毎年2月に近くなったら「確定申告」という言葉をよく耳にしますね。では、「準確定申告」というがあるのをご存知でしょうか?
聞きなれない「準確定申告」ですが、これは亡くなった人に代わって、相続人(財産を継承する人)が行う確定申告の事です。普通の確定申告とどう違うのか、準確定申告は全員が行わなければならないものなのか、また、準確定申告を行わなければならない場合はどのような手続きをしたらよいのか…などなど、詳しくみていきましょう!
準確定申告とは何か
まず、準確定申告とは、年の途中で亡くなった方(亡くなった方のことを被相続人と言います)の所得金額と税額を、相続人が税務署に申告、納税する手続きの事です。
通常の確定申告は、1月1日~12月31日までの一年間の所得金額を計算し、それに対する税金を算出して、翌年の2月16日~3月15日までの間に申告と納税をすることとなっています。
しかし、被相続人はこの手続きを行うことができませんので、代わりに相続人がこの手続きを行うというわけです。
準確定申告は、相続人または包括受遺者(※)が行わなければいけません。また、法人も包括受遺者になることができます。法人が包括受遺者になった場合、法人でも申告者となります。
相続人が複数人いる場合は、準確定申告書を連署にして、その申告書と共に「死亡した者の○年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告付表」に相続人全員の署名捺印、住所、相続分、マイナンバー等を記入し、税務署に提出します。
連署することが難しい場合には、各相続人が他の相続人の名前を付記した上で、それぞれが提出することも可能ですが、申告内容については相続人全員に通知することが必要となります。
※遺贈とは、被相続人が遺言による一方的な意思に基づいて行う財産の処理方法のことです。包括遺贈は、遺言により財産の処分対象を特定せず、割合で遺贈することで、例えば「Aさんに財産の半分を遺贈する」といった指定の遺言による財産処理が包括遺贈に当たります。その包括遺贈を受けたものが包括受遺者です。
準確定申告の手順と必要書類
●準確定申告の手順
準確定申告は、確定申告と同じ書式で行います。
この場合、確定申告書の表題に「準」と書き足して、「準確定申告書」にします。
また、申告者の氏名欄には、被相続人の氏名と共に「相続人代表者名」を記名します。
確定申告書は二種類あり、
・申告書A(給与所得者や年金受給者など)
・申告書B(個人事業所得や不動産所得がある場合など)
のいずれか、目的に応じたものを使用します。
●準確定申告の必要書類
準確定申告には、次のような書類が必要です。
・準確定申告書
・死亡した者の○年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告付表(各相続人の住所、氏名、電話番号、生年月日、被相続人との続柄、相続分、相続財産の価格、各相続人の納付又は還付税額等を記載したもの)
・被相続人の給与や年金の源泉徴収票
・(医療費控除を申請する場合)被相続人の医療費の領収書
・(各種保険料の控除を申請する場合)生命保険・社会保険などの控除証明書
・その他通常の確定申告と同様の添付書類
その他にも、次のようなもの必要となります。
・印鑑(認印で良い)
・マイナンバー(相続人全員と包括受遺者のもの。提出の際には、記載したマイナンバーに対する本人確認書類の提示又は写しの添付が必要となる)
・(事業所得がある場合)青色申告決算書や収支内訳書など
準確定申告にかかる費用がある?
