一般的に、相続の際の遺産分割の争いを「争続」と指す場合があります。
では、実際に、争続はどのくらい起きているのでしょうか?
最高裁判所の「平成24年度司法統計」によれば、相続について家庭裁判所へ相談した件数は、平成14年は90629件、平成24年は174494件と、約1.9倍に この10年間で増えています。

また、遺産分割事件の家事調停・審判の件数も、平成14年は11223件、平成24年は15286件と、約1.4倍にこの10年間で増えています。
約1万件の調停事件と約2000件の審判事件が毎年あり、約100万件の相続が毎年発生しているため、全体の1%が争続になっていることになります。
一方、相続税が課税される件数は、相続が発生した件数の約4%~5%の約4万件~5万件です。
そのため、相続税が課税される件数の中で、20%以上が争続になっています。
このように相続が発生すると、人が変わってしまうようです。

遺産相続の紛争理由

争続になるほとんどの要因は、お金のことです。
お金というのは、非常に恐ろしく、人を変える場合もあります。

全ての相続財産がお金の場合は、上手く分割することができることが多いので、それほど争続になりません。
争続になるのは、相続財産に不動産が含まれているケースが実際には最も多いと言われています。
争続が起きやすいのは、特に不動産のみが相続財産であり、居住用の家がこの不動産で、この家に相続人だけが住んでいるようなケースです。
このような場合は、不動産を売ってお金に換える不動産現金化がいいでしょう。

なお、争続を避けるために、このような不動産を複数の人が共有する共有不動産にすることも考えられます。
しかし、共有不動産の場合は、売る際に共有者の了解を得る必要があるというデメリットがあります。

 

紛争において相続時財産額はいくら位?

では、どのくらいの財産額で争続になっているのでしょうか?
ここでは、家庭裁判所で扱うような争続になる財産額の司法統計のデータについてご紹介しましょう。
財産額の比率としては、1000万円以下が31%、1000万円~5000万円が44%、5000万円~1億円が13%などとなっています。
このように、1000万円以下の財産額の比率が家庭裁判所が扱っているうちの3割超にもなっており、5000万円以下まででは75%になります.

つまり、家庭裁判所で扱うくらいの争続は、4件中3件が5000万円以下の財産額であるということが分かります。
5000万円と言えば、預貯金と自宅をトータルするとすぐになるのではないでしょうか。
財産額が多くない場合ほど争続になりやすい、ということが現実と言えるでしょう。
財産額がわずか数百万円でも争続になっているという場合もあるそうです。

 

遺産相続において紛争の防止策とは?

では、争続を防止するためにはどうすればいいのでしょうか?
ここでは、争続を防止するための対策方法についてご紹介しましょう。

・遺言書を作成しておく

争続を避けるためには、遺言書を作成しておくことが大切です。
争続はお金持ちだけのことではなく、マイホームを自分が持っている場合はトラブルになる恐れがあります。
そのため、それほど多く相続財産が無くても、マイホームを持っている場合は遺言書を遺しておきましょう。
遺言書については、ネットなどでいろいろ紹介されているため確認してみましょう。

なお、争続を避けるために遺言書を作成する場合は、遺留分侵害に注意しましょう。
遺留分侵害というのは、遺言書によって遺留分の権利を侵害することです。
遺言書を作成する場合でも、遺留分の権利を侵害しないようにすることが必要です。
法定相続分の2分の1が、遺留分の権利になります。
そのため、遺言書を作成する場合は、なんらかの形で法定相続分の2分の1の財産を相続させる必要があるため注意しましょう。

・生命保険を利用する

生命保険を、代償分割のお金を準備するために利用する方法があります。
居住用の家だけが相続財産の場合で、兄・弟の2人の相続人がいたと仮定します。
居住用の家が兄は欲しいと言って、お金が弟は欲しいと言いました。
相続財産が不動産の家だけの場合は、兄弟間で争続になってしまいます。
このような場合に、争続を防止するために分割方法として代償分割というものがあります。

代償分割というのは?

全ての不動産を兄が相続する代わりに、兄の財産を弟に渡す方法です。
一般的に、現金が渡す財産になります。
生命保険を利用するのが、この現金を準備するためにはおすすめです。
生命保険に入って不動産が欲しいと言う兄を受取人にしておけば、現金がこの保険金で準備でき、お金を弟に払うことによって、お金が欲しい弟も満足するでしょう。

なお、このような方法の詳しいことについては、ネットなどでも紹介されているため確認してみましょう。
まずは、生命保険を代償分割するために利用すれば、争続を防止することができる場合があることを把握しておきましょう。
ここでご紹介したように、不動産をめぐる相続の場合はよく争続になります。

もし、不動産をめぐる相続で争続になった場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。