※こちらの記事の内容は法改正により一部変更された内容が記載されている点があります。
修正された内容はコチラ「相続法の改正で、変更されたポイント」をご覧ください。

不動産の登記が亡くなった父親名義のままになっています。固定資産税は母が支払っていますが、このまま登記をしなくても大丈夫ですか。

不動産のように登記制度がある財産は、「実際の所有者」と「登記簿上の所有者」は同じであることが普通ですが、相続が発生しても何ら手続きせずにそのままになっていると、不動産の名義が被相続人のままになっている、という例がよく見受けられます。これは、相続に伴う所有権移転登記をしていないためです。

たしかに、その土地や建物を自ら所有し、そこに住んでいるかぎりは、名義についてはあまり気にならないかもしれません。そうすると、相続が発生したからといって、費用と手間をかけて、わざわざ所有権移転登記などしなくてもよいのです。ただし、そのままですと「これは私が相続した不動産です。」という主張はできませんし、また、その不動産を売却したり、担保に入れたりという処分はできません。
さらに、相続登記をしないまま、その人が死亡し、次代への相続が発生すると、権利関係の整理が面倒なことになってしまう恐れがあります。

■相続登記の種類

①遺産分割協議が成立するまでは相続人全員の共有の登記をしておき、分割後に、その不動産を相続した者の名義に登記をする。
②遺産分割協議が成立した後、その不動産を相続した者の名義に登記する。

相続があっても、すぐに遺産分割ができるわけではありません。その間の権利をきちんと保全しておくためには、①の方法が望ましいのですが、手続き的な理由から、②の方法による例が多いようです。長期にわたって遺産分割ができない状況でなければ、②の方法でも問題はないと考えられます。

■相続登記のやり方

登記申請書の書き方の前に相続登記を行ううえで、必要事項を説明しますと

(1)申請する際の準備書面

 {遺言書が無い場合}

①被相続人の出生から死亡まで経過がわかる戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)、もしくは除籍全部事項証明書(除籍謄本)
②被相続人の住民票の除票、もしくは戸籍の附票
③相続人全員の戸籍謄本
④相続人全員の印鑑証明書
⑤相続人全員の住民票の写し
⑥遺産分割協議書
⑦登記する不動産の固定資産税評価証明書
⑧登記する不動産の登記簿謄本または権利証

{遺言書がある場合}

①公正証書遺言、自筆証書遺言や秘密証書遺言(家庭裁判所で行う検認手続が必ず必要であり、検認済証を登記申請書に添付しなければなりません。)
②被相続人(遺言者)の死亡記載のある戸籍謄本、もしくは除籍謄本(遺言執行人がいる場合は、出生時から死亡時までのものは不要です。)
③被相続人の住民票の除票、もしくは戸籍の附票
④不動産を相続させると書かれた相続人の戸籍謄本、及び改製原戸籍(被相続人との相続関係が証明されるもの)
⑤不動産を相続する相続人の住民票
⑥登記する不動産の固定資産税評価証明書
⑦登記する不動産の登記簿謄本または権利証
⑧遺言執行人の印鑑証明書及び実印
遺言書がある場合の登記申請手続きには、不動産を相続する者以外の相続人の戸籍謄本や住民票、印鑑証明書が不要であることにご注意下さい。

(2)登記申請書の提出先

登記申請書は法務局(登記所)に提出しますが、どこでもいいというわけにはいきません。相続した不動産の所在する地域を管轄する登記所にかぎられます。

(3)登記に要する費用

相続登記の申請の際に、登録免許税がかかります。その額は、登記する不動産の固定資産税課税台帳の登録価格(評価額)に対し、1000分4の税率で計算をした金額です。
納付の方法は、登録免許税の額や登記所によっては現金で納付し、銀行の納入済書を添付しなければならない場合もあります。まずは、管轄の登記所に確認をするとよいでしょう。

(4)登記完了確認と手続き

登記の申請をしても、すぐに手続きを完了というわけにはいきません。申請書が適切かどうか、添付書類に不備がないかどうかを審査する期間があります。通常は、申請日から数日後に「補正日」が設定されますとなります。その日に、もう一度登記所に出向いて、登記完了の有無を確認して、何もなければ登記は完了です。

なお、登記が完了すると、登記識別情報が交付されることとなります。登記識別情報とは、登記済証に代えて発行されるアラビア数字その他の符号の組合せからなる12桁の符号です。不動産及び登記名義人となった申請人ごとに定められ、登記名義人となった申請人のみに通知されます。

登記の申請の際には、本人確認方法のため、登記識別情報を登記所に堤供していただきます。
なお、登記所に提供した登記識別情報を記載した書面は、登記完了後、返却せずに廃棄処分されます。
非常に重要な情報ですので、登記識別情報通知書は、目隠しシールをはり付けて、交付され、この目隠しシールをはがした場合には、第三者に盗み見られないように通知書を封筒に入れ封をした上で、金庫等に保管するなど厳重に管理してください。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。