権利証がない場合の相続登記って

相続で不動産を取得する場合は相続登記をしなければいけません、被相続人の名義のままでは不動産の売買など自由にできません。
それに相続登記を後回しにしてしまうと後々トラブルに発展することもあります。
相続登記は相続が発生した段階で行った方が良いです。

では、相続登記を後回しにしてしまうとどのようなトラブルが起きるのでしょうか。

相続登記の目的は自分が相続したということを法務局を始めとする関係各位に示す働きがあります。
相続登記をしなければ誰が相続をしたか不明で所有者がわからないままになってしまいます。

所有者が不明なので第三者が自分のものだと主張しても異論を唱えて信憑性がなくなってしまいます。
これが相続登記をしていた場合は所有者が判明しているので異議申し立てができますが、相続登記をおろそかにしていると最悪裁判まで発展することもあります。

相続登記は早めに済ませておきましょう。しかし、相続登記は明確にいつまでにしなければいけないというのがありません。
相続登記に明確な期限がないのでどうしても相続登記を忘れてしまう人が増えているのです。では、相続登記をするのに必要な書類はあるでしょうか。遺産分割協議書というのが必要になります。

遺産分割協議書は相続人全員で話し合って作成することになります。相続人とは被相続人の配偶者や子供のことを言います。法的に相続する権利を持っている人を法定相続人と呼びます。通常、法定相続人は相続できる割合が民法で決まっています。通常、配偶者が被相続人の1/2の相続ができ、残りの1/2を子供たちで分け合います。もし子供が複数人いれば1/2を子供の人数で分け合います。

これはお金の話であって資産が不動産でしかない場合はこれに限りません。不動産だったら土地や建物を1/2や1/4にすることはできませんよね。そこで相続人同士で話し合う必要が出てくるのです。相続人同士で話あい誰が対象の不動産を相続するのか決めましょう。

不動産の相続が決まれば遺産分割協議書を持って法務局へ相続登記をします。
このときに権利書が必要になる場合があるのです。
必ず権利書が必要ではないです。必要になる場合があるだけです。

権利書が必要な登記は通常の登記で相続登記では原則権利書は必要ないです。

しかし、中には例外的に相続登記でも権利書が必要になることがあるのです。
では一体どのような時に権利書がなければ相続登記ができないのでしょうか。
それは「被相続人の住所が登記簿上の住所から現在まで繋がらない場合」です。被相続人が不動産を所有して登記を別の住所で行ったとします。
それから亡くなるまで登記変更せずなくなってしまった場合は現在の住所と登記されている住所が異なります。
被相続人の名前は一緒でも同姓同名の可能性があるので法務局は権利書の提出を求めてくるのです。

権利書がなくてもこうした場合は登記上の住所と現在の住所をつなげる戸籍を提出すれば事務処理上は問題ないですが、住民票は亡くなってから5年間役所で保存されその後は任意になってしまいます。
相続登記を先延ばしにしていると住民票を取り寄せられなくなってしまうこともあり、こうした場合には例外的に権利書の提出を求められることがあります。

権利証(権利書)とは?

権利書とは不動産の売買や贈与をする際、不動産を担保にお金を借りる際などに必要になります。
土地の所有者であることを証明する意味でも大切なものですね。
権利書は日常的に使用しないので通常、金庫など重要書類と一緒に保存されます。そのため最後に使ったのかいつかわからなくなってしまいどこに保存したのか忘れてしまう人もいます。

2005年に新不動産登記法が施行されました。この新不動産登記法によって権利証制度から登記識別情報制度に切り替えられました。
このおかげで権利証から登記識別情報が12文字のパスワードとなり保存方法にも工夫すれば紛失することが少なくなりました。

