預金の使い込みがあり「不当利得返還請求」の検討を
相続が始まる前後に、遺産である被相続人の預金を、銀行などの口座から親族などの一人の法定相続人が引き出している場合がよくあります。
このような場合は、相続が始まる前は、無断で被相続人の預金を引き出したということで、その者に被相続人が、不法行為での損害賠償請求、あるいは不当利得返還請求ができます。
また、相続が始まった後は、このような権利を行使することが法定相続人が相続したということでできます。
預金は、相続が始まった後は、相続分によって法定相続人が承継するため、別の法定相続人は、これをオーバーして利得した分に関して、不法行為での損害賠償請求あるいは不当利得返還請求ができます。
時効が、不法行為での損害賠償請求と不当利得返還請求の最大の違いです。
時効は、不法行為の日から不当利得返還請求の場合は10年、不法行為を知った時から不法行為での損害賠償請求は3年になります。
しかし、不法行為の立証は、同じ難しさがあると言えるでしょう。
この事案は非常によくあるもので、新しく依頼が弁護士事務所にあった場合でも、使われた人か、それとも使った人かで意見が2分されるほどということです。
特に、使い込みが相続が始まる前の場合は、普通は3年以上前のことであるため、不当利得返還請求で時効があるとして、訴訟を提起する場合が多いでしょう。
遺産の使い込みに時効はあるのか?
法律構成として、不当利得返還請求が使い込みされるとでき、損害賠償請求が不法行為に基づいてできます。
使い込みされて10年以内の場合は、不当利得返還請求ができます。
例えば、使い込みが平成20年3月21日にされた場合は、返還請求が平成30年3月21日までであればでき、これをオーバーすると、不当利得返還請求は時効によってできなくなります。
次に、使い込みされて20年以内の場合は、損害賠償請求ができます。
例えば、使い込みが平成10年にされた場合は、返還請求が平成29年までできます。
このように、請求できる期間が、不当利得返還請求と損害賠償請求では違うため、10年以上が使い込みされてから経って不当利得返還請求ができない場合でも、時効に損害賠償請求はなっていない場合もあるので請求できることもあります。
損害賠償請求のタイミングは?
しかし、損害賠償請求の場合は、加害者および損害が分かってから権利を3年以内に行使しなければ、権利が時効によって無くなります。
この場合は、時効までの期間が、3年と少し短いため注意しましょう。
しかし、加害者と損害が分かってから3年以内であるため、例えば、通帳が被相続人が亡くなってから5年経った後に見つかり、使い込んだ形跡が中を見た際にあった時は、時効はこの通帳を見てから3年になります。
時効になってなくても、立証が難しいことが多い
ここまでご紹介したことは時効についての話ですが、また別の注意が立証については必要になります。
つまり、時効になってなくても、使い込みの証拠は時間が経ってしまえば残っていない場合もあり、立証できなくなることもあります。
例えば、使い込みの訴訟において、引出として被相続人の考えに反するものがあるので、当時の被相続人の状況を立証をするため市区町村から介護認定資料を入手する場合があります。
しかし、3年あるいは5年で、介護認定資料は廃棄されることがあります。
そのため、預貯金の管理を当時被相続人ができなかったことが、立証できない場合があります。
このような場合は、立証を他の資料で行うしか方法はありません。
このように、時効の問題が解決した場合でも、不利なことが立証する際には発生することがあるのは十分に把握しておきましょう。
使い込みを請求する際には、長い場合は権利を20年間行使することができます。
そのため、それほど時効については心配する必要はないでしょう。
また、先にご紹介したように、不利益が立証する際には生じることがあります。
使い込みを立証することが、証拠が無くなってしまえばできなくなるリスクがあります。
そのため、動き出すのは可能な限り早い時期の方がいいでしょう。
遺産を使い込まれていた場合のまとめ
相続が始まる前後に、遺産である被相続人の預金を、口座から親族などの一人の法定相続人が引き出している場合がよくあります。
このような場合、相続が始まる前は、無断で被相続人の預金を引き出したということで、その者に被相続人が、不法行為での損害賠償請求、あるいは不当利得返還請求ができ、このような権利を行使することが法定相続人が相続したということでできます。
使い込みされて10年以内の場合は、不当利得返還請求ができ、使い込みされて20年以内の場合は、損害賠償請求ができます。
損害賠償請求の場合は、加害者および損害が分かってから権利を3年以内に行使しなければ、権利が時効によって無くなります。
時効になってなくても、使い込みの証拠は時間が経ってしまえば残っていない場合もあり、立証できなくなることもあります。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
相続には様々な形があり、手続きや申請方法もケースによって異なります。専門知識が無い方は申請書の不備等で無駄な費用が掛かってしまう可能性もありますのでしっかりと相談することをおすすめします。