※こちらの記事の内容は法改正により一部変更された内容が記載されている点があります。
修正された内容はコチラ「相続法の改正で、変更されたポイント」をご覧ください。

遺言には種類があるのをご存知でしょうか?
 遺言の種類によって書き方に注意すべき点があったり、料金が発生するものがあったりします。
 また、遺言の内容によっては相続人の間でトラブルになってしまう可能性があります。
 遺産のことで相続人同士が揉めることが無いように、遺言の作成は慎重に行わなければなりません。

 ここではもっとも確実に遺言をする方法である「公正証書遺言」についてをメインに、詳しく解説していきます。

遺言とは

まず遺言とは、自分が生涯をかけて築き、かつ守ってきた大切な財産を、もっとも有効・有意義に活用してもらうために行う、遺言者の自由な最終意思を確保するための制度です。

世の中では、遺言がなかったために、遺産を巡って家族や兄弟姉妹間で争いが起こることも少なくありません。(いわゆる遺産「争族」というやつですね。)
遺言には、遺言者自らが、自分の遺した財産の帰属を決め、遺産を巡る争いを防止しようとすることに主たる目的があります。

したがって、遺言は代理人によってすることが許されない遺言者の単独行為です。厳格に方式が定まっており、一定の事項についてきちんと記載しなければならなりません。(単独行為とは、相手の承諾を必要とせず,一方的な意思表示だけで効力が生じる法律行為のことを言います。)

遺言は遺言者が生前に、自由に自分の財産を処分するための方法であり、遺言の効力は死後生じるため、本人の生存中には何の効力もなく、また、いつでも遺言の方式にしたがって、その遺言の全部または一部を撤回することができます。
民法の定める遺言の方法には公正証書遺言、秘密証書遺言、自筆証書遺言の3つの方法があります。(民法第967条)

公正証書遺言とは

公正証書遺言というのは、遺言者の考えを公証人が反映して作るものです。

公正証書遺言は、遺言者自身と公証人以外に、証人2人の立ち会いの上、遺言者と公証人が事前に行った遺言の打ち合わせによって公証人が作成した公正証書遺言書の原本の内容を、遺言者と証人2人に見聞きさせたりして、遺言者と証人2人が公証人の書いた内容が正しいことを認めた後、それぞれが署名、押印をします。
この上で、民法が定めた方式によって作ったものであることを公証人が追記して、署名、押印することによって作成されます。

●秘密証書遺言・自筆証書遺言とは?
公正証書遺言の詳細の前に、秘密証書遺言や自筆証書遺言についてみていきましょう。

秘密証書遺言や自筆証書遺言は紙とペンと印鑑さえあれば誰でも費用をかけずに作成することができます。
秘密証書遺言は自筆証書遺言書を作成した後に公証役場に持っていき、遺言書の存在のみを公証人に確認してもらう遺言方法です。
この2つの遺言方法を使った場合、遺言者が亡くなった後に、遺言書を家庭裁判所に出して検認を行ってもらう必要があります(検認とは相続人などの立会いの下、遺言書の開封と中身の確認を行うことです。遺言書が見つかった場合、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所に検認を請求することになります)。

しかし、秘密証書遺言や自筆証書遺言の場合は、民法で定められている要件を満たしていなければ遺言が無効になる恐れがあります。弁護士などの法律のプロに相談せずに素人が自己流で作ると、この法的な要件を満たさず無効になってしまう可能性が高いともいえます。

【自筆証書遺言を作成する場合の注意点】
財産の全てを記載する必要がある
自筆遺言証書には、遺言者の財産の全てを必ず記載することが必要です。
そのため、普段から財産の全てを書き出しておいて、把握しておくことが必要です。
万一書き漏れた場合を想定して、「その他の遺言者の財産の全ては妻に相続させる」と言った文言を遺言書に追加しておくことが重要です。
このようなことを書いていない場合には、書き漏れた財産の相続に関して相続人間で遺産分割虚偽を行うことになるので、トラブルになる恐れがあります。

正確に資料を見ながら書く
書く場合には、正確に資料を見ながら書きましょう。
ここでは、具体的に注意することについてご紹介しましょう。
・名前を間違えない
名前については、戸籍に書いてある名前を書く必要があります。
名前を間違えないだけでなく、愛称や俗称などでも駄目です。
また、生年月日と遺言者との関係も書いておくといいでしょう。
・不動産は登記簿の通りに物件ごとに書く
不動産を書く場合は、登記簿謄本(現在は「全部事項証明書」が発行されます)の最新のものを確認しながら、登記簿謄本の通りに書きましょう。
不動産を特定することができるように、家屋番号や地番、構造と種類や地目、床面積や地積などを書いておく必要があります。
隣の地番を間違って書いてしまえば、所有者が異なっていることになって、相続を指定した相続人に行うことができない恐れもあります。
なお、共有にするのであれば、持分割合も書いておく必要があります。
しかし、相続が実際に生じた後に処分する際は、共有する全ての人の実印と同意が必要になるため慎重に考えましょう。
・有価証券や預金は通知書や通帳で確認する
有価証券や預金についても、正確に金融機関の支店・名義人・口座番号・預金種類などを書きましょう。
不動産と同様に、口座番号が違うと他の人の口座になり、スムーズに相続ができなくなる場合もあります。
有価証券や預金などは、価格が毎日変わるため、金額は書かないようにしましょう。
例えば、どこの銀行のどこの支店のどの口座番号の1,000万円の普通預金を長女に相続させる、という場合は、相続が生じた際に1,000万円をオーバーする分は誰が相続するかになって、トラブルになる恐れがあります。
・「遺留分」のトラブルを回避するような内容を考える
遺留分については詳細に後述します。

