脳というのは、ほとんど人の行動をコントロールしています。
上手くこの脳が働かないと、スムーズに身体的な行動も精神的な行動もできなくなります。

認知症というのは、痴呆症と昔は言われていましたが、脳の細胞がさまざまな要因によって死んだり、働きが良くなかったりするために障害がいろいろ起きて、暮らしていく上において支障があるような状況のことです。
認知症は、病気ということではなく、病名がまだ決定していないものです。
つまり、まだ医学上は診断が決定できなく、要因も明確になっていない状況です。

例えば、風邪症候群としては風邪があり、同じような症状の鼻汁、喉の痛み、発熱などが見られますが、要因が明確に見極められていないような状況です。
そのため、治療としては、メインが対処療法の症状を軽くするもので、根治療法というこの要因を取り除くことを行うためには、検査をより詳しく行うことが必要になります。
痴呆症と認知症は同じような言葉ですが、厚生労働省が2004年に公募したことに基づいて、認知症に現在は統一になっています。
というのは、差別的な意味合いが痴呆症の言葉にはあるため、適当ではないと判断されたからです。

認知症の使い込みの年間件数

成年後見制度というのは、認知症などのために十分に判断できる能力がない人の財産を管理するために設けられたものです。
この制度で成年後見人になった司法書士や弁護士などの専門家が、高齢者などの財産を使い込むというような不正が、37件も2015年の1年間で確認され、過去最悪の件数になったことが、最高裁判所の調査で明確になりました。
なお、被害に遭ったトータル額は約1億1千万円にもなるそうです。

この調査は、高齢者などの財産を成年後見人が使い込む事件が続いたので、2010年6月に最高裁判所が始めました。
親族などを含めた全体の成年後見人の不正件数は、調査を2010年に始めてから2015年には前年を初めて下回りました。
全体の成年後見人の不正件数は、2011年が311件、2012年が624件、2013年が662件、2014年が831件と増加し続けていましたが、2015年が521件と前年より少なくなりました。

なお、被害に遭ったトータル額は、2011年が33億4千万円、2012年が48億1千万円、2013年が44億9千万円、2014年が56億7千万円、2015年が29億7千万円でした。
この中において、専門家の成年後見人の不正件数は、2011年が6件、2012年が18件、2013年が14件、2014年が22件、2015年が37件と増加し続けています。
また、被害に遭ったトータル額は、2011年が1億3千万円、2012年が3億1千万円、2013年が9千万円、2014年が5億6千万円、2015年が1億1千万円でした。
専門家の成年後見人に占める比率は、年々増加して、65%近くに2014年になりました。
専門家で成年後見人に選ばれたのは、全体の25.5%が司法書士、20.4%が弁護士、9.9%が社会福祉士でした。

このような不正を防止するため、2012年に信託銀行に普段使用しないようなお金を預けて、まとまった金額を払い出す際は家庭裁判所の指示が必要であるという「後見制度支援信託制度」が始まりました。
この後見制度支援信託制度を利用する件数は、だんだん増えています。

預金着服・使い込みの防止策

後見制度支援信託制度を利用することが、成年後見人の不正を防止するために広がっています。
まとまった金額を引き出す場合は、家庭裁判所の許可が必要であるため、2015年は前年に比較して成年後見人が預貯金を使い込む件数は少なくなっています。

最高裁判所は、後見制度支援信託制度を高齢者などの財産を保護するために、積極的に利用して欲しいと言っています。
後見制度支援信託制度の場合は、認知症などのために十分に判断できる能力がない高齢者などの代わりに、財産を成年後見人として親族などが管理する場合に、銀行に現金を信託します。
定期的に生活費を指定した口座へ振り込みすることはできますが、家の修繕費や入院費などのためのまとまった数十万円~数百万円のようなお金を引き出す場合は、家庭裁判所に認可してもらう必要があります。

2012年の後見制度支援信託制度が始まった年は、98件の利用でしたが、全国の家庭裁判所が利用を促進したことによって、2014年が2764件、2015年が6563件とだんだんと拡大してきています。
一定の効果が不正を防止するためにあったと、最高裁判所は説明しています。
というのは、最高裁判所の調査によれば、成年後見人などによる不正は、先にご紹介したように2015年は前年より少なくなっているためです。
従来は信託銀行の大手のみが後見制度支援信託制度に対応していましたが、その後地方銀行で千葉銀行が初めて扱うようになりました。
千葉銀行としては、高齢者などの財産を保護して、成年後見人の財産管理をサポートするシステムで、地元の高まる要求に対応したいということです。

しかし、銀行側の儲けにはなりにくく、システムを新しく導入するためのコストが掛かるなどのために、地方銀行が扱い始めるのは高いハードルがあると言われています。
信託協会は、後見制度支援信託制度を導入することは経営判断が金融機関ごとに違っているが、地方銀行でも扱うのは歓迎で、この制度をさらに周知させたい、と説明しています。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続には様々な形があり、手続きや申請方法もケースによって異なります。専門知識が無い方は申請書の不備等で無駄な費用が掛かってしまう可能性もありますのでしっかりと相談することをおすすめします。