配偶者(はいぐうしゃ)は、婚姻関係にある相手方という事で、結婚している相手(夫・妻)を指します。
相続において税金を納める金額を下げる対策として配偶者がおり、一定の条件を満たすと控除を受けることができる、つまり、税金が一部免除されるという制度を、配偶者控除・配偶者特別控除と指します。

配偶者控除とは、相続税を計算するにあたって相続する分の額から1億6,000万円を差し引けるというものです。
しかし、控除の金額が多い分、落とし穴もあります。
配偶者控除の失敗例を6つまとめ、これから来る相続において以下の様な失敗例と同じ事が無いよう「配偶者控除」の制度を正しく活用する事をお勧めいたします。

配偶者控除を使用する中で重要なポイント

配偶者が相続した財産は、最後には自身の子供に相続されることになりますから、長い目で見てその時点で損をしてしまう落とし穴があるからです。
配偶者にどうしても家屋敷等の特定の大きな財産を相続させたい、という特別の事情がある場合に限られるものかと思います。

なぜ?長い目で見ると損をするのか?

基礎控除がポイントです、【3,000万円+600万円×法定相続人数】です。
自分が亡くなった場合の相続を【一次相続と指し、その後に配偶者が亡くなった場合の相続を【二次相続】と指します。

一次相続の際に配偶者控除の制度で相続税が減税し、遺産総額の1億6千万円分のまで目一杯まで相続分を大きく、二次相続で、結局その寄せた分の遺産総額分の相続税がかかってくることになり、多額の相続税を支払うハメになってしまうというリスクがあります。

■具体例

一次相続時に、相続税を0円にする為に、1億6千万円をすべて配偶者に寄せた場合
一次相続時

遺産総額:1億6,000万円
相続人3名:配偶者・子供2名
一次基礎控除適応額:3,000万円+600万円×法定相続人数3名=4,800万円

★相続税を0円にする為に、1億6千万円をすべて配偶者に寄せた場合
配偶者も「配偶者控除」によって相続税が0円になり、子供2名にそもそも相続分がなく、せっかく制度として利用できる4,800万円の基礎控除が適応できなくなります。

二次相続時

遺産総額:1億6,000万円
相続人2名:子供2名
二次基礎控除適応額:3,000万円+600万円×法定相続人数2名=4,200万円

★4,200万円の基礎控除の制度を適応できますが、【1億6,000万円―4,200万円=1億1千800万円】の金額が乗っかってきてしまいます。


一次相続の際に配偶者の相続分を仮に8,000万円にした際
一次相続時

遺産総額:1億6,000万円
相続人3名:配偶者・子供2名
一次基礎控除適応額:3,000万円+600万円×法定相続人数3名=4,800万円

★【1億6,000万円―4,800万円=1億1千200万円】
【配偶者控除】で相続税が掛からず、4,800万円の【基礎控除の制度】の基礎控除の両方が適応されます。

二次相続時

遺産総額:8,000万円
相続人2名:子供2名
二次基礎控除適応額:3,000万円+600万円×法定相続人数2名=4,200万円

基礎控除の制度の第一次相続(4,800万円)、第二次相続(4,200万円)を通じて、合計9,000万円の基礎控除の制度が適応できます。

配偶者の相続税の負担を軽くできるというメリットがある配偶者控除ですが、反対に、配偶者を相続する人の相続税の負担金額が多くなってしまう可能性がございます。
節税に単純に基礎控除枠を安易に活用するのはおすすめできません。

 

配偶者控除の具体例を6つの例

配偶者控除の制度を正しく活用するためにお役立てください。

●失敗例1:生前贈与での節税に失敗

男性は、自宅は売却できないが相続税を納めるのは嫌ということで、節税対策のために亡くなる前に預金のみでも家族に贈与しようと思いました。
男性は、節税対策について調査した結果、贈与契約書を作っておくと、贈与税が年間に110万円以内であれば課税されないことを知りました。
その後、契約書を毎年作って、家族の口座に110万円を振替するという節税対策をしました。
この失敗例は、贈与契約書を作って、複数数特定の人に贈与すると一括贈与とみなされるものです。
贈与税の場合は、税率が相続税に比較して高いため、びっくりするような税額になります。

 

