私は3人兄弟の次男で,母は既に亡くなっています。先月父が亡くなり,父の部屋から自筆の遺言書が見つかりました。
しかし,中身を確認することもせず,兄が我々の目の前で遺言書を燃やしてしまいました。あっという間の出来事で誰も止めることが出来ませんでした。

父は兄夫婦と同居していましたが,兄は職を転々とし,父の年金を充てにする生活でした。また,兄嫁も意地が悪く,父の面倒はみないで,食事は出来合いの惣菜ばかり,と本当に酷い有様でした。

生前父は何度も,兄夫婦と別居したいと言っていましたが,兄夫婦は一切耳を傾けず,父の家に居座り続けました。
父は兄には遺産をやりたくない,といつもこぼしていたので遺言書にはそれなりの事が書いているはずでしたが,灰となった今,内容を知る由もありません。兄は,遺言書が自分にとって不利益な内容であると分かって燃やしたのは,間違いありません。

しかし,あまりの横暴さに私と弟の怒りは収まらず,こうなれば家も土地も売却して,遺産を3等分し,兄とは絶縁するつもりでいました。

そんな折,遺言書を燃やす行為は「相続人の欠格事由」にあたるということを知り,兄に詰め寄りましたが,兄は証拠がないと開き直り,兄嫁も加勢して収集がつきません。父の心情を思えば,兄夫婦を許すことが出来ず,兄に遺産を渡さないことができれば,父の供養にそのお金を充てたいと考えています。前のとおり,兄とは絶縁しても何の後悔もありません。何かよい方法はありませんでしょうか。

1 相続人の欠格事由(民法第891条)

1号 故意に被相続人または相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ,又は至らせようとしたために,刑に処せられた者
2号 被相続人の殺害されたことを知って,これを告発せず,又は告訴しなかった者。ただし,その者に是非の弁別がないとき,又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは,この限りでない。
3号 詐欺又は強迫によって,被相続人が相続に関する遺言をし,撤回し,取り消し,又は変更することを妨げた者
4号 詐欺又は脅迫によって,被相続人に相続に関する遺言をさせ,撤回させ,取り消させ,又は変更させた者
5号 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し,変造し,破棄し,又は隠匿した者

民法によれば,長兄のとった行為は,5号にあたり相続人の欠格事由に該当すると思料します。そうなれば当然,法律上相続権を失うことになります。

2 代襲相続

長兄が相続人欠格となっても,長兄に子供がいる場合には,その子供が相続人となります。相談内容からでは,子供の有無については分かりませんが,長兄に子供がいた場合,その子供は相談者とその弟さんと同じだけの遺産を相続することになります。子供が複数いる場合は,法定相続の3分の1を,子供の数で更に等分することになります。

相続人が相続放棄をした場合,最初から相続人ではなかったとみなされ,例え子供がいても代襲相続にはなりませんが,欠格事由の場合には代襲相続が発生することは忘れないで下さい。

また,相続人欠格によって相続権を失うのは,特定の被相続人に対する関係だけに限定されます。つまり,お父様の遺言書を燃やしてしまった長兄は,お父様の相続については相続人となることができなくなる可能性がありますが,将来,別の親族,たとえば二男や三男に相続が発生した場合,それぞれに子どもがいなければ,相続人となり得ることができるのです。

3 手続きの進め方

欠格事由については,特別な手続きはありません。欠格事由とされた人が認めれば,相続欠格に該当することを証明する書類(特に規定はありません)を作成し,捺印をしてその印鑑証明書と一緒に提出すれば,預貯金の解約や,不動産名義の変更も可能です。

しかし,残念ながら,長兄のように遺言書を燃やしてしまうような人が,欠格事由を認め,簡単に書類の提出に応じるとは考えられず,その上,燃やした証拠を求めるような状況にある場合,利害関係人間での話し合いで解決することは難しいと思います。
このような場合には,長兄に対し「相続欠格事由に該当することを確認する」ことを求める訴訟を起こし,勝訴した判決文を添付して各々の手続きを進めていくことが賢明と考えます。

4 まとめ

先に申しましたように,拗れた案件を,利害関係人間で解決することは難しく,さらに問題が大きくなるだけではなく,お互いの感情がぶつかり,精神的なダメージも避けられません。そのような場合は,弁護士などの専門家に一任することで直接の折衝を避けることができるだけでなく,解決への近道となることも少なくありませんので一度ご検討ください。
ご相談者の意向に添った形で解決ができることを願っています。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。