●(状況によって)所得税
準確定申告を行うことにより、所得など状況により、所得税を納税しなければならない場合と、還付金を受け取ることができる場合があります。
相続人が複数人いる場合は、所得税の納税も還付金も相続人で分割することになります。その割合は、準確定申告書に記入した割合での納税・還付となります。
所得税を納税しなければならない場合は、相続人が相続財産の中から所得税を支払い、還付金がある場合はその還付金は相続財産となります。
準確定申告で所得税の納税をしなければならない場合、納税は現金で行わなければなりません。ですので、準確定申告の申告期限(相続を知った日の翌日から4ヶ月以内)までに、現金を用意しておく必要があります。
もしも、故人の預貯金が使えなかった場合や、不動産の売却をする予定だったが売却できておらず現金に換えられていないなどといった場合には、相続人が現金を準備する必要があります。
相続する財産が不動産など、すぐに現金化できないものが多い場合は注意が必要ということですね。あらかじめどのようなものが相続財産であるのか確認しておいた方が良いでしょう。
●延滞金
もしも、準確定申告の申告期限を過ぎてしまった場合は、無申告加算税や延滞税を支払わなければなりません。
・無申告加算税…
確定申告をしていないことを税務署に指摘された場合、無申告加算税が課されます。
その金額は、原則として納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円をえる部分は20%をかけて計算した金額となります(ただし、平成28年度分以後については、それぞれ5%ずつ低くなります)。
なお、税務署に指摘される前に自ら期限後申告をした場合には、無申告加算税が5%をかけた税額に軽減されます。また、期限後申告であっても、要件を満たせば無申告加算税が課されない場合もあります。
・延滞税…納付すべき税額に対して、期限から遅れた日数に応じて
・最初の2ヶ月…年7.3%
・2か月を超えた場合…年14.6%
の延滞税が発生します。申告書を期限内に提出していても、納税が期限内に完了していなかった場合は、延滞税を納めることになります。申告期限を過ぎてしまった場合は1日でも早く納税するようにしましょう。
●税理士に依頼する場合はその費用
確定申告は複雑ですので、税理士さんに依頼する方もいらっしゃるかと思います。
税理士さんに依頼する場合は、依頼した先によりますが、調べた結果大体5万円前後の報酬を支払うことになるようです。
複雑とはいえ、給与所得や年金の所得のみであればそこまで難しくありませんので、例えば不動産収入などが無い場合でしたらご自分で申請してみても良いかもしれません。
前年の確定申告ができていない場合
準確定申告の申告・納税の期限は、何度か書いていますが、相続人が相続を知った日の翌日から4ヶ月以内です。
そして、確定申告の申告・納税期限は翌年の2月16日~3月15日までの間です。
もしも、被相続人が翌年の1月1日から3月15日までの間に亡くなっていて、前年の確定申告が行われていなかった場合は、前年の確定申告もしなければなりません。この期間中に被相続人の方が亡くなった場合は、確定申告が行われていたかどうか、確認をしておきましょう。
準確定申告は全員がするわけではない
●準確定申告が必要な方
ちなみに準確定申告は、全員が全員しなければいけないものではありません。
被相続人が次の条件に該当する方は、準確定申告をしなければならない方ということになります。
・自営業者や個人事業主の方
・給与所得が2,000万円を超えている方
・2か所以上から給与を受け取っていた方
・1年の間に退職していた方
・年金の受給額が400万円を超えていた方
・不動産所得があった方
・不動産を売却した方
・生命保険や損害保険などの、一時金や満期金を受け取った方
などです。
●準確定申告が不要な方
また、次に該当する場合は、準確定申告は不要です。
・被相続人が会社員、アルバイトなどの給与所得者だった場合
・被相続人が年金受給者で、受給額が400万円以下だった場合
・被相続人の年金以外の所得が20万円以下だった場合
・相続人が相続放棄をした場合
ちなみに、次の条件に該当する方は、準確定申告をすれば税金が戻ってくる可能性があります。
・高額の医療費を支払っていた方
・配偶者控除や保険料控除など各種控除を受ける方
・給与・年金による収入のみで源泉徴収が行われている方
必要に応じて準確定申告を行いましょう。
まとめ
被相続人が事業を行っていた場合や、高額の年金を受給していた場合など、条件を満たしている方は、準確定申告を行わなければならない可能性が大きいようですね。
対象の相続人の方は、準確定申告を忘れずに行って、延滞金などを課税されないよう注意してください。また、お忙しくて時間が無い…などという場合には、税理士さんなどに依頼をすることをおすすめします。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
相続には様々な形があり、手続きや申請方法もケースによって異なります。専門知識が無い方は申請書の不備等で無駄な費用が掛かってしまう可能性もありますのでしっかりと相談することをおすすめします。