【その他注意点】
これ以外に注意することについてご紹介しましょう。
先に相続人が亡くなったケース
亡くなった人に対する遺言は無効になります。
無効になったところに関しては、全ての相続人で分割協議をして、遺産分割協議書を作る必要があります。
最もいいのは再度書き直しをすることですが、意思能力(自分の行為の意味や結果を判断しうる精神的能力)がその時点で下がっていることなども考慮すると、「相続人が亡くなった場合はだれに相続する」と書いておくことも重要です。
必ず遺言執行者を決めて書いておく
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために、一定の行為を行う職務および権限をもつ者のことを言います。
意外と知られていませんが、遺言執行者を設定しておくことは非常に大切なことです。
相続が実際に生じた場合、名義変更手続きや財産の解約は非常に多岐に渡って煩雑です。
銀行口座を解約する場合などは、遺言執行者が設定されていると比較的手続きもスムーズにできます。
遺産を相続人以外に相続させたい場合は特に設定しておくことが重要です。
また、「相続人の廃除の取り消し・廃除」「子の認知」を遺言書に書く場合は、遺言執行者を必ず設定しておかなければなりませんのでご注意ください。
遺言書には厳格な決まりがある
自筆証書遺言の場合は安価で気軽に書けるため、見直しが容易で定期的にできますが、法律に従って書かれているかその都度確認する必要があります。
また先述したとおり、相続が生じた場合は家庭裁判所にて検認の手続きを行う必要があります。
しかし、自筆証書遺言や秘密証書遺言は存在を気づかれない、こっそりと中身を書き換えられてしまうといった事が起こる恐れがあります。また、検認の手続きを家族が知らないといったケースも考えられます。検認の手続きを経ずに開けた遺言書も有効ですが、勝手に開けてしまった場合は民法により5万円の過料が科せられてしまいます。

このようなことを考慮すると、遺言書の存在が確かで、書き換えられる心配が無く、検認の必要が無い「公正証書遺言」を作る方が安心で確実でしょう。

余談ですが、遺言書には「付言」という簡単なメッセージを書くこともできます。
素直に現在の思いを伝えると、温かい気持ちで家族も読めるのではないでしょうか。

公正証書遺言の作成の準備

では話を公正証書遺言に戻しましょう。
遺言書の作成の際はどのような内容の遺言にするのか、意思を明確にする必要があります。
主に次のような内容を決めておくことになります。
1 相続財産の全てを具体的に網羅し、誰に対して何を(どの財産を)引き継がせるのか。
2 遺言執行者を誰に指定するのか。
3 祭祀継承者(墓を引継ぎ、遺言者や先祖の法要を主宰すべき者)を誰に指定するのか。
4 証人は誰にお願いするのか。(未成年者・遺言者の推定相続人・受遺者及びその配偶者並びに直系血族・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人は証人にはなれません。(民法第974条))

 必要書類についても把握しておきましょう。
〈必要となる書類〉
 1 遺言者の戸籍謄本
2 遺言者本人の確認資料(印鑑証明書、またはそれに代わる運転免許証・住基カード(顔写真入り)など公的機関の発行した証明書のいずれか一つ)
3 遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本(全部事項証明書)
4 財産を相続人以外の人に遺贈する場合、その人の住民票(法人の場合には資格証明書)
5 財産の中に不動産がある場合、登記事項証明書(登記簿謄本)・固定資産評価証明書、または、固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書
6 証人2人の氏名・住所・生年月日・職業など身分がわかる資料
7 遺言執行者を指定する場合、氏名・住所・職業・生年月日・職業など身分がわかる資料
8 その他公証人が指定した資料

公正証書遺言作成の流れ

ここでは、自分で公正証書遺言を作ることを公証役場に頼む際の流れについてご紹介しましょう。
①公証役場で遺言書の事前打ち合わせをする
 まずは公証役場にて公証人と遺言の内容について打ち合わせをします。
 遺言の内容を確実にするために、先述した必要書類などの提出をすることになります。
 そして、遺言に対する自分の考えを伝えます。
 
