被相続人(亡くなった方)の法要なども済み、相続の手続きも済み…ひと段落した頃、税務署から「相続税についてのお尋ね」という封筒が送られてくることがあります。
この「相続税についてのお尋ね」の封筒が届いた方は、相続税の申告の必要がある可能性のある方です。
「相続税を払う必要が無かったはずだから大丈夫」などと言ってこの封筒を放っておくと、税務調査の対象になった、なんてことも。

ではその「税務調査」とは一体何なのでしょうか?
詳しく調べていきましょう。

相続税申告者の約4人に1人が税務調査を受けている。

一年間の相続税の申告は約50,000件で、そのうち12,116件(平成28事務年度)に税務調査が実施されたそうです。
割合にすると約24%となり、相続税申告者の約4人に1人が税務調査を受けているということになります。
税務調査を受ける方が多い原因の一つとして、相続税の複雑さが挙げられるようです。
そのため申告間違いなどが起こり、税務調査を受けることになる、ということですね。

調査が入るのはいつ頃?

税務調査の時期は、相続税の申告手続きを行ってから、1~2年後、期間としては、大体8~11月頃に税務調査が行われることが多いようです。
その理由は、確定申告などが終わり、税務署の人事異動が7月に行われて落ち着いたその後から調査をスタートするからだそうです。
とはいえあくまで通常はこの期間が多いという話ですので、もちろん他の期間にも行われます(緊急性の高い場合やノルマ達成の為など)。

ちなみに相続税の時効は相続が発生してから5年です。ただし、この5年は善意の相続人(相続税の申告や納付の必要は無かったと信じきっている人)に対する時効で、悪意の相続人(相続税の申告や納付の必要があると知っていた人)に対する時効は7年です。

税務調査が行われやすい人ってどんな人?

税務調査が行われやすい方は、

  • 自分で相続税の申告をした方
  • 申告漏れ(相続税の申告が必要なのにしなかった)をした方
  • 富裕層の方
  • 相続税に詳しくない税理士に申告を頼んだ方
  • 国外財産を持っている方

などが挙げられます。

自分で申告をして申告間違いがあった場合や、申告漏れ、相続税に詳しくない税理士に頼んだ場合などが特に多いようですが、富裕層や国外財産を持っている方が税務調査を行われやすいのはなぜでしょうか。

それは、資産運用の多様化や国際化が進んでいることが念頭にあるそうです。国外財産を持っている方というのもこれに繋がっていますね。(ちなみに国外財産が5,000万円以上ある方は、「国外財産調書」を提出する義務があります。義務がある方が提出を怠ると、こちらも相続税と同じように「お尋ね」の封筒が届くそうです。これに回答しなかった場合、直ちに税務調査が入ることもあるそうですので、必ず回答するようにしましょう。)

そしてなんと、国税庁には富裕層を対象としたプロジェクトチームまであるそうです。富裕層の方への課税を怠り、国民からの不満を買うのを危惧してのことのようですが、ここまで厳しくなっていることには驚きですね。

そもそもなぜ相続税が税務調査の対象なのか

会社や富裕層が対象ならともかく、なぜ相続税が調査の対象となってしまうのでしょうか。
答えは簡単で、「税金の額が高額」だからです。
預貯金はもちろん、不動産の有無や生命保険の加入歴、持ち株、さらには年収までを税務署は把握することができます。となると、「こんなに財産があるのに、相続税がこれだけしか納められていないのはどうしてか」ということになり、税務調査の対象となってしまうのですね。
自分の力では、どこからどこまでが相続税の対象となるかわからず、相続税の申告はきちんとしたものの、申告すべき財産を見落としてしまう、というのが相続の税務調査が行われる多くの理由のようです。

相続財産はどのようなものが対象なの?

