亡くなった父親から相続した不動産に、聞きなれない「借地権」の言葉。
一体借地権とは何?何か手続きが必要なの!?
様々な疑問があると思いますので、借地権について詳しく調べていきましょう!
そもそも借地権とは
まず借地権についてですが、調べると「建物所有を目的とする地上権または賃借権などの権利の総称」となっています。
(地上権とは、工作物または竹木を所有するためなどの目的で他人の土地を使用する権利のことで、賃借権とは賃貸借契約によって得られる借主の権利のことです。)
簡単に表現すると「地主さんの土地を借りて、その土地に自己所有の家や建物を建てることができる権利」の事です。
土地を借りる対価として、建物所有者は大家さんに毎月、地代を支払います。
ちなみに地主さんを「借地権設定者」または「底地人」、建物所有者を「借地権者」と呼びます。
借地権は財産ですので、相続の対象となります。
実家の借地権を相続したらどうすればいい?
では実家の借地権を相続したら手続きなどはどのようにすれば良いのでしょうか?
借地権のある土地の上に建っている建物は、相続登記が必要です。
相続登記をしておかないと、土地の賃貸契約書の契約者と建物の登記名義人が異なってしまい、賃借権の転貸とみなされてしまう可能性があります。
賃貸契約書の条文に、借地権の転貸が禁止されていることが多く、条文に違反してしまっている状態になるので、場合によっては借地権を解除されることも考えられます。
借地権自体は、地主さんに「土地の賃借権を相続により取得した」と通知するだけで十分です。借地上にある建物の登記がきちんとされていれば第三者に借地権を主張ますので、わざわざ借地権を登記することは稀なことです。
借地権の相続をしたら地主さんの承諾を得なければならない?
借地権を相続したら地主さんに通知をしなければならないことがわかりましたが、土地を借りている以上何かの承諾が必要なのでしょうか?
答えは「借地権の相続に対する承諾は必要ありません。」
民法には
“相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する”と規定されています(民法第896条本文)。
このことから、地主さんの承諾が必要ないことがわかります。
承諾は必要ありませんが、通知の必要はありますので、借地権の相続人が決まったらまずは地主さんに伝えます。そして、借地権者を相続人の名義に書き換えます。
手続きはこれで完了です。
また、高いお金を出して家を買ったのに、地主さんから突然「出て行ってくれ」と言われたら大変です。そうならないよう国が借地権によって借地権者を守っています。具体的には以下のようなケースなどです。
・原則、借地権者の法定相続人が借地権を相続することを、地主さんから拒否することはできません。
・「借地権者と契約した先代の地主さんが亡くなっていて代替わりしており、借地契約を破棄したい」と言われても、先代との契約が優先されるので従う必要はありません。「そこに住まないなら土地を返してほしい」などの要求にも従う必要はありません。
・遺贈や売買・贈与などにより借地権が移転する場合は地主さんの承諾が必要となり、譲渡承諾料が発生しますが、相続の場合はそれらには該当しませんので、地主さんへの譲渡承諾料などは発生しません。もし請求されても支払う必要はありません。
ただし、借地法は混在しており、旧借地法による借地権は自動的に更新されていきますが、新借地法では一定期間後に借地権が消滅し、借地権の更新ができなくなってしまいます。その場合は地主さんへ土地を返還しなければなりません。あらかじめ契約内容をよくチェックしておきましょう。
もうひとつ気にしなければいけないのは、借地権者が父親、建物の所有権者が母親だった場合などです。この場合も無断転貸とみなされ、借地権が継続できなくなる可能性があります。名義人が異なっている場合は、弁護士などに相談しておいたほうが良いでしょう。
相続人が複数いた場合は速やかに遺産相続協議を!