遺言の内容が決まったら、公正証書遺言書の作成日時を決めます。

②公正証書遺言書の作成当日は、遺言者と証人2人が公証役場に出向く
   全員で公証役場に出向き、公正証書遺言書の作成をします。
   当日の流れとしては次のようになります。
    1 公証人から氏名・生年月日など遺言者の本人確認や質問を受ける。
    2 事前の打ち合わせによって公証人があらかじめ作成している公正証書遺言書の原本を、公証人から遺言者と証人2人に読み聞かせる(または閲覧させる)ので、遺言の内容に間違いが無いことを確認する。
    3 間違いが無ければ公正証書遺言書の原本に遺言者と証人2人が署名・捺印をする。
      ※遺言者は実印を,証人は認印を持参することになります。
    4 公証人も方式に従って作成された旨を付記したうえで、公正証書遺言書の原本に署名・捺印をする。

  ③公正証書遺言書の正本と副本を受け取る
   公証人の署名・捺印が完了したら、公正証書遺言書の正本と副本を受け取ります。
   公証人から公正証書遺言書の保存期間、正本・原本・謄本の違い、遺言書の効力が生じる時期、撤回できるかどうかなどについての説明を受けます。
   公正証書遺言書の原本は公証役場にて保管されます。
   遺言執行者を設定している場合は、遺言執行者に正本を渡しておきます。

④公証役場に公正証書遺言書の手数料を支払う
公正証書遺言書の作成費用は、手数料令という政令で法定されています。公証役場にお問合せ下さい。

遺留分制度とは

故人名義の財産といっても、妻や子といった家族の協力によって得られたものが多く、それらの財産には協力者である家族の潜在的持分が含まれていると考えられますので、この潜在的持分を確保する必要があります。
また、残された家族の生活を保証するためにも、故人の財産を、ある程度の部分は確保する必要があります。
そこで、この両者の調和をはかる観点から、遺言の効力を一部否定し、一定割合の相続財産を残さなければなりません。
これを「遺留分」といいます。

遺留分請求権利者
配偶者
直系尊属(父母・祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族、養父母も含まれます。)
直系卑属(子・孫など自分より後の世代で、直通する系統の親族、養子も含まれます。)

各相続人の遺留分の具体例
配偶者のみ   配偶者が2分の1
子供のみ      子供が2分の1
配偶者と子供    配偶者が4分の1 、子が4分の1
配偶者と父母    配偶者が3分の1、父母が6分の1
配偶者と兄弟姉妹  配偶者が2分の1、兄弟姉妹は遺留分なし
父母のみ      父母が3分の1
兄弟姉妹のみ    兄弟姉妹には遺留分なし
※代襲相続による相続人にも遺留分の権利があります。

遺留分を侵害する遺言であっても、当然に無効になるわけではありません。
遺留分を取り返す権利を行使するかどうかは相続人の自由であり、「遺留分減殺請求権」が行使されるまでは有効な遺言として効力を有します。
遺言書で財産を相続または遺贈される方は、その内容どおり現金や不動産を受け取っても構いません。
しかしながら、遺留分減殺請求をされた場合には、その侵害した分をその相続人に支払わなければならないので、注意が必要です。
遺言を作成する時には、遺留分についても念頭に置いて、遺言の内容を検討される方がよいかもしれません。

公正証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言のメリット
法律の専門家である公証人に依頼して作成するものですので、方式・内容においてももっとも確実で、遺言者の意思を、遺言者が亡くなった後で実現するものとしては優れている方式です。法律的にも検討が加えられるため、まず無効になることがない明確なものができるものと考えられます。
病気等で手が不自由で自書のできない場合や、口や耳の不自由な場合でも、通訳人の通訳を通じて申述することにより、公証人にその意思を伝えることができれば、公正証書遺言ができます。
また、公証役場に出向くことが困難な場合でも、公証人が自宅や病院等に出向いてくれる場合もあります。
さらに、遺言書の原本は公証役場に保管されるため偽造・変造の恐れがなく、また、家庭裁判所での検認手続きの必要もないため、遺言の執行が迅速にできます。

公正証書遺言のデメリット
作成のための費用・手間がかかること、2人以上の証人が必要であることなどが挙げられます。
また、証人に遺言の内容が知られてしまうこともデメリットと言えるでしょう。

まとめ

公正証書遺言書というのは、公証人が遺言者の考えを反映して作るものです。
公正証書遺言書があれば、遺言者が亡くなった後、効力がすぐに生じます。
公正証書遺言の他には、秘密証書遺言や自筆証書遺言があります。これらの作成は簡単ですが、無効になる恐れがあります。
公正証書遺言の作成には遺言者の戸籍謄本、印鑑登録証明書などの書類が必要になります。
自分で公正証書遺言の作成を公証役場に頼むこともできますが、必要書類の用意や遺言書の内容を考えることは決して簡単な事ではありません。
難しい場合は当センターに依頼するのがおすすめです。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は相続人によって異なります。相続人は親族であり、その後も長い時間をかけて付き合う可能性が高い相手。だからこそ、円滑に、そしてお互いが納得した遺産相続手続きを進めたいですよね。