相続財産は「プラスの相続財産」「マイナスの相続財産」「みなし相続財産※」に分けられます。どのようなものがあるのか見ていきましょう。

※「みなし相続財産」とは、被相続人の死亡により発生する財産の事で、被相続人が築いた財産ではないが、それと同等の価値があるとみなされた財産の事で、相続税の課税対象となります。

プラスの相続財産

不動産に関するもの 土地 宅地、田畑、農地、山林、貸地…等
建物 家屋、店舗、駐車場、倉庫…等
権利 借地権、地上権、定期借地権…等
金融資産 現金、預貯金(普通預金、定期預金、定額積立…等)、小切手、有価証券(株式、国債、地方債、社債…等)、出資金、証券投資信託、売掛金、手形債権、貸付金…等
動産 家庭財産 車、家具、貴金属、宝石、骨董品…等
事業財産 自動車、商品・製品、機械装備、器具…等
その他財産 ゴルフ会員権、著作権、特許権、電話加入権、漁業権…等

マイナスの相続財産

借金 借入金、買掛金、振出小切手、手形債務…等
租税公課(未払い) 所得税、住民税、固定資産税…等
その他未払い金 家賃、医療費…等
保証債務 保証金、預り敷金…等

みなし相続財産

生命保険金 保険金の支払人により、全額か一部課税される。

※被相続人が保険者(保険金の支払人)で、受取人が指定されていた場合は受取人の財産という扱いになるため、相続財産とはならない。

死亡退職金 遺族に支払われるものだが、被相続人の死亡が原因なので、みなし相続財産とみなされる。

死亡退職金控除があり、一部課税、一部非課税となる。

非課税限度額=500万円×法定相続人の数

弔慰金・花輪代 これらは本来非課税だが、非課税であることを利用した節税行為を防止するため、多額の弔慰金や花輪代は、みなし相続財産とみなされる。

一定の範囲内であれば、相続税の非課税枠がある。

・業務上の死亡の場合…普通給与の3年分。

業務上の死亡でない場合…普通給与の半年分。

(普通給与とは、給料、賃金、俸給、扶養手当、勤務地手当等の合計額をいう。)

個人年金 被相続人が負担した掛金に対応する部分に課税される。
被相続人の死亡日から3年以内に贈与された財産 相続税の節税を防ぐために、死亡日より3年以内に受け取った財産はみなし相続財産となる。

税務調査ってどのぐらい行われるものなの?

税務調査の調査実績は、以下のようになっています。

平成27事務年度 平成28事務年度
実地調査件数 11,935件 12,116件
申告漏れ等の非違件数 9,761件 9,930件
非違割合(非違件数/実地調査数) 81.8% 82.0%
申告漏れ課税価格 3,004億円 3,295億円
追徴額 583億円 716億円

ここで気になるのが、「非違割合」ですね。
実地調査を受けた方の8割を超える方が、申告漏れ等があったということになります。
これはかなりの割合です。実地調査をうけるということは、かなりの確率で申告漏れがあり、追加徴税を支払うことになるということですね。

税務調査の前には連絡がある!

 税務調査には「強制調査」と「任意調査」があります。
テレビなどで突然調査官がやってくるのは「強制調査」で、悪質な脱税を行っている者に対して、令状をもとに行われるものです。
一般的には「任意調査」が行われます。任意調査の場合は、事前に以下の内容があらかじめ告知されます。告知は、調査官から電話連絡にて行われます。

  • 実地調査を行う旨
  • 実地調査の開始する日時
  • 調査場所
  • 調査目的
  • 調査対象となる税目
  • 調査対象となる期間
  • 調査対象となる帳簿書類その他の物件
  • 調査の相手方である納税義務者の氏名及び住所又は居所
  • 調査を行う当該職員の氏名及び所属官署
  • 調査開始日時又は調査開始場所に関する変更事項
  • 上記以外の事項について非違が疑われることになった場合には、当該事項に関し調査を行うことができる旨

日程の変更は、やむを得ない事情でしかできないそうです。
また、電話連絡ですので、きちんとメモをしておくことが大切です。

相続税調査が決まってからの流れ

  • 電話連絡

    先述したとおり、あらかじめ電話連絡が入ります。

  • 税務調査(当日)