権利証の再発行はできるのか

権利書は新不動産登記法のおかげでパスワード制になりましたが権利書という紙がなくなってしまったので自分で確認するのは困難になりました。

しかし、保管は法務省に一括管理されているのでセキュリティ面では非常に強固になったと言えます。

では、権利書を紛失してしまい再発行できるのかを説明していきます。権利書を紛失したら一番心配になるのが不動産の名義や権利を第三者に取られてしまうのではないかということです。そこは安心してください。権利書に記載されているパスワードだけでなく印鑑証明も登記の変更をする際には必要になります。印鑑証明は本人や本人の代理人以外は請求できないので勝手に不動産の名義変更等がされる心配はないです。

権利書だけでは不動産の売買も行われないので安心しましょう。
不動産をもし売却する際には権利書の存在はもちろんですが本人確認を厳重に行います。
さらに不動産の正式な登記は不動産会社や法務局の担当者が行うのではなく司法書士が行います。

では、不動産の安全は守られましたが実際に権利書を紛失するとどのような弊害が起きるのでしょうか。
権利書が無いと不動産の売却や担保にすることができません。本人名義の不動産だとしても権利書がなければ所有者の本人確認ができないのです。

また、不動産所有者と証明するために司法書士へ本人確認の書類を作成してもらわなければいけません。
この書類を作成するのにも数十万円かかってきます。権利書がないだけでコストがかかってしまうのです。

権利書がない場合、司法書士へ書類作成を依頼するのはコスト的にと思っている人は権利書の再発行ができないかと思いますよね。
結論から言えば権利書は再発行できません。権利書は普通の契約書等とは異なり法的な効力を持っています。
住民票や戸籍謄本も役所から取り寄せることができるのはあくまで「写し」であり原本を何度も取り寄せることはできないです。

権利書がない状態で相続した場合は?

権利書を紛失した状態で被相続人が亡くなった場合は新しい権利書が発行されます。
これは相続で登記変更を行う、相続登記だけです。登記をするには印鑑証明が必要になるのでは?と思いますよね。

しかし、被相続人がなくなっていれば印鑑証明のチェックが不要になるので相続登記では権利書等がなくても登記変更ができるようになっています。

相続登記以外で権利書が紛失した場合はどのようにしたらよいでしょうか。まずは不正登記防止申し出の申告をします。
申請から3か月、不動産の名義変更を受け付けないようにするのがこの深刻になります。財布を落としてしまった時にクレジットカードやキャッシュカードの利用を中止しますよね。
あれと同じ原理です。登記識別番号には失効申し出制度というのがあります。これをしてしまうと不動産の所有を放棄することにつながってしまい、不動産の売却や贈与が全部できなくなってしまいます。

権利書がない場合は、必要となる書類を確認しよう

権利書がなくても新しく権利書は発行されます。
そのため、権利書がなくても相続登記をする書類を揃えるようにしましょう。
相続登記で必要になるのは被相続人の戸籍謄本、相続する人の戸籍謄本、印鑑証明、遺産分割協議書などです。

遺産分割協議書については記事冒頭でも紹介しているので確認して欲しいです。
遺産分割協議書は相続人全員で作成する書類で相続登記をする上で必要不可欠になります。
相続登記をする上で相続人同士の揉め事をなくすためにも必要になります。

権利書が無いのであれば仕方が無いので相続登記をする上で欠かせない書類を優先して取り寄せ、相続登記で新しくもらえる権利書を大切に保存するようにしましょう。
権利書をなくさないためにオススメの保管方法は銀行の貸金庫や家の金庫、タンスの中などです。
自分一人で保管場所を決めていると忘れてしまうことがあるので家族にも話をしておいて家族で保管するような意識を持っておきましょう。

まとめ

相続登記をする際には不動産の権利書は基本的に不要です。しかし、長年登記変更がされていないで不動産の所有者について法務局が疑問を持った際には権利書の提出を求められることもあります。

しかし、ない袖は振れません。権利書は相続登記になると新しく権利書を発行してくれるのでもし権利書がない場合は相続登記をするまで待ちましょう。
新しく発行された権利書については金庫や貸金庫など厳重に保管できる場所で保管するようにしましょう。
権利書が紛失したとしても勝手に不動産の売却や担保にお金を借りることはできないので安心してください。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。