●失敗例2:妻にすべて相続し節税

東京に住んでいる男性の法定相続人は、1人の息子と妻でした。
男性の財産としては、自宅と株券、現預金など、1億円の財産評価額で、自宅の不動産がこのほとんどでした。
相続税が自分が亡くなった場合にかかるか不安になって調査してみた結果、やはり相続税がかかることが分かりました。

しかし、この際、1億6000万円の配偶者控除まで課税されないということが分かりました。
そのため、息子にすぐに、自分がもし亡くなった場合は、妻へ全て相続すると課税されないためそうして欲しいと言って、息子も納得しました。
このケースの場合は、全て配偶者が相続すると確かに課税されません。
しかし、妻がその後亡くなった場合は、子供へ全ての財産が相続されます。
子供がもし1人の場合は、控除額が少ないので、相続税を多額に払うようになります。
不動産の比率が多ければ、払える現金が少ないので、相続税を払うことはより問題が深刻になるでしょう。

 

●失敗例3:節税のためのアパート経営

男性は、自宅の他に土地を首都圏に持っていました。
賃貸アパートを借金して建築すると、相続税評価額が低下するため節税対策になり、しかも賃料収入が入るということを聞いてやってみたいと思いました。
打ち合わせを建築業者や金融機関と行いながら、アパートを建てることを進めました。
男性が考えているように上手くいくと、非常に節税対策ができるでしょう。

しかし、慎重にアパート経営は行いましょう。
アパート経営は、賃料や立地、入居率などについて相談を信頼できるプロと行う必要があります。
計画したように入居する人がいれば、借金も返すことができ相続対策にもなります。

また、入居する人は計画したように必ずしも続くとは限らず、期限があることもあります。
アパートが同じように近くに建って、入居する人が非常に少なくなる恐れもあります。
そうすると、借金を返すことが非常に厳しくなってきます。
アパート経営を家族が引き継いだ場合、非常に負担になることもあり得ます。
アパートのような不動産は、簡単に売ることもできません。
事前にアパート経営についてのコツを家族に教えることはもちろんですが、アパートを将来的に売ることも考えておくべきでしょう。

 

●失敗例4:妻が自分の財産を確保していない

妻は、夫が亡くなった後、大切に育てた長男の跡取りに大半の夫の財産を相続させました。
そのため、妻は全く相続しないで、わずかの不動産を2人の娘に相続させたのみでした。

しかし、一緒に住んでいた長男の嫁と仲がその後悪くなって、妻は家を出て欲しいと長男夫婦から言われました。
2人の娘は、亡くなった父親の遺産分割協議において母親から冷たく扱われたため、老後の母親の介護をすることを拒みました。
遺族年金しか妻はありませんでした。

 

●失敗例5:ビルを実需がない場所に建てた

男性は、バブル期に都内の住宅街で、建設会社からすすめられて相続対策として6階建てのビルを借金して建てました。
ビルが完成して入居するテナントを募り始め、すぐに1階と2階が埋まりましたが、残りの4つの階が埋まりませんでした。
2年間は、家賃保証していたため安心でした。

しかし、その2年後も4つの階は埋まりませんでした。
家賃保証も終わって、銀行からの数億円の融資を返すことができなくなって、最終的に競売になりました。

 

●失敗例6:自分のアパートの周りにだんだんアパートが建築された

男性は、バブル期に、別の敷地に自宅を担保にして借金をして2階建てのマンションを建築しました。
アパートとしては大きめで、合計24部屋でした。
アパート経営が上手くいくようになったため、このアパートを担保にして別のアパートを建築する、というようなことを繰り返すことによって4棟のアパートを建築しました。
借金は3億円をオーバーしましたが、賃料収入で初めは十分にやり繰りすることができました。
そのため、男性も家族も全く不安はありませんでした。

しかし、時間が経ってくるにつれて、内装も建物も老朽化してきました。
さらに、男性のアパート経営で建設会社は気を良くして、男性の建物の周りの土地の持ち主に話をした結果、次々とアパートが建築されました。
その結果、男性のアパートに入居する人がだんだんと少なくなってきました。

 

配偶者控除のまとめ

配偶者控除の認識として「配偶者の相続する遺産が1億6,000万円までなら相続税がかからない制度」という認識をされることが多いです。
しかし、この説明は、ともすれば誤解を招いてしまう表現で実際には、落とし穴があります。
失敗例と同じ事が無いよう「配偶者控除」の制度を正しく活用する事をお勧めいたします。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。