相続税の申告って?どういうお金?

誰かが亡くなったとき、亡くなった方の遺産を相続する際に発生する、相続税。金額の多い・少ないにかかわらず、かかってくる税金です。所得税や消費税など日々の暮らしで耳慣れている税金とは違って一般的には人生のうちに数回程度しか関わらないものなので、ほとんど気にしていない人が多く、他の税金よりも軽んじられる傾向が否めません。

しかし、近年の税制改正によって相続税を支払わなければならない人が増大しました。いざとなって困らないためには、早くからきちんと知識を身につけて対策しておきたいものです。
相続税の金額は、遺産総額から葬式費用などを引いた金額から、基礎控除額を引いた金額となります。基礎控除額の求め方は以下の通りです。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

 

・基礎控除額
すべての納税者を対象に無条件で差し引く控除額のこと。

課税価格が基礎控除額より多い場合、申告の必要が出てきます。これまでは、この基礎控除額がもっと多かったのですが、近年、減額されてしまいました。そのため、相続税を納税しなければならない方が多くなってきたのです。
それでは、相続税はそもそも何のために存在しているのでしょうか。一つには、所得税を補完する役割があります。所得税は、特定の家系に富が集中する傾向を作る可能性があります。これによって生じてしまう格差を、相続税を設けることで是正することができるのです。

今後、相続税は基礎控除額がさらに減額される可能性もあり、多くの人が無関係ではいられない問題となりそうです。今から知識を身につけておくことをおすすめします。

自己申告で行うにも限度がある

相続税の申告書作成は、税理士に依頼してしまえば楽ですが、ややもすると依頼費用が相続税額よりも多くなることもあり得ます。そのため、自分一人で申告(自己申告)をやってみようと考える人も多いようです。
しかし、相続税の申告書は、20枚以上にものぼります。そして、添付する必要がある書類も多いというのが特徴です。適切に特例を用いることで、税額を減らしたり無くしたりすることができるので、申告の手続きでは是非とも失敗しないようにしたいものですが、自己申告する場合は難しい面もあるのが現状です。

もし、自己申告を選ぶなら、ネットで調査して情報を集めたり、税務署に電話して質問したり、税務署の担当者へ直接会って相談する機会を作ったりするのをおすすめします。とは言え、やみくもに質問を投げかけても的を射た回答が得られない場合があるので、できる限り自分で相続税についての知識を習得しておく必要があるでしょう。

相続税申告を自分で行う方法

相続税の申告を自分で行う場合、どのような方法をとればいいでしょうか。大まかな流れをご説明します。

1. 相続税申告書の用紙を用意

確定申告はインターネット上で行えますが、相続税は税務署に出向く必要があります。まずは、申告のための記入用紙を税務署でもらってきましょう。国税庁のホームページでは、相続税の申告書等の様式一覧をPDFで紹介していますので、そちらにひと通り目を通しておくとよいでしょう。

2. 法定相続人の明確化

上述した通り、相続税を確定させるためには、まず基礎控除額を算出することになります。このとき、重要なのが法定相続人の人数です。これによって、相続税が大きく変動しますので、はじめに誰が法定相続人となり得るのかを明確にしましょう。当然のことですが、法定相続人が多ければ多いほど、控除額は大きくなります。

3. 遺産評価のための資料を収集

土地などの不動産や株など、遺産の種類は多岐に渡ります。特に、不動産の価値を適切に評価するのは難しいのですが、こうした遺産を評価するための証明書などを一つ一つ集めていく作業が必要です。

4. 申告書への記入

申告書は、第1表から15表まであり、記入箇所は細かく指定されているので、記入するだけでもかなり時間がかかります。あらかじめ、記入のための時間を多めに割いておくことをおすすめします。

税額ゼロでも書類の申請は必要!

基礎控除額を差し引いても課税分が残る場合は、相続税を納めなくてはなりません。しかし、相続税を算出する上で特例を利用することで、税額を減らすことも可能です。これによって税額がゼロになる場合もあり得るのですが、そんなケースにおいても相続税の申告は必須です。
特例を適切に用いて20枚を超える申告書を作成するのは大変な作業となります。例えば、故人の配偶者や子どもなど同居していた者が土地を相続する場合、「小規模宅地等の特例」が使えます。しかし、この特例を使うには、土地の評価額が大きく関わってくるので専門家の意見が必要です。
このように、相続税がゼロになると言っても申告自体が不要とはなりませんので注意しましょう。

相続税申告を自分でおこなうことのメリット

自分で相続税を申告するのは大変なことです。それでもメリットがあるとすれば、やはり税理士報酬が不要ということでしょう。相続税申告にはそれなりの高額な税理士報酬が必要になります。これから相続税の支払い義務が生じるかもしれないわけですから、税理士報酬ぐらいは節約しておきたいものです。
税理士報酬は、遺産総額の0.5%〜1.0%ほどが基準と考えられていますので参考にしてください。

遺産総額が1億円の場合…税理士報酬は50万〜100万円

この金額を節約できるとなれば、やはり自分で申告することのメリットと言えるでしょう。
また、自分で申告すると、これから自分が相続する資産がどのようなものかを自ずと精査することになりますので頭がすっきりと整理されるという面はあります。税理士に依頼して、言われるままに納税する場合とでは、気持ちの上で違いがあるでしょう。

デメリット① 税務調査が入る可能性がある

自分で申告する場合、資料集めが大変だったり時間がかかったりというデメリットもありますが、それ以外にも留意しておきたいことがあります。
それは、税務調査が入る可能性があるということです。税理士に依頼しておけば、専門家が携わっているということで調査が入ることは稀ですし、何らかの疑問点が生じた場合もひとまずは税理士が対応するので相続人は関与しなくても済みます。自己申告の場合はそうもいかず、国税庁からの質問を受けたり、修正を行ったりしなくてはならない可能性があるのです。

デメリット② 相続税を過大に支払ってしまう可能性がある

もう一つのデメリットは、不必要な相続税を納めてしまうリスクがあるということです。特に遺産の一部に不動産がある場合、土地の価格評価は自分では難しいので間違いが起きやすく、払い過ぎが生じることもあり得ます。土地評価額が高いケースだと、ちょっとしたミスで多額の相続税を支払い過ぎてしまうということになります。土地の評価はかなり緻密で専門知識が必要なので、自分で行うのは困難を極めるのです。

デメリット②は回避できる⁉相続税還付は平均1,200万円

相続税申告は、相続があることを知った日の翌日から起算して、10か月以内に行わないといけません。各資料を集める時間を考えれば、時間的な余裕がありません。そこで、あまり知識がないままに申告してしまって、後から誤りに気がつき修正したい場合には、5年10か月以内であれば、相続税の還付請求ができるシステムになっています。
国税庁のデータによると、還付申告1件あたりの相続税還付は平均1,200万円ほどにもなるとのこと。それだけ相続税評価が難しいということの証とも言えるでしょう。

まとめ

相続税の申告は、やってみれば自分でもできないことはありません。しかし、身近な人を亡くしたばかりで精神的なストレスを抱えた時期に、神経を酷使する遺産整理を行うのは思いのほか大変な作業となるでしょう。また、実際に膨大な時間を要してしまいます。確定申告などとは違って、一度自己申告しておけばまた来年も役立つというものでもありません。さらに、申告漏れや、特例を適切に使えず損害が生じることもあり得ます。少しでも心配な場合は、相続税に詳しい税理士に依頼するのが理想的だと言えるでしょう。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。