相続と生活保護受給者の関係は?
世の中では、相続人に被保護者(生活保護受給者)はなれるか、というようなことが言われているそうです。
しかし、相続人は、民法で決められた条件に当てはまる人で、被保護者とは関係が全くありません。
そのため、相続人には誰でもなり得ますが、相続人が被保護者の場合は注意すべきことがあります。
そもそも生活保護とは
1.生活保護の前提条件
基本的に、自力で国民は家族や自分の生計を賄うことですが、生活保護法は努力をいろいろしても足りない場合に国がサポートしてくれるものです。
生活保護受給の具体的な条件としては、次のような対策をしても、生計費の最低限のものにならないと判断されることです。
・最低生活費に全員の世帯収入をトータルしても満たない ・持っている資産は売ってお金に換えた ・仕事ができる人は仕事をして収入を得た ・援助を扶養義務者から受けた ・扶助を福祉制度や社会保険から受けた
2.生活保護による扶助の種類
生活保護法の扶助としては、生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、出産扶助、介護扶助、生業扶助、葬祭扶助の8種類が決められています。
被保護者の遺産相続に関わる留意点
1.被保護者の権利と義務
生活保護法においては、被保護者に対して、生活上の義務、指示等に従う義務、費用返還の義務、届出の義務の4つの義務が決められています。
遺産相続の場合には、影響が費用返還の義務、届出の義務の場合にあります。
相続によって不動産や現金などを被保護者が譲り受けると、変動が収入などに生じるようになるので届出の義務があります。
そのため、生活保護の現在の受給内容に対して、影響がどのくらい出てくるかがポイントになります。
2.遺言と遺産分割協議
遺言によって被保護者が財産を譲り受けるようになった場合に、財産の譲り受けを拒むためには相続放棄という方法があります。
相続放棄すると、全ての権利義務から相続人として逃れられます。
別の方法は、遺産分割協議という相続人同士で遺言とは違った内容の話し合いを行うことです。
方法としては、遺産分割協議において、被保護者の相続人自身の相続分を少なくするなどもあり得ます。
相続財産の評価
財産を被保護者の相続人が譲り受けるとした場合に、財産評価がトラブルになることがあります。
生活保護を受ける場合は、生活費に充てるために持っている資産を売ることが要求されます。
しかし、いかに財産評価額が相続税法上高いということでも、生活費に充てるためには最終的に売ってお金に換える必要があります。
では、売るのが困難であるということで、相続放棄するとどうでしょうか?
この場合は、相続人ではありませんが、財産をしばらくの間管理する責任があります。
なお、相続財産によっては、売る必要がない場合もあります。
このように、相続と生活保護に関係する内容は、入り組んで複雑になっているため、詳細については相続に強い弁護士などに相談しましょう。
遺産相続における対応方法
1.相続財産を把握
相続人に被保護者がなった場合には、まず正確に相続財産の内容を掴むことが必要です。
また、現物資産の不動産などが多ければ、売ることに関しても考える必要があります。
相続する財産を調べたり、評価したり、売るかどうかを判断したりすることは、生活保護についてのその後の手続きに影響を及ぼすので、慎重に対応しましょう。
2.ケースワーカーと相談
相続人になった場合は、先にご紹介したような相続する財産を調べた状況を考慮して、生活に困っている人の相談をしてくれるケースワーカーにまず相談しましょう。
これは、「届出の義務」という被保護者の義務になっているものに当てはまると考えられます。
届出をしても、処分として受給額がすぐに少なくなったり、停まったりするなどがされるということではありません。
受給額を少なくするなどの処分は、不利益が被保護者に対してある処分になるので、行政側としては手続きを慎重に進めます。
生活保護受給者は相続できるのか?のまとめ
世の中では、相続人に被保護者(生活保護受給者)はなれるか、というようなことが言われているそうですが、相続人は、民法で決められた条件に当てはまる人で、被保護者とは関係が全くありません。
基本的に、自力で国民は家族や自分の生計を賄うことですが、生活保護法は、努力をいろいろしても足りない場合に、国がサポートしてくれるものです。
生活保護法の扶助としては、生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、出産扶助、介護扶助、生業扶助、葬祭扶助の8種類が決まっています。
相続によって不動産や現金などを被保護者が譲り受けると、変動が収入などに生じるようになるので届出の義務があります。
遺言によって被保護者が財産を譲り受けるようになった場合に、財産の譲り受けを拒むためには相続放棄という方法があります。
遺産を相続する際には、相続する財産を掴んで、ケースワーカと相談しましょう。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
相続問題は相続人によって異なります。相続人は親族であり、その後も長い時間をかけて付き合う可能性が高い相手。だからこそ、円滑に、そしてお互いが納得した遺産相続手続きを進めたいですよね。