良いでしょう。

遺言書の活用が効果的

 前婚の配偶者との間に子供がいる場合に再婚した場合は、遺言書を書いておくことが最も効果的です。
 遺言書を書いておけば、
  ・遺産相続に関することの決定
  ・財産処分に関することの決定
  ・遺言執行に関することの決定
 などができます。

●遺産相続に関することの決定

  遺言書が無い場合は、法定相続人が法定相続分を相続する、または遺産分割協議によって相続人全員が合意をすれば、自由に相続分を設定し相続することが可能です。
  しかし、子供のいる再婚家庭にはトラブルがつきものです。やはり遺言書を作成し、例えば前婚の配偶者との間の子供にいくら、再婚の配偶者とその間の子供にいくら…など、詳細に配分を決めておくことが無難でしょう。

 

●財産処分に関することの決定

  例えば持っている不動産を、全て長男に譲る、などと言った遺言も可能です。
  ただし、この場合も先述した遺留分を侵すことはできませんので、うまく配分できるよう遺言書を書く方が良いでしょう。
  
 

●遺言執行に関することの決定

  不動産や通帳の名義変更など、相続財産の名義変更が必要な場合に、誰に手続きをさせるかを決めることができます。その決まった者を「遺言執行者」と言います。遺言執行者は法定相続人でも、第三者でも構いません。

●事例3

両親が亡くなりましたが、家族構成が複雑です。相続権はどうなるのでしょうか?

父が亡くなり、1年経ったあと母が続けて亡くなりました。実は、私は亡くなった父と、45年前に亡くなった母との間の子供です。父と母との間には、姉と妹である私の2人の子供がいました。
ですから、現在の母は、継母となります。継母には子供はおらず、父と再婚しました。父の両親や兄妹は全員亡くなっています。継母の両親も既に亡くなっており、兄妹は健在の叔母さんを除いて、他の兄妹は全員亡くなっています。

また私は、継母と養子縁組をしたのですが、姉は遠方に住んでいたこともあり、養子縁組をしないまま5年前に亡くなりました。しかし姉には、子供が1人いました。私から見れば甥っ子にあたります。
私は、養子縁組をしていたため相続権があるような気がするのですが、甥っ子には相続する権利はないのでしょうか。
一体誰が、どれくらい相続する権利をもっているのか、分からなくなってしまいました。(※実母の相続は完了しています。)

 

1.誰が相続人となるのか?

法律では、相続が発生した場合に、争いが起きないように遺産を相続できる人を定めています。その人を『法定相続人』と言います。また、法定相続人の相続割合についても規定しています。

まず、配偶者がいれば常に相続人となります。(民法890条)
次に、子供がいれば、被相続人の配偶者と第1順位である子またはその代襲相続人(孫、ひ孫)が相続人となります。(民法887条)
子供や、代襲相続人もいなければ、被相続人と配偶者と第2順位である直系尊属(父母、祖父母)が相続人となります。(民法889条)

子供に直系尊属もいない場合、被相続人の配偶者と第3順位である兄弟姉妹、相続開始時に兄弟姉妹が先に亡くなっていた場合は、その代襲相続人(甥、姪)が相続人になりますが、子供の場合とは違い再代襲は認められず、甥、姪の一代限りです。(民法889条)

 

2.相続の割合(法定相続分)はどうなるの?

相続人が配偶者のみの場合、配偶者が100%。
相続人が配偶者と子供の場合、配偶者が2分の1、子供が2分の1(子が複数いる場合は、均等に分割)
相続人が配偶者と父母の場合、配偶者が3分の2、父母が3分の1(両親とも健在の場合は、均等に分割)
相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1(複数の場合は、均等に分割)

(例)配偶者と父母の相続の場合、配偶者が3分の2、父と母は3分の1を2人で分けるため、それぞれ6分の1ずつの相続分となります。

(民法900条)

 

3.結局この事例では、どうなるのでしょうか?

相続とは、人が亡くなると同時に発生します。(民法882条)
ですから、上記に習って順番に考えていきましょう。

はじめに亡くなったのは父です。
この時点での相続人は、継母と甥(亡姉の子)と相談者の3人が法定相続人となり、継母が2分の1、甥と相談者が各4分の1が法定相続の割合となります。
次に継母が亡くなりましたが、配偶者である父は既に死亡しており、次に子供が相続人となりますが、継母と養子縁組を相談者はしていますが、亡姉は養子縁組をしていませんでした。
よって、継母の子供となるのは、養子の相談者のみとなります。ついては、継母の相続についての法定相続の割合は、相談者が100%となります。ですから、継母の相続については、甥は法定相続人となりません。

まとめ

 再婚にはいくつかメリットがあるようですが、いざ相続となった場合にはトラブルも多く、特に再婚を繰り返している方で子供の多い方などは問題が非常に起こりやすいのではないでしょうか。
 トラブルを少しでも避けるために、相続人の確定や遺言書の作成はしっかりとしておきましょう!

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
遺産相続無料相談センターでは、士業(弁護士・税理士・司法書士・行政書士・不動産鑑定士)・相続コンサルタントとチームを組んだトータルサポート制を設けています。