相続にかかる相続税とは?
相続税とは相続が行われたときに発生する税金です。つまり、誰かが亡くなったときにかかるものとなります。具体的には、相続や遺言などで遺産を受け継ぐ場合に、総額が大きいと必要となってくる税金です。
基本的には、相続税には基礎控除額が設けられていて、法定相続人の数によって変わります。
法定相続人の数 | 基礎控除額 |
1人………… 2人………… 3人………… 4人………… 5人………… | 3,600万円 4,200万円 4,800万円 5,400万円 6,000万円 |
相続税が設けられている理由は、富の再分配のためです。相続によって誰か一人にだけ財産が集まってしまうということがないようにしているのです。高額な財産を相続した場合は、それに比例して高額な税金を支払います。このようにして、資産格差の少ない社会を目指しているというわけです。
基礎控除額を設定することで、可能な限り相続人に平等な財産分配が行われるように、工夫されています。
【最新情報】相続税改正とは
従来、相続税は一定の財産をもっている人のみに課されたものでした。つまり、財産をあまりもたない人にとってはほとんど気にする必要のない税金でした。しかし、平成27年以降相続税が改正されたことで、相続税を支払う必要がある人が増えました。改正のポイントは4つあります。以下で順番に説明していきます。
1. 基礎控除額
基礎控除は大幅に減額されることになりました。そのため、相続税を納めることになる人は多くなります。
基礎控除 | |
【改正前】 …5,000万円 + (1,000万円 × 法定相続人の数) | 【改正後】 …3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数) |
2. 税率の変更
これまでは6段階であった税率区分は、8段階に変更されました。それに伴い、「2億円超〜3億円以下」の区分と、「6億円超」の区分が、それぞれ従来と比較して5%引上げとなります。
3. 税額控除
未成年者控除と障害者控除は、改正によって増額になりました。
未成年者控除 | |
【改正前】…6万円/1年(20歳まで) | 【改正後】…10万円/1年(20歳まで) |
障害者控除 | |
【改正前】…6万円/1年(85歳まで) | 【改正後】…10万円/1年(85歳まで) |
4. 小規模宅地の特例
被相続人または被相続人と生計を共にしていた親族の事業用または居住用に使っていた土地は、限度面積までの部分で評価額を50〜80%減額することが可能。対象となる限度面積や適用面積が拡大されました。詳細は次のとおりです。
限度面積 | |
【改正前】…240平方メートル | 【改正後】…330平方メートル |
適用面積 | |
【改正前】…適用面積は400平方メートル | 【改正後】…適用面積は740平方メートル |
相続税の「非課税枠」知ってますか?
相続税は、何らかの財産を相続した場合にすぐにかかってくるものではありません。例えば、ほんの少額の預貯金を相続したからといって、そこから税金を徴収されるということはないのです。どの程度の財産を受け継いだ場合に、いくらの徴収となるのか、その税率は法律できちんと定められています。一定の金額に達するまでは税金を支払う必要がない非課税枠があり、その枠から超過して財産を継承した場合にのみ税金を徴収されるという仕組みです。
相続税がかかる財産を算出する方法は、次のとおりです。
【A】:[プラスの財産] +[相続開始3年以内の贈与財産] +[みなし相続財産] +[相続時清算課税による贈与財産] | 【B】:[非課税財産] +[マイナスの財産] +[葬式費用] |
相続税がかかる財産 = 【A】 ー 【B】 |
- プラスの財産…現金や預貯金、株式・債券、土地や建物など。
- みなし相続財産…生命保険や死亡退職金。
- 相続時清算課税による贈与財産…生前に被相続人から「相続時清算課税制度」(※1)による贈与を受けた財産。
※1「相続時清算課税制度」
生前贈与する際には2,500万円までが贈与税非課税となるが、贈与した人が死亡した時に、以前に生前贈与した財産にも相続税を課すという制度。
こうして課税価格から基礎控除額を引いた金額に、相続税が課税されることになります。この控除額は、2015年の法改正により縮小されていますので注意が必要です。
現在の控除額は下記のとおりとなっています。
相続税の基礎控除額(非課税枠)
=3,000万円+(600万円 × 法定相続人の数)
保険の非課税枠は500万円×〇〇
被相続人が亡くなった場合、死亡保険金が支払われます。被相続人が保険料を全額負担していたものは、本来、被相続人の財産ではありません。しかし、この保険金は「みなし相続財産」であるとして、相続税が課されることとなっています。
相続人の生活を保障するために、非課税枠が設けられており、その限度額は以下のとおりです。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額 |
現金や預貯金があると、そこへ相続税が課されることとなります。それを回避するために、生命保険に加入しておけば非課税限度額までは相続税を払わなくても良いということになるのです。
相続対策になる保険は何?
上述したとおり、平成27年以降から相続税の改正を受けて、ほとんど人にとっては実質的に増税となってしまいました。基礎控除額を増やすことはできませんので、相続対策をするには他の手段を考えるしかありません。そこで、生命保険が注目されているのです。
生命保険の保険金には、相続税が非課税となるものがあります。これを利用することで節税することが可能なのです。具体的な非課税枠は以下のとおり。
生命保険の死亡保険金の非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数 |
法定相続人(相続権を有する人)が1人につき、500万円までが非課税枠です。もし、法定相続人が3人いた場合の非課税枠は、500万円 × 3人= 1,500万円となります。すると、1,500万円はもともと生命保険に入っていないときには支払うべきであった金額ですので、仮に相続税が10%(相続税はその金額に応じて10%〜55%)だった場合、1,500万円 × 0.1 = 150万円を相続税として支払わなければなりませんでした。これを節税できるとなると結構な金額です。
生命保険で保険金が出るのは、人が亡くなったとき。保険の掛け方には2通りがあり、一つは掛け捨ての保険で、もう一つは終身保険です。掛け捨ての方は、保障額が大きい代わりに対象期間を過ぎると何も戻ってきません。終身保険の方は、保険料が高く保障料は少なめですが、その代わり死亡時には必ず保険金が出ます。終身保険を貯蓄代わりとして利用する人が多いのはそのためです。
もし、保険に加入する人が高齢であっても、「一時払い終身保険」を利用すれば、90歳まで加入できる場合もあります。この「一時払い終身保険」は、一括で保険料を支払ってしまうものです。年齢制限や健康診断の結果を知らせる必要もありません。
生命保険を利用した相続対策で注意する点
一時払い終身保険を使って、相続対策をする際には注意しておくべき点もあります。終身保険は当然のことながら、死亡時に支払われるものです。利率のことを考えると、元本を上回って利益が出始めるのは5年を過ぎてからなので、それまでに解約してしまうと損失となります。相続対策に使う資金は、途中で解約する必要のない余剰資金を使うようにして、元本割れを起こさないように、気をつける必要があるのです。
まとめ
生命保険を上手に利用すれば、相続税を簡単に節約することができます。支払わなくてもよいように法律で定められているものを、わざわざ支払う必要はありません。ぜひ、保険の非課税枠を使って、節税に役立てたいものです。一時払い終身保険なら年齢制限もなく一番適切だといえますが、元本割れしてしまうことのないように計画的に進めることが求められます。心配な場合は、必ず専門家に相談して、損失が出ることのないように気をつけてください。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
相続には様々な形があり、手続きや申請方法もケースによって異なります。専門知識が無い方は申請書の不備等で無駄な費用が掛かってしまう可能性もありますのでしっかりと相談することをおすすめします。