横領を侵す犯人のほとんどの動機は、お金に困ったためというようです。
お金に困ったのは、やはり遊ぶために遊興費・ギャンブル費などが欲しかったということです。
具体的なケースとしては、お金が遊ぶために欲しくて何度も借金をして、借金を返すために追われて横領を侵すことが多くあります。
借金を返すために、FXや株式投資を始めて、損がさらに拡大して横領することもあります。

 

成年後見人とは?

判断能力が認知症になって十分でなくなれば、代わりに誰が判断してくれるのでしょうか?
近年、高齢者の多くが、次々と子供のふりをした振込み詐欺や不要な住宅リフォームを契約させられるトラブルに遭っています。
成年後見人というのは、成年後見制度によって判断能力が十分でない人を生活面や法律面で守ってサポートする人です。
具体的なケースとしては、財産管理、施設の入退所、介護保険を使う際の契約などだけでなく、高齢者がひとりで暮らしていて悪徳商法で詐欺に遭って高いものを買わされたようなことから保護してくれます。

成年後見制度としては、法定後見制度と任意後見制度があり、制度の目的もそれぞれ違っています。
法定後見制度は、判断能力が十分でなくなった際に申し立てが家族などによって行われて適応されるものです。
任意後見制度は、判断能力がまだある時に、判断能力が将来十分でなくなる時のために、自分が選択した任意後見人に代理権として財産管理などを与えるものを公正証書で事前に契約しておき、必要な保護・サポートを必要になった際に家庭裁判所が選ぶ後見監督人のもとで行うものです。
誰に後見人をするか、どのような内容を任せるかは、自由に話し合いで決定することができます。

着服・横領されない為には?

着服・横領されない為には、自分自身で対策することもありますが、成年後見人になる弁護士としても対策を行っています。
判断能力が認知症などによって十分でない人を生活面や法律面で守ってサポートする成年後見制度において、静岡県弁護士会は、成年後見人に弁護士が選ばれた場合、後見監督人として他の弁護士を配置することを決めたそうです。
監督する人を選ぶことによって、横領などの不正を後見人が行うことを防ぐことが狙いです。
静岡県弁護士会によれば、1千万円程度の財産額を目安として想定しているそうです。
これ以外に、静岡県弁護士会は、不正を防ぐために、年に1回後見人が義務化されている業務内容の家庭裁判所への定期報告に関して、2回目の催告を家庭裁判所が行う際、静岡県弁護士会にも連絡してもらうようにしています。
このようなことによって、財産の1千万円未満を管理している弁護士を監視するようにしています。

なお、高齢者・障害者総合支援センターを静岡県弁護士会は設立しています。
高齢者・障害者総合支援センターは、財産管理支援業務、専門法律相談、事件支援業務を行っています。
財産管理支援業務は、成年後見などの開始の申立、成年後見などの財産管理です。
財産管理の方法としては、任意後見制度による財産管理、任意の財産管理契約、法定後見(成年後見、保佐、補助)による財産管理などがあります。

 

士業による年間の不祥事件数

それぞれの弁護士会では、苦情が寄せられる件数が多くなっているそうです。
苦情件数は、平成15年は6,646件でしたが、平成23年には11,129件になっています。
懲戒請求の件数についても、平成15年は1,127件でしたが、平成23年には1,885件になっています。

このように件数が多くなった要因の一つとしては、弁護士が供給過多になっていることが挙げられます。
10年前と比較して、弁護士の人数は65%も増えているそうですが、全ての裁判所で取り扱った行政・民事事件は45%も少なくなっているそうです。
そのため、一人あたりの弁護士が取り扱う件数は、3分の1になっています。
このようなことから、やはり士業による年間の不祥事件数が多くなっているのでしょう。

成年後見人による横領が後を絶たない(親族による着服が9割)

後見人が横領する弁護士不祥事が最近多くあります。
大阪地検は、成年後見人をしていた大阪府内の80歳の女性の約550万円を横領したため、業務上横領罪で弁護士会に所属している75歳の弁護士を在宅起訴しました。
起訴状によれば、この弁護士の被告は、2007年5月~2013年2月までに、成年後見人をしていた女性の口座から、約550万円を11回にわたって着服しました。
この弁護士の被告については、弁護士会に大阪家裁が懲戒請求し、業務上横領容疑で大阪地検に刑事告発しました。

また、親族が後見人として選ばれて横領することも多くあります。
成年後見人を判断能力が悪くなって付けられた人が、財産を後見人に着服される被害が多くあります。
最高裁によれば、着服された被害は、統計を始めた2010年6月~12月は、トータル額が11億3,000万円で件数が111件でした。
2011年はトータル額が30億9,000万円、件数が267件と前年をオーバーしており、その後も増え続けています。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は相続人によって異なります。相続人は親族であり、その後も長い時間をかけて付き合う可能性が高い相手。だからこそ、円滑に、そしてお互いが納得した遺産相続手続きを進めたいですよね。