相続税調査の2011事業年度において、財産の申告漏れとしては、預貯金・現金などが1426億円と最も多く、続いて631億円の有価証券、630億円の土地、76億円の家屋の順でした。
また、相続税調査の海外資産関係の件数は741件で、年々増加しています。
国税庁としては、積極的に海外資産を調査するとしています。

申告漏れが多いのは海外不動産?

海外不動産の場合は、申告漏れが多いそうです。
相続税が、海外不動産などの海外にある財産の場合でも課税されます。
海外にある財産で課税されるケースとしては、以下場合が挙げられます。

①日本国内に相続人の住所がある
②日本国籍の相続人の住所が日本になくても、日本国内に被相続人の住所がある

つまり、日本に日本国籍の相続人の住所がない場合は、相続人あるいは被相続人のいずれかが日本国内に相続する前の5年以内に住所がある場合です。
また、日本に相続人の住所がない場合(先の②の該当者を除く)は、日本の相続税は海外にある財産には課税されません。

海外不動産の相続税の評価方法

現在、海外不動産に関しては、日本のような固定資産税評価額や路線価はないため、日本国内と同じような財産評価はできません。
そのため、海外不動産の評価の場合は、財産評価基本通達が適用になり、同通達で決まっている方法に準じたり、あるいは精通者意見価格、売買実例価額などを参考にして評価するようになります。
売買実例価額に関しては、不動産取引に関係する不動産業者などがほとんどの国にはおり、また、ネットが普及したことによって、不動産取引のデータが多くの国で公開されているため、売買実例価額を掴むことは困難ではありません。
しかし、対象不動産自体の評価に関しては個別性があり、売買実例価額で単純に評価するのは困難であるため、実際にはプロの海外の地域の精通者意見価格などを参考にするしかありません。
ここでは、いくつかの具体的についてご紹介しましょう。

・イギリス・アメリカ

時価評価が不動産鑑定士に頼むとでき、あるいは、査定書は不動産業者に頼んでも作成できます。

・中国

基本的に、不動産鑑定制度があるため、不動産鑑定評価書を土地評価師協会に頼むと発行してくれます。
また、不動産情報がネットで検索できるため、査定を不動産取引ブローカーに頼むこともできます。

・韓国

基本的に、個別公示地価で土地は評価し、標準建物比準方式で建物は評価します。
そして、基本的に、資産を外貨建てで取得した際に円に換える際は、その課税時期での取引金融機関の納税義務者の電信買相場で行い、外貨建て債務を円に換える際は、その課税時期での電信売相場で行います。

 

海外の不動産がある場合のメリット・デメリット

メリットについて

日本国内の不動産のみを持っている場合は、地域をいかに分散しても日本が持っている人口減少などのリスクの影響があります。
海外の不動産を持っていると、このようなリスクが分散でき、万一のことが日本にあっても安心できます。
また、海外の不動産のメリットは、海外の経済成長や人口増加のメリットがあることです。
東南アジアがメインの発展途上国の場合は、人口が非常に増える傾向にあり、経済成長として強いものが継続しています。
経済成長によって不動産の価格もアップしていくことが想定されます。
このような海外の不動産があれば、収益を売却益によって獲得することもできます。

デメリットについて

海外の不動産の場合は、価格が外貨ベースで決まっているため、円に最終的に換える際のレートで損益が大きく違ってきます。
新興国の場合は、円に換える際のレートが非常に変動する恐れがあります。
為替損失が円高になるほど大きくなるため、特に新興国の場合は注意しましょう。

 

海外の不動産がある場合の注意点

海外の場合は、不動産取引の慣習が日本と異なっている場合が多く、法制度も違っているのが注意点になります。
大きなトラブルに後からなるため、十分に海外の慣習や法制度については確認しておきましょう。
また、海外の不動産の場合は、物件管理を頼む管理会社を見つける必要があります。
現地のパートナーが、この管理会社を見つける場合には必要になります。

信頼できる現地のパートナーを日本にいながら見つけるのは非常に困難であり、人脈を作ったり、コミュニケーションが信頼できるようになるまでは時間がかかります。
海外でコミュニケーションを他の人と図るためには、現地語や英語を使用するシーンもあります。
また、日本人と外国人は文化や考え方が非常に違っているため、リスクがコミュニケーションの際に発生する可能性が非常にあります。
言語のハードルをカバーするために、日本と現地の慣習を十分に分かっているエージェントなどを利用する必要があります。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

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