    午前10時頃、調査官が2人組で調査に来ます(2人組であることが多いそうです)。
    午後0時ごろから休憩を取り、午後1時頃から調査が再開され、午後4時ごろまで調査が行われます。大体は一日で終わるようですが、二日にわたって調査をされることもあります。
    調査内容は、登記簿の確認や遺言書の有無、個人の死因や配偶者の職についてなど、様々な質問を受けたり、実際に通帳などを確認したりするそうです。

  • 調査資料の精査

    調査終了後、調査官が税務署に必要書類を持ち帰り、精査します。
    期間は約2週間から1か月です。

  • 調査結果報告・修正申告

    調査終了から2~3週間後に、調査結果が相続人の代表者に伝えられます。
    場所は個人の自宅、または税務署にて行われます。(問題が無ければ電話連絡があるだけで済むこともあるようです。)
    追加徴税があれば理由と金額が伝えられ、申告漏れ等があれば修正を行うように指示があります。

税務調査が始まるまでの準備などは?

税務調査が決まった場合、どのように行動すればよいのでしょうか。

まず、原則として税務調査は被相続人の生前の住まいで行われます。相続税の対象物が残っている可能性があるからです。
そして、可能な限り相続人全員で立ち合うこととなります。立ち合えない相続人がいる場合は、相続人の代表者が、税務調査が入ることを伝えておいたほうが良いでしょう。

そして、あらかじめ以下の資料などを用意しておきましょう。

・財産の把握…被相続人の生前からの財産を把握しておくこと。
・生前贈与の記録…贈与契約書等
・遺産分割協議の記録…相続人同士で決めた遺産分割協議の内容によって、相続税の負担額に影響があります。

相続税の税務調査への4つの対処方法

➀生前から被相続人の財産を掴んでおく

相続税の申告が漏れた要因としては、しっかりと被相続人の財産を掴んでいなかったことが挙げられます。
財産を譲る人は譲られる人にどこに何があるかを、譲られる人はどの程度の被相続人の財産があるかを、お互いに確認し合いましょう。

➁生前贈与の場合は証拠を残す

生前贈与を、節税するために行なう人もいるのではないでしょうか。
しかし、きちんと生前贈与を行なった証拠を残していなければ、相続税の対象にこの分もなります。
生前贈与の場合は、必ず証拠を残しましょう。

➂高額な3,000万円をオーバーする相続の場合は税理士に必ず相談する

相続税の対象者は、2014年までは相続の全体のわずか4%で、富裕層だけが関係するようなものでした。
しかし、相続税が2015年に改定されたことによって、相続税は普通の人も関係するようになりました。
土地を相続する場合は、十分に相続税の対象になる場合も考えられます。
相続税の対象になることが考えられる場合は、対策を早めに行うことによって、節税できたり、相続する際のトラブルを防いだりすることができます。
そのため、税理士に早めに相談しましょう。

➃必ず相続のやり取りは証拠を残す

相続のやり取りは、口約束でも身内であるため問題ないなどと考えないで、必ず証拠を残しましょう。
税務調査が万一あった場合に、大変な目にお互いに遭うでしょう。

まとめ

税務調査が入るということは、何かしらの申告漏れがある可能性が高いことがわかりますね。どうやら簡単にはできないようです。
税務調査に入られる前に、専門の税理士や弁護士の方に相続税の申告を依頼するほうが後々大変な思いをすることが少ないように感じました。
被相続人が亡くなれば、税務署に被相続人の財産などの情報は伝わって、預貯金額や不動産が多いため、相続税が課税されそうであれば、税務署からあらかじめ目を付けられる場合があります。
相続税が追徴課税になるケースは、子供や親族口座への預金、骨董品等の遺留品、隠し財産が挙げられます。

相続税での税務調査が行われやすいケースは、相続財産が被相続人の年収に対して少ない、被相続人の専業主婦が多額に株や貯金などを持っている、という場合です。
相続税の税務調査への4つの対処方法としては、生前から被相続人の財産を掴んでおく、生前贈与の場合は証拠を残す、高額な3,000万円をオーバーする相続の場合は税理士に必ず相談する、必ず相続のやり取りは証拠を残す、ことが挙げられます。