相続人が複数だった場合、相続した建物は共有状態になります。
そして借地権は準共有(所有権以外の権利を共有することを準共有と言います)の扱いとなります。
通常の土地を相続した時と違い、借地権を分割して使うことはできません。ですので借地権の対価となる地代の支払い義務も分割することはできません(つまりは不可分債権となります)。
すると毎月支払っている地代をどうするかなど、もめる原因となりかねませんので、遺産分割協議は速やかに進める必要があります。
また、相続人のうちの一人が、他の相続人の承諾なしに相続建物に住んでいた場合、他の相続人から明渡請求をされてしまったなど、相続人同士でのもめごとが起こりやすいので、地主さんとの関係よりまず先に遺産分割協議を行って、相続人をきちんと決めておきましょう。
借地権は売却できる?
借地権は売却することができます。ただし、地主さんの許可を得る必要があります。売却したい場合は、地主さんに一度相談しましょう。
売却にはいくつか方法があります。
①借地権を地主さんに売却
建物が古く老朽化していたり、再建築が不可能など、第三者に借地権を売却することが難しい場合は、地主さんに借地権を売却する方法があります。
ただし、地主さんが買い取るだけの資産を持っていなかったり、土地の価格なども問題になってきます。また、地主さんとの関係が良好かどうかなどの問題がありますので、地主さんへの売却を考えている場合は仲介者を立てるほうが良いでしょう。
②借地権を第三者に売却
借地権を第三者に売却する場合は、地主さんから次の点の承諾を得ておく必要があります。
・譲渡の承諾
・建物建て替えの承諾
・抵当権設定の承諾
・借地契約条件のすり合せ
承諾を得られたら、地主さんに承諾料を支払います。(借地権価格の10%程度)
③等価交換後に売却
借地権の一部と、地主さんが持っている底地の一部を交換することを等価交換と言います。等価交換をすることで、借地権者と地主さんがそれぞれ土地の所有者となり、所有権を持った土地を売却する、という方法です。
もしも、地主さんが売却の承諾をしてくれなかった場合は、「借地非訟裁判」によって、裁判所に譲渡承諾に変わる許可を出してもらうという方法があります。
しかし、この方法を使って借地権の売却をした場合、借地権者と地主さんの関係が悪いと判断され、買い取り価格が下がってしまうことが懸念されます。
借地非訟事件となると、期間は半年から1年ほどはかかるようですし、個人では難しい内容になりますので、この場合も弁護士などに相談するほうが良いでしょう。
借地権売却のチェックポイント
プロに任せよう!
借地権の売却は、様々な権利や法律がからみ、内容が複雑です。
ですので、個人で交渉するのはかなり難しいと思われます。
様々な法律に詳しいプロの弁護士や不動産会社に相談し、売却を進めていくほうが、裁判が起こった場合にも頼ることができますし、色々わからずに借地権を安く売却してしまったなどのトラブルも避けられるでしょう。
まずは地主さんの許可を!
まずなんといっても、地主さんの許可が無いと借地権の売却はできません。
しかし地主さんに許可をもらうには、どのように交渉するかが大切で、こちらの要望ばかりを通そうとすれば、地主さんも良い気はしませんよね。
この場合もやはり、不動産会社などに相談をするのが良いでしょう。
不動産会社を選ぶ際は、借地権の売却に詳しい不動産会社を選ぶのがポイントです。
一括査定をすると、良いなと思った不動産会社を選ぶことができますが、たくさん査定に出し過ぎると、混乱したり、対応が面倒くさくなってしまうこともあるため、5~6社程度に絞って査定依頼を出すようにしましょう。
まとめ
今では少なくなってきているという借地権ですが、相続してしまったら意外と大変ですね。
費用がかさんでしまうのが難点ですが、内容が複雑な分、プロに頼んでキレイに借地権を解決してしまいたいものですね。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
相続問題は相続人によって異なります。相続人は親族であり、その後も長い時間をかけて付き合う可能性が高い相手。だからこそ、円滑に、そしてお互いが納得した遺産相続手続きを進めたいですよね。